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デビル・ミーツ・ブルーハート ~ 悪魔の第二ボタン ~  作者: Otaku_Lowlife
第四話 クソガキ大乱闘
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「子育てだってよ。」

「あ、丁度いい所に。アキラ、夕飯の買い出し行って来てくれない?」


「え、あぁ……。別にいいけど……。また具合悪いの?」


「うん、ちょっとね。あぁ、暇ならアル君もね、お菓子とか買って良いから。」


「え? まじで!? いやっはぁ~~!! 地球サイコォーーーー!!!!」


 時刻は16時――クソガキ大乱闘のあと家に帰ると、母さんは布団で寝っ転がっていた。

何やら体の具合があまり良くないらしく、買い物に出掛ける元気までは無いんだとか。

ただそれもここ最近はそんなに珍しい事じゃなくて、季節の代わり目にはいつもこうなるのだ。

なんだかしんどそうに寝っ転がるオカンを見て俺は「人間、年取ると色々大変なんだろな――」とか、柄にも無くアルみたいな事を思った。

そんなこんなで今は近所のスーパー「アルティメット・デコスケ」に来ている。


「挽き肉は、合い挽きじゃない方が良いか……。あーでも合い挽きの方が安いなぁ――」


「ねぇー早くー! おかしおかしおかしーーー!!!」


「おー、もうすぐ終わっから我慢せい……。んー、シンプルにウィンナーとかの方が良いか?」


 夕飯の買い出し――俺が作るわけじゃないから、食材選びは少し気を遣う。

母さんは「その時冷蔵庫にある食材」でパッと作るものを決めるから、出来るだけ汎用性の高そうな野菜とか、安くなってるやつを選ぶようにしてる。

食材をカゴに入れながら色々と考えていると、痺れを切らしたアルが服の裾を引っ張ってギャーギャーと喚き始めた。

あーうぜ。子育てって、まじ大変なんだろな――


「まずはヒモきゅ~にぃっ、モギモギだろ~? あとヨーグルなっ! いやっほぉ~~う!! ドングリガム!!」


 そんで今はアルの御菓子選びに付き合っていたところ。

満を持しての御菓子コーナーに飛び跳ねて踊りながらあっちを取りこっちを取り、とまぁこんなんで幸せになるんだから安い野郎だ。

基本的にアルは駄菓子を好んだ。

以前理由を聞いたら「その方が色んな味のお菓子を楽しめるから」だそうだ。

1000年も生きてるくせに、子供か――


「そしてネルネル!! んであとは――」


「おいおい、ウチの家計をお前の有りもしない胃袋で圧迫すんじゃねぇよ。」


「ぅえぇ?? だってマサ子が好きなだけ買って良いって言ったじゃん!」


「好きなだけ――は言ってねぇだろ。程々にしとけ。」


「んー、程々? それってどんぐらい? もうちょっと買って良いの?」


「あー、そうだな……。全部合わせて、2~3個?」


「は!? すっくな! そんなら最初から2~3個って言えよ!

 んだよちくしょう! これだから日本人どもは嫌なんだよ! あーぬか喜びしちまったぁ!」


「……。」


 なんだコイツ。

いや、常々思うんだけど、悪魔ってホントに馬鹿なんだろうな。

そんなこんなでギャーギャーと喧しいアルを無視して会計を済ませ、早々にデコスケを後にした俺達は日の沈み始めた桜堤を歩いていた。

アルは早速ビニールからうまい棒を取り出し食べ始めた――


「あおい! ポイ捨てすんなよ!」


「え? なにが?」


「おまえなぁ! ナチュラルに民度低いのはダメ! いいから拾ってこい!」


「??? おう。」


 ――と思った瞬間、アルは何食わぬ顔で夕色に染まる綺麗な飽馬川の方へうまい棒の袋を投げ捨てるのだった。

休日の飽馬川には人目がある――が、例えそうでなくとも、当然叱る。

アルは俺の言った事を理解したのかしてないのか(多分してない)、飄々とゴミを拾って戻って来た。


「拾ってきたぞー。」


「おう、もうやるなよ。」


「うん。」


 しかしまぁ、こうしてちゃんと話してみれば、悪魔というのもなかなか素直なもんだな。

ちゃんとゴミを回収してきた笑顔のアルに、俺は少しだけ感心した。

けどそれも結局「今までが酷すぎた」だけの話なんだが。


「――でもなんで?」


「あ? なんで? って――」


 なんで? なんでゴミを捨ててはいけないのか――か。

流石は悪魔というかなんというか、急に真に迫る話になったな……。

しかし悪魔とはいえコイツはまだガキだ(多分1000歳くらいって悪魔的にはまだガキだと思うってこと)。

ここはちゃんと道理の通る理由で人間社会の常識と言うヤツを植え付けてやらないと、後々大変なことになるからな。


「――そりゃなぁ……。そう、地球が汚れるからだ。」


「地球? 地球のためってこと?」


「え、あぁ……。そうだよ。」


 あれ、悪魔に何を言ってるんだろう、俺。

急に恥ずかしくなってきたぞ……。

アルは相変わらず飄々と涼しい顔で俺に「なんでなんで」と迫ってくる。

どちて坊やかお前は……。


「あー、それならマジで無駄だから、逆に余計な事しない方が良いなー。地球、どうせもうすぐ滅ぶし。

 だいたいお前ら人間如きが頑張ったって、どうせなるようにしかならねーよ。地球舐めすぎっしょ。」


「えー……。」


 何コイツー……。まじで怖いんだけどー……。

地球舐めすぎっしょ――だと?

なに? 悪魔ってそーゆー感じなの?

アルは涼しい顔で再びゴミを捨て、更に俺の事を指さしてそう言った。

なんか口調もDQNっぽいし、この人となりだからか余計にうぜぇ……。

けど何を言っても言い返されそうでもう何も言えねぇ……。


「さ、アキラ。はやく帰ってマサ子に飯作らせよーぜ!」


「お前さぁ……。その言い方やめろよ……。」


「え? なんで?」


こりゃぁ子育てしんどいわな……。




※作者はポイ捨てを推奨しているわけではありません。

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