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デビル・ミーツ・ブルーハート ~ 悪魔の第二ボタン ~  作者: Otaku_Lowlife
第四話 クソガキ大乱闘
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「痴話喧嘩だってよ。」

 近所のクソガキどもにアルの下僕呼ばわりされ、俺の堪忍袋の緒がブチンと弾け飛んだことを皮切りに始まった死闘。

このクソガキどもが、完膚なきまでのコールドゲームにして、高校生様を舐めるとどうなるのか思い知らせてやるよ。

そう――生まれてこの方、俺の闘士がここまで沸き立つ事は無かった。

中学時代最後のバスケ全国大会、その決勝戦の時でさえ、俺はあの煮え切らない想いを背負ったまま臨んでいたんだ。

それなのに、今は――今の俺は、例えるならまるで活火山のような。

例えるなら、燃え盛る地獄の業火のような――


―― あぁそうだ。絶対に、負ける気が"死"ねぇ!! ――


グツグツと沸き立つ憤怒の炎をその目に宿し、俺は――


「ま、負けたぁ〜……。」


「なーんだっ、やっぱゲボくん弱ぇじゃん。」


「やーいっ! ザーコッ!」


「へっ! ザコゲボとはもう遊んでやんねー!」


 俺は再び10-0で完敗した。


そうだよ、思えばサッカーとか別に得意でもなんでもないし、いくら高校生だからって相手が六人もいたら勝てるわけねーよ。

どうやら熱くなりすぎて冷静な判断が出来なかったらしい。

バカじゃねーのか俺……。


「おいおい嘘だろ? アキラ、お前弱すぎじゃね?」


「ち…くしょう……。」


 タンクトップクソガキ軍団に罵られた挙げ句、ついにアルにまで呆れられ、いよいよ俺って一体何なんだろうか……。


「まぁ奥さん見てあれ、灰崎さんとこのアキラ君よ?

 小学生に虐められてるわ……。」


「あらほんと、あの子もう高校生になるのに、優秀だった弟君と違ってみっともないわねぇ……。」


「うぐっ。」


 土手の方からママさん達の蔑む声まで聞こえてきた。

いかん、ママさん情報網の広がるスピードは異次元だ……。

今日の晩にはオカンの耳に入るやもしれぬ……。


「おいアル、こんなヤツ放っといて、ザリ釣り行こうぜっ!」


「え? ザリ釣り?!」


「うん、おもしれーぞ! たくさん釣れるとこあるからっ!」


「わぁうまそ~!! 行く行く~!! やった~っ!!」


 その後アルは秒で俺を裏切り、ザリ釣りをしに行くという話になっていた。

さっそくクソガキどもが土手を上がって自転車で二人乗りをしようとしている。


「な…に、やってんだ? 灰崎……。」


「え……?」


 膝をついてその様子を眺めていると、ふいに聞き覚えのある声が聞こえてきた。

声の方に振り返ると、そこに居たのは黒波先輩だった。


「あ、ちっす、ハヤトさん。」


「お、おう……。」


 黒波ハヤト――この人は俺が務めるバイト先の先輩だ。

は? バイト? 初耳だって? 

そりゃそうだ、バイト始めたの部活辞めてからだし。

暇なら小遣いくらい自分で稼げって遂にオカンに言われたからな、仕方なくだ。


「え、お前、いっつも小学生と遊んでんの?」


「え、あ……。まぁ色々事情があって……。」


「そうか……。」

 

 ハヤトさんは間を繋ぐようにタバコを咥えてふかし始めた。

なんとも気まずそうな表情だ。

いやまじで、嫌なところを見られたな……。


「アキラ―!! ちょっと行ってくる~!」


「お、おー。気をつけろよー。」


 そしてアルが二人乗り自転車の荷台から手を振っていた。

お気楽で陽気な悪魔にテキトーに手を振ってそれを見送ると、今度はハヤトさんの彼女さんが嬉しそうに土手を駆け下りてくるのが見えた。


「ハ~ヤっトくーんっ。」


確か名前は――


「セラ……。おまえ……。」


 そう、セラさんだ。

透き通るように綺麗な白い髪、青い瞳。

大人びて見えるけど、人目をはばからず甘え癖があったりと、言動はちょっと子供っぽい。

つっても俺よりは年上だろうけど。


「正解。」


「え?」


 ハヤトさんの右腕に抱き着きながら、セラさんは怪しく俺に微笑みかけて来た。

正解? なにが? 今の俺に言ったの? なんだ?


「だからやめろってば、そーゆーの。」


「別にいいじゃないかぁ、減るもんじゃないし。」


 あ、痴話喧嘩だ。

ハヤトさんがセラさんを振りほどいて鬱陶しそうに叱るのに対し、セラさんは不満げに眉をひそめている。

その間もハヤトさんはタバコの煙がセラさんの方へ行かないように気を使っていた。

あーぁ、熱々かよ。羨ましー。


「ところで、ねぇキミ。」


「え? あ、はい?」


「すっごい、キレイな目、してるよね。」


「……。」


 そう言ったセラさんの目は見透かすように鋭くて、透き通っていて、なんだか悪魔染みていた。

そしてこの人からは、近寄りがたいなにか危ない感じがした。いろんな意味で。


「ふふっ、かわいい。」


いやホントに……。

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