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92話 誕生日デート9

92話 誕生日デート9



 その後、サキの残りの二着の水着を試着した後に俺の水着選びも始まり、数十分着せ替え人形にされた末に買う水着が決まった。


 俺の方はシンプルなデザインのものを二着、そしてサキは結局三着全てをご購入。ただ水着姿でずっと隣にいられたのでは刺激が強すぎて俺の理性がもたない可能性があるため、上から羽織るものを一着プレゼントした。


「水着、本当に買っちゃった……」


 どうやらサキは泳ぐのがあまり得意ではないようで、市民プールなどにも行ったことがないらしい。つまり学校で着ることを強制されたスク水以外の水着を選ぶのも着るのも、今日が初めてだったとのこと。どおりであんなに恥ずかしがるわけだ。


 あの水着を着たサキと海やプールに二人っきりで……想像しただけでもニヤけてしまいそうになる。だが気を抜くとさっきの試着室の時みたいに暴走してしまいかねないし、気を強く持たないとな。


「和人、どうしたの? さっきから何か考え事してるみたいだけど」


「何でもない。サキがキスしてきた時の蕩けた顔を思い出してただけだ」


「っあ!? なんてこと思い出してるの!? 忘れて! 忘れてよ!!」


「なんでだよ、最高に可愛かったのに」


「う、あぅ……またそうやってぇ……っ!!」


 さて、俺の誕生日プレゼント選びという第一目標は達成し、サキに水着を買わせるというシークレットミッションもクリアした。


 あと残るは……二つか。時間も頃合いだし、そろそろ次に行かないと。


「サキ、お腹空いてないか?」


「え? うーん、まぁ空いてきてるけど……もうお昼だし」


「ならそろそろ昼飯にしよう。実はいい場所があるんだよ」


 ネットでこのモールを調べていた時に見つけた、サキのための場所。家を出る前からお昼ご飯はそこにしようと決めていたのだ。……まあ、ご飯と言っていいのかは分からないけども。


「スイーツアイランド、って知ってるか?」


「!!?」


 スイーツアイランドとは、簡単に言えばスイーツ食べ放題のお店である。ケーキやプリン、シュークリームやアイスに至るまで、それはそれは数多い品揃えをバイキング形式で楽しむことができる、まさに夢の場所だ。


 そして当然このお店は女性層への人気が強く、甘い物大好きなサキに対しても例外ではない。事実、今その名を口に出した瞬間から彼女の目は光り輝き始めている。


「知ってる! 知ってます知ってないわけないです!!」


「おぉ、三段活用みたいな良い返事。ちなみに今日の昼ご飯はそこです」


「やったぁぁぁぁ!!!!!」


 俺たちの住んでいる地域の近くには、スイーツアイランドは一つも存在しない。ここにも前までは無かったようなのだが、実は最近オープンしたらしい。


「喜んでくれてよかった。じゃ、行くか〜」


「いぇーい!!!」


 腕時計をお揃いにした時とはまた別のベクトルでの喜び方をするサキに対して少し父性のようなものを感じながら、差し出された手をしっかりと握る。そうして二人仲良く、手を繋ぎながら俺たちは一階にあるスイーツアイランドに向けてエスカレーターに乗った。


 ちょうど昼時だということもあって、一階の飲食店街は少し混んでいる。人気チェーン店のハンバーガー屋さんや牛丼屋さんはやはり列ができるほどであったが、俺たちの目指す場所はそうではなかった。


「お、結構空いてるな」


 人が多いとは言っても、所詮は平日。子供連れの人も少なければ学生もほとんどいないこの時間帯なので、スイーツ食べ放題は混んではいない。会社の昼休みなんかに食べに来る人が、長い時間居座ることになるからここを選ばないというのも影響しているのだろう。


「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」


「はい、二人です」


「畏まりました。お席の方へご案内いたしますね」


 ワクワク、ワクワクと口に出してしまいそうなほどに顔に期待が満ち溢れているサキと共に店員さんの案内について行くと、用意された席は壁際の二人席。背後には大量のスイーツ達が陳列されていて、俺の方まで気持ちが上がってくる。


「では、コースのご案内を────」


 そして流れで店員さんの説明を聞き、九十分食べ放題コースを選択した俺たちは早速席を立ち、目の前に広がるスイーツコーナーへと進む。




 改めて並べられた大量のスイーツを目の当たりにした時のサキの嬉しそうな顔たるや。本当、連れてきてよかったな。

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