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85話 誕生日デート2

85話 誕生日デート2



「おお、ここか。でっかいな」


「だねー! 人もいっぱいだぁ……」


 一時間後。電車に揺られて俺たちは目的地へと辿り着いてその規模の大きさに圧倒されていた。


 家の近くにあるショッピングモールと同じ名前の所なはずなのに、地域差でここまで差があるものなのか。軽くニ、三倍はデカい気がする。


 加えて、今日は平日だというのにやたらと人が多い。流石に小中高生はいないようだが、それでも俺たちのような大学生や社会人、おじいちゃんおばあちゃん等々……中々に年齢層が広い。


「ま、でもここで止まってても仕方ないしな。とりあえず中入るか」


「はーいっ。最初はどこ行くとか決めてるの?」


「いや、何も決めてないぞ。決まってるのは昼ご飯くらいなもんだ」


「え、なになに? 美味しいお店でもあるの?」


「それはまだ内緒だな。ひとまずはまだまだ昼まで時間があるし、色々見て回ろうぜ」


「むぅ、気になるなぁ……」


 そうして、なんやかんやと話しながら入店した俺たちは専門店が並ぶ三階へ。エスカレーターで上がると見渡すだけでも何十ものお店が並んでいて、種類も様々。これなら俺の誕生日プレゼント探しというのも問題なく行えるだろう。


 正直なところ、プレゼントで欲しいものというのはまだ全く浮かんでいない。何を貰っても嬉しいは一緒に選ぶこの状況では通用しないし、そろそろ大まかにでも決めておきたいところだ。


「ねぇ、和人はどういう物が欲しいの?」


「うーん、そうだな……本当にまだ何も決まってないんだけど、強いて言うならやっぱり形に残る物だな。サキにあげたネックレスみたいに」


 形に残る物、その中でも装飾品は肌身離さず付けられるし、付けている間それをくれた相手のことをいつでも思い出せる。四六時中一緒にいる俺たちが離れることは滅多にないが、それでもやっぱり何か形としてサキから貰ったものを付けていたい。


「ならまずはネックレスから見てみる?」


「え、男でネックレスってどうなんだ?」


「普通だよ? してる人大学でもいっぱいいるでしょ?」


 ああ、言われてみればそうかもしれない。一瞬ネックレスをつけるのは女の子だけなのではないかと思ったが、大学でも街中でも金属製のものとか付けてる人は結構いたな。


 だがなんというか……こう、ピンとこない。多分サキからネックレスを貰えたら毎日付けるだろうし、勿論嬉しいはずなのだが。俺にはオシャレすぎるしれものなのではないかとも思ってしまう。


「まあ一旦保留だな。去年くれたヘッドフォンみたいに家で使えるものでもいいんだけど、他になにかずっと付けてられるような物ってあるか?」


「うーん、どうだろ……他に浮かぶのはイヤリング、指輪、リストバンド……あとは腕時計、とか?」


「腕時計か。そういえば付けたことない気がするな」


 せいぜい、最後に付けたとすれば小学校の遠足の時とか修学旅行の時くらいか。今であればスマホで時間が見れるし、特にオシャレとして付けるという習慣もなかった。


 だが……ふむ。ネックレスよりは難易度が低いし、中々悪くないかもしれない。中々というか、正直結構いい。内心惹かれ始めている。


「あ、さっきより反応いいね。とりあえず腕時計を第一候補にして色々見に行ってみる?」


「そーするかぁ。って、そんなに反応に違いあったか?」


「あるある〜。よし、そうと決まれば早速行こ〜!」


「あ、おいっ……」


 サキに手を引かれ、その楽しそうな横顔に視線を吸い寄せられながらも俺はその後について行く。





 ひとまずはプレゼントを探しに。こうして、誕生日デートは開始されたのである。

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