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79話 駄々っ子とママ

79話 駄々っ子とママ




「ねぇ、せっかく集まったんだし何か買ってきてパーティーしようよ! ほら、ピザとかお寿司とか!」


「どうしたんですか急に」


「だってお菓子だけじゃ味気ないじゃん! ね、いいでしょ!! 私がお金出すからぁー!!」


 気づけば外では夕焼けが出始め、すっかり夕方。談笑したり、アカネさんがいつものごとくサキに対して暴走したりと……まあなんやかんやで楽しい時間を過ごしたせいか、あっという間にこんな時間だ。


 だが、どうやらアカネさんはまだ足りないらしい。サキもまだ帰りたくはなさそうだし、せっかくだからお言葉に甘えるか。


「分かりました。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」


「そうこなくっちゃ! じゃあ早速買い出しだけど……そうだね、お義兄様とミーちゃんに行ってもらおうかな!!」


「「えっ!?」」


 俺とミーさんは同時に固まった。


 てっきり、二人で行くなら俺とサキ、ミーさんとアカネさんといったグループ分けになると思っていたのだ。


「アカネさん、あなたどれだけ外に出たくないんですか! 自分から提案したんですから買い出しくらい来てくださいよ!!」


「えーっ、だってお外暑いんだもん……。それに私は、サキちゃんとイチャイチャしてたいのーっ!」


 ミーさんがサキにしがみつくアカネさんを剥がそうとするが、既にべったり腰に巻きついているその細い身体は中々離れない。その様はイチャイチャというより、どちらかというと甘えに近い。


「サキママぁ……ミーちゃんがいじめるよぅ」


「っ……あなたって人は、本当に……はぁ」


「あ、あの私は大丈夫ですよ? 別に嫌なこともされてませんし……」


「えへへぇ〜。ばぶぅ〜」


 あぁ、もうダメだ。アカネさんは完全にサキの太ももに顔を埋めてニヤニヤしてるし、サキも頭を撫でてまんざらでもない。彼氏としては寝取られたみたいでなんか凄く複雑な気持ちだが、無理に剥がして騒がれるのもなぁ……。


「ミーさん、アカネさんはこんなですし、俺で良ければ買い出し付き合いますよ」


「い、いいんですか? もうこの際、私が一人で……」


「いやいや、流石にそれは悪いですから。荷物だって多くなるでしょうし、お金だって出してもらうんですから荷物持ちくらいさせてください」


「……分かりました。お願いします」


 ミーさんにとっては、こういった事態ももう慣れっこなのだろうか。案外すぐにサキからアカネさんを剥がすことを諦めると、少し心配そうにしながら言った。


「サキさん、何か変なことされたら遠慮なく暴力をふるってくれて大丈夫ですからね。気絶でもさせたら流石に大人しくなると思いますから」


「ちょっとミーちゃん!? 何それ物騒! 怖い!!」


「ははは……了解です。肝に銘じておきます」


「サキちゃんッ!?!?」


 予想外のサキの答えにビックリしたのか、アカネさんは太ももに埋めていた顔を上げ、ビクビクと身体を震わせる。ミーさんも流石の扱いの上手さながら、サキの方も扱いに慣れてきているようだな。


「さ、では行きましょうか黒田さん……いえ、和人さん。アカネさん、お財布借りていきますよ」


 そう言うと、さも当たり前のように作業台のようなところの上に置かれたアカネさんの財布を手にしたミーさんは、先に一人リビングを離れた。


 ちなみに、さっき一度俺のことを黒田さんと言ってから下の名前に言い換えたのは、サキも俺と兄弟設定があるために黒田と名乗っていたからである。それはそれは初々しく照れながら黒田サキの名を口にして自己紹介をしていたが、ハッキリ言って最高に可愛かった。


「じゃあ俺も行ってくるな、サキ」


「うん。気をつけてね」



 やはり少しだけまだアカネさんと二人っきりのサキのことが心配だが……まあ、大丈夫か。心配しすぎだな。

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