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69話 初めての夜遊び5

69話 初めての夜遊び5



「……ぷぅ」


「悪かったってサキ。そんな露骨に拗ねないでくれよ〜」


「拗ねてないもんっ。ただ、周りの人にいっぱい、見られて……」


 ああ、なんだ恥ずかしかったのか。


 まあ確かに、ちょっと隣で遊んでた人に指さされてクスクス笑われてたりとかしてたけどさ。回されて焦りまくってるサキがそれに気づいてたとは思ってなかった。


 とりあえずあの後、しばらくの間サキ玉転がしを楽しんだ俺が目をグルグル回していたサキを解放してやり、今はコートの隣のベンチで休ませているわけだが。ベンチの上で顔を赤らめながらそれを手で隠すその素振りを見る限り、あれを人に見られたのが相当恥ずかしかったようだな。


「まあまあ。ちょっと抵抗虚しくコロコロ転がされて弄ばれてるところを見られただけだろぉ? 気にしない気にしない」


「それが恥ずかしかったの! というか、弄ばれたとか言わないでよぉ!!」


「細かいことは気にするなって。ほら、夜はまだまだ長いんだぞ? まだまだ遊ぶ時間はたーっぷりあるんだぞぉ?」


「うぅ。なんか上手く丸め込まれそうになってる気がする……」


 今日買ったナイトパックは、スポーツ施設の利用だけに限られた料金パックではない。時間内、即ち朝の五時までであれば2ROUND内の施設を全て無制限で遊べるというものであり、まだボーリングも、ビリヤードも……ダーツにカラオケだって、楽しみ放題だ。


 ここでこうやって可愛いサキを眺め続けるのもいいが、時間は有限。サキの希望で日付が変わる時には家にいれるよう帰るつもりだが、それでもまだ時間はニ時間ほど残っている。ならばもっと楽しんで回らなければ、損というものだろう。少なくとも、このスポーツ施設だけで終わっていては勿体なすぎる。


「ほら、行こうぜサキ。次はボーリングなんかどうだ?」


「むぅ。次は私をボーリングの玉にして転がしたりしないよね……?」


「ははっ、サキを玉にしたら隣のレーンに突っ込んでいっちゃいそうだからしないぞ。安心しろぉ」


「ちょっと待って、それどういう意味!?」


 そうして、それから残りの時間。俺たちは思いの外ボーリングにのめり込み、勝率は五分五分の熱い接戦を繰り広げた。


 俺が突然の尿意に襲われて一度落ち着いてトイレに行っていなければ、恐らく二人とも時間のことを忘れていただろう。それほどにその試合の数々は、本当に楽しくて。他にも行きたいところはあったのだが、気づけば全ての時間をそこで使い果たしていた。


 結局ビリヤードやらカラオケやらには行けなかったが、後悔はない。なぜなら……


「和人、絶対また来ようね! 次は他の施設も行こっ!」


 施設を出る時に、こんな言葉を貰えたから。ボーリングをしている最中も、それを終えた後も。サキはずっと楽しそうにしていて、料金の支払いをしている時にもかなり物足りなそうな顔をしていた。連れてきた場所でここまで楽しんでもらえて、しかも次もまた来たいと言ってもらえるのなら、彼氏冥利に尽きるというものだ。




 と、まあこんな感じで。俺たちはそのまま施設を出て、バスに乗っていろんな話をしながら、二人きりで誕生日のカウントダウンをするために家へと戻ったのだった。

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