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65話 初めての夜遊び1

65話 初めての夜遊び1



 二十一時。夜ご飯を食べ終え、片付けやら家事なんかも全て片付いた後の、自由な夜。俺達はそんな時間を、何もせずに過ごしていた。


「なんかさ、暇だな……」


「だねぇ。今日と明日は何もしたくないからって配信系の準備も全部済ましちゃってるし、本当にすることないや」


 うーん、ともはや考えることまで面倒くさくなりながら、ソファーの上でダラダラを続ける。


 なんというか、別に不満なわけじゃないんだけどな。こうやってサキとぼーっと過ごす時間は大切にしたいし、すごく心地いい。


 ただ、このままだと日付が変わる瞬間まで起きれそうにない。ふとした瞬間に二人で寝落ちして、無意識に朝を迎えていそうだ。


「……あ、そうだ。ならどこか遊びに行くか?」


「えぇ、今からぁ?」


「おう。俺らもう大学生なんだし、夜遊びしても怒られることはないだろ? 一度夜からどこかに遊びに行ったり、してみたかったんだよ」


 そうだ。夜だからといって、全ての店が閉まっているわけでもない。選択肢はあまり多くはないが、遊べる施設はいくつか存在している。


「うーん……確かにこのままだと私寝ちゃいそうだしなぁ。それに夜遊びってした事ないし、少しやってみたい、かも……」


「だろだろ? どうだ、どこか行きたいところとかあるか?」


「夜遊び、かぁ。あっ! なら、私────!」


 サキの口から出た場所は、偶然にも俺が思い浮かべていた場所と同じ所で。早速、お互いに自室に戻って支度を始めた。


◇◆◇◆


「畏まりました。ナイトパックの大学生様、お二人ですね。こちら、施設出入りに必要となるリストバンドでございます」


 子綺麗なフロントでリストバンドを巻かれた俺達は、早速エレベーターに乗って一つの施設の中へと入る。


「わぁーっ! 夜でも結構人いるんだね!」


「おー、みたいだなぁ。でもこういうところで子供が一人もいないってのは、なんか違和感あるな」


 俺たちがやって来たのは、アミューズメント複合型施設、「2ROUND」。館内にはカラオケ、ビリヤード、ゲームセンター、ボーリング、運動施設などが備わっており、腕に巻かれたリストバンドをかざせば、どこにでも自由に出入りできる。自由度が高く、出来ることも多いのに値段は意外にもリーズナブルで、学生にも大人気のお店だ。


 そして俺たちは中に入ってまず、運動施設が固まっているコーナーへと来ていた。見渡すとバスケのハーフコートや小さなバレーコート、テニスコートにバッティングセンターなど、様々なものが並んでいる。


「にしても、サキが夜遊びでここに来たがるなんて意外だったな。運動とか苦手じゃなかったか?」


「そ、それとこれとは別! 私だって……ひ、人並みにはスポーツもできるからねっ!」


「……怪しい」


 大学での選択授業では体育があるのだが、サキはなぜか選択していなかった。勉強の必要もなくただ運動をそれなりにするだけで単位を取れる教科だというのに、普通の奴なら選ばない方が不自然だ。


 というか、サキがスポーツとかしてるところ一度も見たことなく無いか? これは、もしかしたら中々に面白いものが見れるかもしれない。


「じゃあまあ、お手並み拝見といこうか。まずは、あれ」


 そう言って俺が指差したのは、バッティングセンター。サッカーとかバレーとか、ある程度経験が無いと出来ないスポーツは、運動音痴では無い人でも苦手な人はいる。


 だがバッティングセンターはどうだろうか。勿論打つのにはコツがいるだろうし、難しいはず。だがたとえ打てないとしても、一般的な運動能力があるならばそれなりに綺麗なフォームでバットを振るくらいはできるはずだ。


「の、望む所だよ! ……やったこと、ないけど」


 少し焦りの色を見せ始めたサキを、俺は急かすように球速七十キロのボックスに入れる。




 一体どうなるのか、楽しみだ。

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