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62話 優子さんとお急ぎショッピング3

62話 優子さんとお急ぎショッピング3



 優子さんの意外な一面が明らかになった数分後。俺たちはエスカレーターで建物の二階へと上がり、服屋、雑貨屋などの立ち並ぶ通りの一番奥へと進んだ。


「ここだよっ」


「え、ここですか!?」


 そこは、明らかにその通りで一つ頭抜けて高級感のある、店員さんからも品の高さが見て取れるお店。きっと俺一人で来ていればその雰囲気に押しつぶされて入れないだろうが、隣の優子さんの後に続いて、入店する。


 だが結局俺はすぐ不安になって、俺たちの入店に合わせて会釈した店員にバレないよう、コッソリと耳打ちをした。


「ゆ、優子さん! 俺あんまりお金持ってないんですけど本当に大丈夫なんですか!? なんか結婚指輪くらいのエグい値段取られそうな気がするんですけど!!」


「ふふっ、大丈夫だよ。値段、見てみて?」


「……」


 優子さんが指さした方向に、俺は言われた通り恐る恐る目線を向ける。


(……え?)


 するとそこに書かれていた値段はどれも、俺の予想していた馬鹿みたいに高い金額とはかけ離れた、俺でも十分に手が出せるものばかりだった。


 思わず桁を間違えたのかと目を擦って三度見したが、何度見ても値段は変わらない。


「私も何度かここ来てるんだけど、ほんっ、と安いよねぇ。それなのに見た目はそこらの高級店と変わらないんだもん。まさに、隠れた名店って感じ」


「です、ね……」


 確かにこれは、都会のど真ん中にでも店を移そうものなら客が殺到しそうだ。むしろ今はこんな場所にあるからこそ、成り立っている商売だったりするのだろうか。


 何はともあれ、優子さんには感謝しかない。


「ありがとうございます、優子さん。こんな名店教えてくれて」


「いいんだよっ。私だってサキには、オシャレで可愛いものを付けてもらいたいしね。あ、ちなみにこのお店のことサキは知らないから、また今度機会があれば連れて来てあげなよ」


「はい! ところで、なんですが……サキの好きな柄とか、色とか。そういうのって知ってたり────」


「ダーメっ。そこは和人君が選ばないと、意味ないでしょ?」


「……うす」


 そう言って隣で微笑む優子さんに見守られながら、俺はネックレス選びを始めた。


 地味なものから、奇抜なもの。可愛いものから、かっこいいもの。数多ある種類から選ぶのにはとても時間がかかって、やっと一つに絞った時にはもう、店内に入ってから三十分も経過していた。


 そしてその間、優子さんは嫌な顔一つせずに隣をついて来てくれていた。……やっぱり、優しい人だ。


「ほほう、和人君が最終的に選んだのはそれかぁ。……うん、センスいいよ。流石はサキの彼氏君だね。あの子が好きそうなの、良くわかってる」


「ほ、本当ですか? なんか優子さんにそう言ってもらえると、めちゃくちゃ心強いです」


 と、レジでそんな談笑をしながら、ネックレスに包装をしてもらってから購入して。再び店外へと出ると、その場で優子さんは俺に別れを告げた。


「じゃあ、私家こっち側だから。健闘を祈ってるよ〜」


「はい! 本当に今日は、ありがとうございました!」


 優子さんが俺に背を向け、一度振り返って、手を振って。その後曲がり角で姿を消すのを見届けて、俺は手元の腕時計を見る。


「やべ、早く帰らないとな。もう家出て一時間半も経ってる」



 

 そうして、明日サキが喜んでくれる顔を想像しながら、俺はコンビニに寄ってお土産のアイスを購入して、帰路についたのだった。

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