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221話 頑張ったで賞

221話 頑張ったで賞



「どう、でしょうか」


 込められている想いも、名前としての語呂も。全てが良い。きっとこれなら……


『え? めっちゃよくない?』


『ですね。サキさんらしいですし、何よりこのグループの方針と照らし合わせても申し分ありません』


『っぱセンスあるぜ私の娘は。呼びやすさや覚えやすさもピカイチだしな』


「〜〜っ!!」


 嬉しそうに、そして最後の参加者である俺の意見も求めるように。サキが振り返る。


 聞くまでもないだろうに。でも、ちゃんと言葉にしてやらないとな。


「俺も、めちゃくちゃいいと思う。変に凝ってなくて耳にスッと入ってくるしな」


「ほ、ほんと!? えへへ、頑張って考えた甲斐、あったよ……」


 こうして、全会一致によりグループの正式名称は「ドリームプロダクション」に決定した。


 ちなみに少し長いので、略として「どりぷろ」なんて呼び名もすぐに決まって。早速これからミーさんとアカネさんはPV制作に取り掛かるそうだ。夕凪さんもサムネ用のイラストを担当して提供してくれるらしい。


『夢の製作所……ドリームプロダクション、かぁ。ありがと、サキちゃん。最高の名前をくれて!』


「っ……はいっ!」


 ぱぁぁ、と満面の笑みを浮かべるサキの頭を撫でながら、通話を切る。


 命名会議はこれにて終了だ。俺たちはともかく三人はかなりの重労働がこれから待っているだろうからな。長話もあれだろう。


 通話を切ると、なんだか一気に身体の力が抜けた気がした。自分で思っていたよりも随分と緊張していたらしい。サキもまた同様で、緊張の糸が切れるとそのままソファーに深く腰を下ろして溶けるようにふにゃふにゃになってしまった。


「よ、よかったぁ。頑張って考えた甲斐あったよぉ……」


「お疲れさん。はいお茶」


「くぴっ……」


 コップを近づけると、まるで哺乳瓶を与えられた赤ちゃんのように口をつけてごくごくと喉を鳴らす。


 そして即座にーーーー


 ぐぅぅぅぅぅう。


「へっ!?」


 サキの愛らしいお腹からとても大きな音が。


 そういえばもう七時半だ。いつもならとっくに夜ご飯を済ませている時間だし、実は俺もそろそろ限界だったりする。


 とはいえこれだけ疲れているサキに今からご飯を作らせるのもあれだし……な。


「よし、今日はお弁当か何か注文するか。サキ、何食べたい?」


「……お弁当じゃなくても、いい?」


「もちろん」


 一体何が食べたいのだろう。お寿司か? それともハンバーガーか。はたまた中華か。


「ぴ、ピザ食べたい、かも。チーズいっぱい入ってるやつ」


「お、いいなそれ。ピザなら……そうだ、ポテトとかも頼もう。チキンもいいな」


「ちょ、どれだけ頼む気なの!?」


「まあまあ。結構お腹空いてるし。サキさんも今日はいっぱい食べられそうでしょう?」


「う゛っ」


 ったく、もしかしてまた体型のこと気にしてるのか。


 そんなに最高のプロポーションをしておいてこれ以上どこをどうするつもりなのか。常に意識しておくのも体型維持には大切なのかもしれないが、たまには自分の身体を甘やかしてあげないと。特に今日みたいな頑張った日にはなおさらだ。


「はい、もう頼みました。当然俺一人じゃ食べられない量だからな。サキもたらふく食べろよ?」


「……はい」


 まあ、自分でそれができないというなら俺がその役割を担うまでだ。


 今日はピザパーティー。少し調子に乗ってLサイズのピザ二枚とポテト、チキンも少し頼んであるからな。





 俺からのーーーー彼氏からの、細やかな頑張ったで賞だ。

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