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212話 勇気の吐露と羞恥心1

212話 勇気の吐露と羞恥心1



「夕凪さん!!」


「っえ!? な、なんだよ……」

 

 俺の声にーーーー苦手な男の声に反応し、夕凪さんの小さな身体がビクンッ、と跳ねる。


 ここにいたい。いさせてほしい。その気持ちを表明する。その方法は、俺には一つしか浮かばなかった。


「俺、柊アヤカの大ファンなんです。サキだから好きなんじゃなくて、純粋に。推しVが彼女だったなんて知らなかった頃から、ずっと……!」


 彼女の無邪気さに。明るさに。可愛さに。サキに抱いている″好き″とは明確に違う……しかし、確かに夢中になれる感情を抱いていた。


 画面の中にいるあの子には、とにかく見ているだけで明るい気持ちになれる。そんな魅力があったのだ。


「アカネさんのことも、女性ながらにかっこいい人だと尊敬していました。ミーさんだって、こんなに頼りになる大人の人に俺は出会ったことがありません」


「な、なんなんだ突然。一体何の話をーーーー」


「そして夕凪さん。俺は三人に対してそうなように、あなたの大ファンです。夕凪さんが表紙や挿し絵を担当しているラノベはほとんど全部持ってると思います。今日だってほら、これ。本物の夕凪さんに会えるって浮かれて、サイン書いてもらう気満々に一冊持ってきちゃってますし」


 鞄の中からラノベの一巻とサインペンを取り出し、思わず恥ずかしさで笑ってしまいながらも。俺は言葉を続ける。


「そして俺は、サキのことが大好きです。サキが柊アヤカとして選んだこの道を、ずっと支えていきたいと思っています。だからどうか……ここに、いさせてもらえないでしょうか……」


 気持ちの全てを告げて。頭を下げた。


 俺にはアヤカのような明るさも、アカネさんのようなかっこよさも。ミーさんのような頼り甲斐も、夕凪さんのようなイラスト力も無い。


 だから、裏から支えたい。マネージャー業や編集、その他諸々。俺にできることを、全部。


「…………」


「ママ、私からもお願い! ママが男の人を苦手なのは知ってるけど、やっぱり私和人にもここにいてほしい! ダメダメな私を、ずっと側で支えててほしいの!!」


「サキ……」


 ぎゅっ、と。机の下で握られていた手の力が、より一層強くなる。そしてそれと共に、隣でサキの頭が下がっていた。


 思わず目元が潤みそうになるのを我慢しながら、返答を待つ。一秒、二秒と沈黙が続くたび、どんどんと上がっていく心臓の音が頭に響き渡った。


 そしてーーーー


「……く……えよ……」


「えっ……?」


 夕凪さんが、何かを呟いたのが聞こえて。少しだけ頭を上げ、耳を傾ける。視界の端では同じように、サキもその言葉を必死に聞き取ろうと、視線を前へ送っていた。


「……早く、言えよ。私のファン、なら」


「なっちゃん? それ、どういうーーーー」


 ダンッッ!! テーブルの表面を、小さな二つの手のひらが叩く。


「「「「!!?」」」」


「本、貸せ。サインくらい何個でも書いてやるから」


「へっ? あ、はいっ」


「宛名は?」


「じゃ、じゃあ『和人くんへ』って書いてもらえると……」


「よし分かった。ふふ、初めてだな。こうして面と向かったファンの子にサインを書いてやるのは」




 怒っ……て、ない? というか、機嫌が良くなってる?  

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