*ティノとフィオのこと。
◆二人は兄弟?
これはティノとフィオが誕生してから二日目のこと。
朝起きたら頭の横にティノとフィオがいた。
「レンおはよう」
「レンおはよー」
「ティノ、フィオ、おはよう。二人とも早いな? ……ちゃんと眠れた?」
「うん。バッチリだよー!」
「そうか。ならよかった」
フィオが元気いっぱいに答える。
起きるのが早すぎないかと思ったが、きちんと眠れたのならよかった。
「さて、レンも起きたことだし……」
「あ、そうだね!」
……ん? なんだ? 何かあるのか?
首を傾げると、ティノがクスリと笑った。
「おはようのちゅー、していい?」
「あ、あぁ。いいぞ?」
内心で“うわあああああ”ってなる。
“おはようのちゅー”のやめ時がわからない。そしてドンドン対象が増えていく。
……あー、でも、うん。諦めが肝心だな。朝はみんなとおはようのちゅーをするのはもうウチでの習慣だ。
二日目にして早くもウチの習慣に馴染んだ二人からの“おはようのちゅー”を両頬で受けた。お返しに二人の小さな頬にキスを贈ると、クスクス笑っていた。かわいすぎる。
二人の可愛さに悶えていると、フィオがティノの頬に手を添えた。
「ティノ兄さんにもちゅー」
「ありがとうフィオ。ふふ、お返し」
小さな妖精さんが互いのほっぺたにキスを贈りあう光景は、とてもほのぼのするのだが、何か今聞き捨てのならない単語が混ざっていたぞ?
そういえば、ティノとフィオはよく似た顔立ちをしている。
「……えっと、二人は兄弟なのか?」
「んーん。違うけど、ティノ兄さんは近い存在だから兄さんって呼んでるんだ」
「そうなのか」
「まぁ人間でいう兄弟のようなものと思っていいよ」
ティノが穏やかに答えた。
……兄弟のような近い存在って、どういうことだろうな?
疑問はまだ解決していないが、あまり突っ込んで訊いて嫌われたら悲しい。
無理に聞き出すことはせず、これからゆっくりと知っていこうと思う。
俺は朝食の準備をするために着替えることにした。
*…*…*…*…*…*
◆二人の性別は?
「なぁ、二人は性別ってどっちなんだ?」
ティノもフィオも外見は中性的なので、男の子にも女の子にも見える。どっちなんだろう。気になる。
そんな俺の疑問を聞き、ティノが口を開く。
「ふふふ。ねぇ、レン。僕らは花から生まれたんだけど、花の性別ってどっちだかわかる?」
「え?」
花の性別?
花にはあまり詳しくないが、性別、ってか花にはおしべとめしべが……てまさか。
恐る恐るティノを見上げると、ティノはにっこり笑った。
まさか!?
緊張の一瞬。
俺が口を開く前に、フィオがズイッと眼前にやってきた。
「正解はどちらにもなれる、でしたー!」
「へ?」
気の抜けた返事をする俺に、ティノが説明をしてくれる。
「僕ら妖精に性別はないんだよ。これはね、種を残すためだと言われている。昔は男女に性別が別れていたらしいんだけど、乱獲されて凄く数が減ったみたいだね。男女で番うのが大変になったので、性別を無くしてどちらにもなれるようになったらしいよ。絶滅しないための進化だったらしいけど、結局さらに貴重だってことで乱獲されたみたいだね」
「そ、そうなの……か」
さらりと言われたが……り、理由が重すぎる。
気軽に訊いてしまって気を悪くしていないだろうか。
そっと二人を窺うが、にこにこ笑っていた。
……大丈夫そうだな。
ティノとフィオに悟られないようにホッとしたところで、二人に突撃された。
「うわっ!」
「あはは。レンったら凄く可愛いー!」
「本当にね。レンがみんなに好かれてるの、わかるなぁ」
「はぁ? 何言ってんだよ?」
両手でティノとフィオを顔から引き離すと、今度は肩に座ってクスクス笑われる。しかし意味がわからん。
……てか、首筋くすぐったいから!
クスクス笑われると、首筋に微妙な震動がしてくすぐったい。もう一度二人を引き剥がそうとするが、余計に面白がって張り付かれてしまった。
ちょ、ホント勘弁して!
お待たせしてすみませんでした。
ここまで読んでいただきありがとうございました!




