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第307話 「報告・連絡・相談」

 ドゥメール伯爵邸内書斎兼魔法研究室、金曜日午後5時30分……


 ルウとフランは今、この部屋の大きな肘掛付き長椅子ソファに座っている。

 2人は様々な報告をする為にフランの母でもある魔法女子学園理事長アデライド・ドゥメール伯爵に対して報告の為、訪問していたのだった。


 リリアーヌ・ブリュレとサラ・セザールの2人の教師がルウ担当の専門科目の副担当就任を申し出た事から始まったこの話。

 カサンドラが絡んだ秘密のアルバイトの話までの詳細を話すと、不機嫌になるかと心配していたフランの予想に反して、アデライドはさも面白そうにくっくと笑ったのである。


「ふふふ、カサンドラ先生も他の2人の先生もなかなかやるじゃない。残念ながらウチの給料がいかに安いかという不満がはっきり表れているわね」


 そんなアデライドに対してフランは自分の意図する所に何とか着地させようと言葉を探しつつ話を繋ぐ。

 

「もう、理事長! 冗談が過ぎますよ。でも3人の行動は魔法女子学園就業規則に当てはめると大きく違反している所が多々あります。宜しいのですか?」


 フランはアデライドの機嫌のいいうちにと上手くなだめつつ、今回の件に関して彼女がどのように考えているか遠回しに探ろうとしたのである。

 しかしアデライドは苦笑しながら直接、今回の処分には言及しない。


「カサンドラ先生はとても要領が悪いのね。容姿は同じ双子なのに器用さは全てルネ先生が持っていってしまったみたい」


 この言葉を聞く限り、どうやらアデライドは3人のとがを一方的に責めるつもりはないらしい。

 フランはホッとして溜息を吐いた。


「では……3人をお許しになると?」


「フラン、貴女もカサンドラ先生に負けずとも劣らない不器用な女ね。もう少し台詞に情感を篭めた方が良いわ。それじゃあ芝居だと見え見えですよ」


「え!?」


「私が最初から3人の処罰を厳重注意に留めるように意図しているって事を察して頂戴。大丈夫ですよ、お前の考えている通りにしてあげるわ」


「お、お母様!」


「ふふふ、理事長から、いつものお母様になってしまったね。でもルウの深謀遠慮がカサンドラ先生にそのような申し出をさせたのだから結果良しじゃない。これからもあなた達夫婦はこうして助け合って生きて行くのよ」


 アデライドはそう言うと満足そうに頷いた。

 それを聞いていたルウはアデライドに対して今回のカサンドラの好意をぜひ活かして欲しいと頼み込む。


「アデライド母さん、魔法攻撃術と上級召喚術の俺のクラスはカサンドラ先生とのクラス統合による定員増で受講者を増やして貰えれば幸いだ。これまでの学園の前例には無いかもしれないが希望者全員に俺の授業を受けさせてやりたい」


 ルウの希望を聞いたアデライドは「問題無いわ」と答えて快諾した。

 それに加えてルウが担当する残りの魔道具研究のクラスの対処の件にも触れたのである。


「ルウ、お前は本当に生徒の気持ちを考えているわ。私は嬉しいよ……魔法攻撃術と上級召喚術のクラスのみならず魔道具のクラスに関しても何か良い方法がある筈ね。これからそれを考えようか」


「ありがとう、アデライド母さん。俺はフランを助けた事で貴女とも巡り会って本当に良かったと思うよ」


 ルウが感謝の意を示してそう言うとアデライドはとても嬉しそうな表情を浮かべた。


「ふふふ、こちらこそ優しいお前がフランの夫である事を心から嬉しく思うよ。お前が何者であろうと私はお前の母でいる事を隠す事はないわ」


 アデライドはルウが召喚魔法を通じて人外と触れているのを知っている。

 ルウが只の人間では無い事を理解し、それを知られた時の覚悟もしているのだ。

 それを聞いたルウはフランを見て、お互いに頷き合うと残りの報告と相談の件を切り出した。


「ではアデライド母さん、お願いついでにあと2つほど頼みたい」


「2つ……何かしら?」


「今のカサンドラ先生の副業に近い話だ。母さんには紹介し切れていないが最近随分と俺には従士が増えた。彼等が人の社会で害を為さず生きて行く為に折り合いをつけねばならないのです」


 ルウは先程のアデライドの理解をしているという話を受け、これからの現実的な話をしようというのだ。


「貴方の従士達の折り合い?」


「ええ、折り合いです。人の子の世界に同じ目線で触れ、生きて行く為に商売などをさせる積りです。俺達、ブランデルの家から資金を出す形となりますが、出資した分は当然回収した上で利益を出して行くようにします。それがひいてはブランデル家の財政を支えてくれる事にもなります」


「ふふふ、面白そうね。貴方が召喚した人外の者にこの王都で店を持たせるって事か……貴方は商いの才能もありそうね」


「さあどうでしょう? ……ただその店のひとつではジョルジュの魔法修行もさせようと考えています。いつまでもキングスレー商会のマルコにばかり頼ってはいられません」


 ジョルジュの名が出た途端、アデライドの顔がほころんだ。

 そして段々とルウの従士達の『店』に対して興味も湧いて来たようである。


「……お前は弟の事も先々の事まで考えてくれているのね。宜しい、お前の副業を許可します。但し面白そうだから私もその店のお手伝いをさせて貰っても良いかしら?」


 それを聞いていたフランも苦笑した。

 とうとう好奇心が抑えきれなくなった母の性格が出たからである。

 今度は先程のアデライドと同様にルウは快諾した。


「ああ、大歓迎です。アデライド母さんが喜びそうな店も出せそうですよ」


「本当!? それは楽しみね。絶対に私も手伝せて貰うわ」


 意気込むアデライドに残りのひとつの話も切り出すルウ。


「もうひとつは事後報告になりますが、俺とフランがカサンドラさん姉妹と共に公務員活動優遇制度を生かして冒険者活動をする事になりました。ちなみに冒険者登録はエドモン様に紹介をお願いしてバートランドで行う事を考えています」


「ふふふ、それも面白そうね。カサンドラ先生達もお前達が居れば無茶はしないだろうし、伯父様もお前とフランが行けば喜ぶわ。私がもう少し若ければ一緒に行きたいのに……まあフランにも良い経験になると思う。だけどジゼルはどうするの? 一緒に行きたがるのでは?」


 ジゼルの事を聞かれたルウは穏やかないつもの表情で彼女を含めた妻達の近況を話して行く。


「未だフランとモーラル以外にこの件は話していません。ただジゼルを含めて他の妻達は進路の希望が出るなど将来への希望が出ています」


「将来への希望? 成る程、もうそういう時期だものね。それでジゼルは相変わらず騎士志望なのかい?」


 それを聞いたルウは笑顔で首を横に振った。


「ジゼルは騎士志望を変更して魔法大学経由でこの魔法女子学園の教師になりたいという希望が出ていますよ。だから今回の件は学業優先で基本見送りを勧めますね。もしジゼルを含めて彼女達に『実戦』の経験を積ませる際には俺かフラン、もしくはモーラルが付き添うようにはします」


 ジゼルの将来の話に始まり、他の妻達の近況と進路の希望、そして最後はリーリャとその師であるラウラの話まで伝えてルウ達の報告と連絡、そして相談は終わったのである。


「そう……フランはあのラウラ・ハンゼルカ嬢と友人になったのね。お前は元々友人が少なかったし、お互い魔法オタクで相性ばっちりじゃない?」


「お母様……友人が少ない魔法オタクって……そのお言葉そっくりお返ししますわ」


 お互いを魔法オタクと仲良く言い合う母と娘。


 そんな2人をルウは温かく見守っていたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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