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第157話 「団結」

 ルウとフランにはまだ妻達に話す大事な事が残っていた。

 当然、新たな家族になった『赤帽子』も加わっての話になる。

 ちなみに『赤帽子』の名は全員一致でアルフレッドになった。

 愛称がレッドの為である。

 安直なようだが、名前を貰った赤帽子=アルフレッドは嬉しそうであった。

 

 落ち着いた所でフランはルウに目配せすると話を切り出す。


みんな、良い? 旦那様と一緒に大伯父様とお母様から大事な話があったの。心して聞いてね」


 珍しく居住まいを正して話すフランをルウ以外は緊張して見詰めている。


「実はね……」


 ―――30分後


 フランの話が終った。

 ところどころルウがフォローしながらいろいろな付帯説明もしたのである。

 ジゼル達の受け止め方や反応は様々であった。

 しかし共通しているのは全員が大きな危機感を持った事だ。


「それは一大事だ。国と国の争いに加えて悪魔が背後に居る可能性があるなんて!」


 ジゼルが唸るように言う。


「ジゼルの言う通りだ。まあ旦那様がいらっしゃるのは心強いが、ロドニアの騎士団は本当に強いそうだ」


 とナディア。


「私達は一体どうすれば宜しいのでしょうか? 旦那様」


 オレリーが不安そうにルウに問う。


「オレリー、お前は今日、水の魔法使いとしての一歩を踏み出した。これから切磋琢磨して己を磨いて行く事だ。そして皆でこの難局を乗り切るんだ」


 ルウの言葉を受けてジョゼフィーヌが大きく頷いた。


「大丈夫ですわ、オレリー。今日の異界での修行で分ったでしょう? 私達は強くなれます。それにたとえ最後の時が来ても、それまでは精一杯生き延びる努力をジョゼは致します!」


「私とアルフレッドは全力で皆さんを守ります! 例えこの身が砕け散ろうとも!」


「御意!」


 皆の覚悟を聞いてモーラルも一段と気合が入っており、アルフレッドも簡潔なひと言だがその言葉には並々ならぬ決意が窺がえた。


「ははっ。皆、この強い気持ちなら大丈夫さ。それに時間はまだあるし、ロドニアと戦争になると決まったわけじゃない。まずはその留学して来る王女様――リーリャと言ったかな。その子の事を知るのが重要だ」


 ルウの言葉により、少しその場の雰囲気が和らいだ。

 最悪の事を想定していれば余裕が出てくるものである。


「生徒会としては王女様へ歓迎の挨拶が必要だろうな? 旦那様」


「ボク達と一緒に歓迎の挨拶を考えてね。顧問なんだから」


 ジゼルとナディアにそう言われてルウは困った顔をした。


「ははっ、そうか……確かに俺は生徒会顧問だった。2人に騙されて顧問になった気もするが」


「そんな細かい事、ボク達の旦那様が言っちゃあ駄目さ。良いから考えといてね」


 ルウが困って頭を掻くさまをナディアがにやりと笑い、皆もつられて大笑いしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ドゥメール邸、フラン寝室午後12時……


 その後……

 ロドニアのリーリャ王女が訪問する内容に関して現状で分かって居る事を皆で共有した後、話は終わり解散となった。

 皆がそれぞれの寝室に引き上げたが、ルウはそのままフランの部屋に残ったのである。


「何か私ばっかり旦那様に抱かれて悪いわ……」


 ルウが優しく、しかし情熱をもってフランを抱き、彼女も女の悦びで彼に応えた。

 その波が静かに引いた後にフランがぽつりと呟いたのである。


「お願い! 旦那様。新居に引っ越したら皆を抱いてあげて……皆は私が先に抱かれて、この愛の行為に憧れと怖さを持っているの。それを早く体験させてあげて……」


 最初は強い口調で懇願していたフランの声がだんだん消え入りそうになった。

 そして恥ずかしいと言いながら今度はルウの耳に口をつけてそっと囁いたのである。


「だって……こんなに……素晴らしいんだもの。こんなに満たされるんだもの。そして全員がいずれは旦那様との子供が絶対に欲しいって願っているのよ」


 ルウは彼女の言葉を聞いてまた荒々しい衝動に駆られる。

 フランの事が大事なのに、こんなに愛しているのに彼女を征服したい、支配下に置きたい、そんな強い欲望なのだ。


 これが創世神が人間に与えた愛の本能なのだろうか……


「明日は大伯父様も同行して学園にいつもより早く行ってケリーに今回の事を話すのよね。そろそろ寝ないと……あ、旦那様……また? で、でも抱いて! もっと抱いて欲しい!」


 明日の朝の話を半分、うわの空で聞いていたルウは無意識のうちにフランの乳房に手を伸ばしていたのだ。

 荒々しくルウに乳房を揉まれながらフランは呻く。

 そしてルウはフランに優しくキスの雨を浴びせながら、そっとその逞しい身体を重ねていったのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ドゥメール邸正門前、明け月曜日午前6時……


 ロドニアの王女が留学する件で学園全体で協力体制をとる為にまず教頭のケルトゥリ・エイルトヴァーラに話を通す必要がある。 

 休日明けの今日はいつもより早くケルトゥリは出勤する習慣があるというので、その後の時間の関係もあり、始業前に彼女を捉まえて話そうという事になったのだ。


 ルウにとって意外だったのはエドモンも同行すると言って来た事である。

 ケルトゥリが昔、冒険者だったのはルウも知っていた。

 ただ冒険者としてどんな暮らしを送っていたかなどとは聞いていないのだ。

 そんなルウにケルトゥリと会って話せば分るとエドモンは面白そうに笑ったのである。


 ルウとフランは早く起きて出勤だが、何とジゼル達も頑張って早起きして来たのだ。

 ジゼル曰く、主婦になるのだから今から鍛えないと、という事らしい。


「私はいつでも鍛えるという言葉には敏感だからな」


 誇らしげに胸を張って言い放つジゼルにナディアは嘆息した。


「エドモン様、お聞き下さい。これでボクより成績が良くて脳筋では無いなんて世の中、間違っていますよね」


「にゃにおう! これでって何だ? これでって!」


 2人の会話を聞いていたオレリーが我慢できずにぷっと噴き出している。

 ジョゼフィーヌやモーラルも手で口を押えている。

 勿論、エドモンは大笑いしていたが、ジゼルを褒める事を忘れない。

 エドモンは何となく昔の自分に似ているジゼルが可愛いのだ。


「ジゼルよ。お前は若い頃の儂によ~く似ておる、文武両道という意味でな。能ある鷹は爪を隠すという諺がある。いずれは皆、お前の価値が分る筈だ」


 エドモンに褒められたジゼルは有頂天になり、嬉しくて堪らない様子でルウに報告したのである。


「聞いていただけたか? 旦那様。エドモン様がいずれナディアなど私の足元に平伏ひれふす時が来ると仰っている」


 それを聞いたナディアは不満そうだ。


「え~!? ジゼル! エドモン様はそんな事、仰っていないよ」


 そんな2人の喧嘩? を見て、何とエドモンは更に大笑いしていたのである。


 朝から、こんなに機嫌が良いなんて!


 ルウは勿論、この娘達も余程気に入ったのだろう……

 朝はいつも不機嫌そうな伯父のそんな豹変振りを見て、アデライドは驚きながらも幸せに浸っていたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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