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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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27章  転生者のさだめ  02

 会議には当然ながら俺も出席した。


 会議では遺跡での情報を元に様々な対応策が練られたが、やはり問題となるのは10万のモンスターへの対応である。


 さいわい大部分は1~3等級のモンスターらしいので普通の軍でも対応はできそうなのだが、いかんせんその数が多すぎる。


 むろん7等級を超える高等級モンスターも多数出現するとのことで、正直かなりの被害は覚悟しなくてはならないだろう。


 出し惜しみをしている場合でもないので、俺は遺跡の兵器群を起動することも提案し、検証したうえでという形で承認された。


 一部懐疑的な視線を向ける重鎮もいたが、遺跡で回収した魔導銃の性能を披露することで納得してもらった。


 言うまでもないが、遺跡の兵器群については女王陛下に事前に話は通してある。


 問題は、この話がサヴォイア女王国だけにとどまらないという部分である。


 竜人族の国ローシャン、隣国リースベン、そして凍土の民を始めとして、大陸にある国には一応話をしておいた方がいいだろうという話になった。


 もちろん『大厄災』出現までの日数を考えれば、俺の『転移魔法』も使いまくらないとならないだろう。


 どうやらまたブラックな日々が続きそうだが、大勢の命がかかってる話であるからなんてこともない。


 さてそんな訳でまず俺が女王陛下に頼まれたのは、ローシャンとリースベン、そして凍土の民への連絡である。


 他国とのやりとりは基本的には王家の使者が行うべきものであるが、その3か所に関しては俺が女王陛下の書簡を持っていくのが一番早いだろうという判断である。


 それに先だって、俺は一度ロンネスクへ戻ることにした。


 公爵閣下への書簡を頼まれたこともあるが、勇者パーティの皆へも話をしておこうと思ったからである。


 公爵閣下に書簡を渡しいくつか話をした後、家に戻った俺を、猫耳勇者兼専属メイド(?)のラトラが迎えてくれた。


「あ、ご主人様お帰りなさいませっ」


「ただいまラトラ、何か変わったことはあったかい?」


「いえ、特にはありません。ただちょっと、家のこととは関係なく、なにかヘンな感じがします」


「変な感じ?」


 ラトラが可愛い顔を曇らせるのは珍しい。


「はい、なんていうか、よくないことが起こるような、モンスターが近くにいるような、なんかそんな感じです。これってご主人様がおっしゃっていた『大厄災』と関係があるんでしょうか?」


「ああ、なるほど……」


 ラトラは勇者特有の勘かなにかで感じ取っているのかもしれない。


「実はそのことで話があってね。ちょっと勇者パーティの皆に集まってもらいたいんだ。リナシャたちには帰りがけに声をかけたからすぐ来ると思う。集まったら話をしよう」


「はいっ、声をかけますね」


 ラトラが家にいる娘たちに声をかけている間に、リナシャたち3人もやってきた。


 リビングに集まった勇者パーティと、セラフィ・シルフィ姉妹を前に、俺は『大厄災』の話、すなわち10万のモンスターが現れること、その後『厄災』を超える強力なモンスターが現れることを話した。


 さすがに魔王との戦いを経験した勇者パーティの面々も顔色が優れない。セラフィとシルフィにいたっては顔面蒼白といっていいくらいである。


 その中で最初に口を開いたのはネイミリアだった。


「師匠、そうすると私たちはそのモンスターの大群を相手にするってことでいいんでしょうか?」


「そうなるね。今のところここロンネスクを守ってもらいたいと思ってる。もちろんリナシャやソリーンたちは教会の許可が必要だけど、それは公爵閣下から要請が行くと思う」


「師匠はどうされるんですか?」


「俺は転移魔法があるから首都やロンネスクを中心にあちこち回って戦う予定だよ。等級が高いモンスターだけ倒して回る形になると思う」


「クスノキさんならできるんだろうけど、それってメチャクチャな話だよねっ」


 気を取り直したのか、リナシャが呆れたように言う。


「確かにね。まあできることはすべてやるさ。力があるものの義務みたいなものだしね」


「クスノキ様は本当に素晴らしいお考えをお持ちだと思います。しかし無理はなさらないようお願いいたします」


 ソリーンが真剣な瞳を向けて心配してくれる。他の皆もこくこくと頷いてくれるのは心が温まる気がする。


「ありがとう。俺の一番重要な仕事は最後に現れるだろう『大厄災』の相手だからね。それに支障がでないようにセーブはするよ。もちろん無理はしないから大丈夫」


 と言っても、『大厄災』の強さはさすがに未知数だからな。こればっかりは直接戦ってみないと分からない。


「あの、私たちはどうすればいいでしょうか?」


 ようやく顔色が戻ってきたセラフィが遠慮がちに声を上げた。隣のシルフィもようやく相づちをうつくらいには回復したようだ。


「セラフィとシルフィは『生命魔法』で怪我人の回復をしてもらいたいんだ。教会の方で救護施設を設置するだろうから、そこで手を貸してもらいたい」


「はい、わかりました」


 セラフィたちはもともと『生命魔法』は使えなかったのだが、『光の巫女』という称号を持っているなら使えるようになるだろうと思って習得させてみたらあっさり習得してしまったのだ。


 ちなみに『神聖魔法』もついでに習得させたらできてしまったので、回復役として非常に有能である。


 このあたりはやはり彼女たちもキラキラキャラであった。


「パーティのリーダーはネイミリアに頼む。今回は公爵閣下の指示で動いてもらうことになっているからそちらの指示で動いて欲しい。皆の力はもう俺が心配するレベルじゃないけど、高等級の相手には十分注意してくれ」


「はいっ」


 返事にいつもの力強さが戻ったので、勇者パーティの皆はとりあえず大丈夫だろう。


 ロンネスクにとって彼女らはアメリア団長と並んで最高戦力になる。厳しい戦いになるかもしれないが、彼女達なら戦い抜けるだろう。


 さて、それじゃ心置きなく3か所の国を回ることにするか。久々に会う人間もいるし、これはこれで楽しいかもしれないな。

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