21章 聖地と聖女と 01
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名前:ケイイチロウ クスノキ
種族:人間 男
年齢:26歳
職業:ハンター 3段
レベル:272(34up)
スキル:
格闘Lv.72 大剣術Lv.73 長剣術Lv.65
斧術Lv.55 短剣術Lv.47 弓術Lv.33
投擲Lv.35
九大属性魔法(火Lv.68 水Lv.66
氷Lv.52 風Lv.72 地Lv.78 金Lv.86
雷Lv.59 光Lv.59 闇Lv.32)
時空間魔法Lv.73 生命魔法Lv.63
神聖魔法Lv.60 付与魔法Lv.64
転移魔法Lv.10(new)
九属性同時発動Lv.42 算術Lv.6
超能力Lv.96 魔力操作Lv.82 魔力圧縮Lv.72
魔力回復Lv.73 魔力譲渡Lv.67
体力注入Lv.23
毒耐性Lv.26 眩惑耐性Lv.32 炎耐性Lv.40
風耐性Lv.19 地耐性Lv.22
水耐性Lv.20 闇耐性Lv.20
衝撃耐性Lv.59 魅了耐性Lv.17
幻覚看破Lv.11 朧霞Lv.16
多言語理解 解析Lv.2 気配察知Lv.54
縮地Lv.62 暗視Lv.44 隠密Lv.46
俊足Lv.64 剛力Lv.75 剛体Lv.69
魔力視Lv.52 最適ルート感知Lv.45(new)
不動Lv.72 狙撃Lv.81
錬金Lv.75 並列処理Lv.83
瞬発力上昇Lv.65 持久力上昇Lv.68
反射神経上昇Lv.48
〇〇〇〇生成Lv.26 人間向け〇〇〇〇生成Lv.11
称号:
天賦の才 異界の魂 ワイバーン殺し
ヒュドラ殺し ガルム殺し
ドラゴンゾンビ殺し 悪神の眷属殺し
闇の騎士殺し 邪龍の子殺し 邪龍殺し
四天王殺し 魔王の影殺し 魔王殺し(new)
奈落の獣堕とし
聖弓の守護者殺し
レジェンダリーオーガ殺し
キマイラ殺し サイクロプス殺し
オリハルコンゴーレム殺し
ガーディアンゴーレム殺し
ソードゴーレム殺し
ロイヤルガードゴーレム殺し
エルフ秘術の使い手
エルフの護り手 錬金術師
王家の護人
オークスロウター オーガスロウター
ゴーレムクラッシャー
エクソシスト ジェノサイド
ドラゴンスレイヤー
アビスの飼い主 トリガーハッピー
エレメンタルマスター シャープシューター
人間重機 光を導く者 喜びを与える者
解放者(new)
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「ふふふっ、ずいぶんと疲れているようだな?クスノキ卿」
見た目は金髪碧眼の深窓の令嬢、正体はサヴォイア女王国のトップであるリュナシリアン女王陛下は、そう言ってテーブルの向こう側で楽しそうに微笑んだ。
ここは陛下の執務室。
なぜか俺はすでにこの部屋の常連みたいな扱いになっている。
「魔王討伐に関しては凱旋パレードのようなものはあるだろうと予想はしていましたが、まさかここまで大規模とは思っていませんでした」
「『勇者と魔王』と言えば子どもでも知っている英雄譚だからな。為政者としてこれを持ち上げぬ手はない。『厄災』についてはすでに市井にも話は広まっているゆえ、民にとっても明るい話題は必要であるしな」
「ええ、もちろんそれは十分に理解しているつもりですし、パレードそのものはいいのですが……」
「さすがに今回の件に関しては卿のことも含めて隠すことはできん。もっとも『魔王』そのものは勇者一行が倒したと報告にもあったゆえ、卿についてはそこまで話は広まるまい。……これは上手くそう見せたのか?」
「私が補助をしたのは確かですが、彼女たちの力も本物です。最後は確かに彼女たちが力を合わせて魔王を倒しました」
「……そうか。しかし大勢の兵たちが見守る中で勇者と魔王の戦いが行われるとはな。おかげで記録官たちもおおわらわだ。楽しそうではあるがな」
そう話す陛下自身もかなり楽しそうに見える。が、もちろんそれを指摘するのは不敬であろう。
「ご歓談中失礼いたしますぞ」
遅れて部屋に入って来たのは女王陛下の最側近のヘンドリクセン老。凄腕執事といった佇まいの彼の手には、結構な量の書類が見える。
「急ぎ気になるところだけ情報をまとめました。クスノキ殿にもお立合いいただき確認したいのですが、よろしいですかな?」
「はい、もちろんそのつもりで参りましたので問題ありません」
「お疲れのところ申し訳ありませんな」
「いえ、これでも管理側の大変さは骨身に沁みておりますので。私は現場組ですから、むしろ楽をさせていただいている方です」
つい口にしてしまったが、前世で現場から管理職に回った時に感じた少なくない衝撃は、こちらの世界に来ても忘れられないんだよな。
現場もそれはそれで大変だったし言いたいことも腐るほどあったのだが、両方の立場を知ると何も言えなくなるのは何ともやるせない。
と昔を思い出している俺を見て、女王陛下は目を細め口元をほころばせた。
「ほう、その言いようだと卿にもそろそろ貴族として自覚が出てきたということか。上に立つ者の苦しさをすでに理解しているというのは、貴族として得難い資質と言えるだろう」
「へっ……あ、いえ、申し訳ありません。今の言葉にそこまでの深い意味はございません。ただ陛下やヘンドリクセン閣下に気を使っていただいていることに感謝申し上げているだけで――」
「そこはへりくだらずともよい。卿に資質があるならば、こちらの気兼ねも減るというだけの話」
いやいや、そこは気兼ねしまくって欲しいんですが……。
ほら、ヘンドリクセン老もなにやら複雑そうな顔をしていらっしゃいますし、ちょっとした言葉で貴族の資質アリ判定はご勘弁ください。
「陛下、こちらのお話を進めてもよろしいですかな?」
「ああすまぬな。進めてくれ」
「ではクスノキ殿、この度の魔王討伐に関わっていくつか確認したいことがございます。まずは……」
脱線しかけたところをヘンドリクセン老が立て直し、戦後処理を含めたいくつかの懸案事項について話が進められた。
まずは『凍土の民』についてだが、やはり戦勝国として敗戦国に対して賠償を含めたそれなりに一方的な内容の条約締結を求めるようだ。
俺が伝えた集落の情報などから半自治領のような形で支配下に置くことも考えるそうだが、それも交渉次第ということになるだろう。
「クスノキ殿は生き残りの四天王と面識が深いと聞いておりますので、仲介役をお願いすることがあるかもしれません。お含みおきくだされ」
「は、承知しました」
ヘンドリクセン老の言葉に俺が頷くと、女王陛下は少し意味ありげな目で俺を見た。
次にベルゲン大佐……ベルゲン家についてだが、当然ながら審問官を派遣して厳しい取り調べが行われるらしい。
『王門八極』まで派遣されるそうで、こちらはすでの俺の手の届く話ではなく、一応魔王製魔道具の『裏の機能』の話をしたくらいである。
「こちらについてもグリューネン将軍よりクスノキ殿の功が大きいとの報告が上がっております。八面六臂どころの話ではありませんな」
「ありがとうございます。しかしながらそちらはエイミの手によるところが大きいのです。彼女にも何らかの沙汰をいただけると嬉しく思います」
「卿は本当に……欲がないというか、善良というか、まったくもって貴族らしくないな。ま、そういう所は余としては好ましいが」
おっと陛下から今度は貴族失格判定が。その割には嬉しそうな顔をなさっているのは理由がよく分かりませんが。
「んんっ、おほんっ。それでは最後に魔王討伐の褒賞についてでございますが……」
こちらはメインは勇者パーティの面々に対して行い、俺はその教導を行った功ということで一段落とした扱いにするという形になった。
「ラトラたちの話を聞くまでもなく、魔王討伐に卿の力が非常に大きな役割を果たしていたことは分かっている。むろんこれは表面上の褒賞ということで納得してもらいたい」
「陛下のお心遣い感謝いたします。私としては異存はございません」
「うむ。『邪龍』『魔王』そして『奈落の獣』もすでに卿の手によって落ちたという話は聞いている。もはや今の時点で卿を最低でも伯爵に上げねばならん程の話だ」
「それは……」
「まあ待て。余としては卿はさらに功を挙げるだろうと考えている。まだ『厄災』が残っている以上、申し訳ないが卿には今しばらく今の立場で尽力を願いたい。それらが片付いたのち、まとめて卿の功に報いたいと考えているがどうだ?」
なるほど、面倒な案件の先送りはもと日本人としては良くも悪くも分かりやすい話である。
「異存ございません。私としてもその方がありがたく思います」
「うむ。それと今まで言いそびれていたが、途中勇者パーティに横槍が入った件は面倒を押し付けて済まなかったな」
忘れかけていたが、横槍とはあのボナハ青年の件だろう。
女王陛下が美しいかんばせを曇らせているのを見れば、あの件がかなり苦渋の決断であったことは明らかだった。
「派閥のバランスを考えれば、あそこで横槍が入るのはむしろ自然でしょう。陛下がもし強く拒絶なさっていれば、余計な軋轢を生みかねなかったと思います。幸い陛下が厳しい条件をおつけになったので上手く手を引いていただくことができました。ですので私としては特に申し上げることはございません」
「卿は色々と見えるものが多そうだな。あの件に関しては、ケルネイン、というよりトリスタンとの間に結構な策の応酬があったと聞いている。それを見事に退けたのだから、卿の手腕は高く評価すべきものだ」
「私としては半分は賭けのようなところもございましたので。そういえば、勇者の情報が流れたのはやはりアルテロン教会が関わっていたのでしょうか?」
あの件はバクチ要素が強かったので、あまり評価されるのも面映ゆい。少々強引に話題を変えることにする。
「うむ。そちらに関しては一応苦情は送っておいたが、実のところ教会がこちらの思惑通りに動かねばならぬ法的な根拠はない。ただ、今の教皇はその辺り非常に感覚の鋭い人物なので、情報は関係者以外には秘匿しようとしたはずだ。誰かしら、別の思惑がある者が流したと見ている」
「それはトリスタン侯爵の息のかかった、教会内部の人間ということですか?」
「かもしれぬ。残念ながらそこは王家でも口を出せる話ではない。まああの教皇のことだ、このまま放っておくということもあるまいが、教会は今別の厄介ごとを抱えていてな」
「厄介ごと、ですか」
「首都よりさらに西に、教会が『聖地』と呼ぶ場所があるのだが、そこが少し前から瘴気に侵され始めたらしいのだ。原因は今のところ不明だが、恐らくは『厄災』が関わっておろうな。それが解決せねば大聖女の位も譲れぬということで、教会内部の、特に権力志向の強い者たちが騒いでいるのだ」
「なるほど……」
ああ、これは間違いなく次のイベントが起きるフラグですね。
教会内部の腐敗の調査と聖地の奪還。
これもベタベタな展開ですよねえ、と女王陛下に言えるはずもなく、俺は神妙な顔で頷いてみせるのだった。




