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―― ロンネスクのとある大通り
サヴォイア女王国第二都市ロンネスク。
その大通りには多くの人や馬車が行き来をしている。
その雑踏を縫うようにして今、一匹の獣が走っていた。
獣と言うにはあまりに小さいその姿は、一見すると黒い子猫である。
可愛らしいその姿は、人の目をひかずにはいられない。
しかしその獣の動きはあまりに速く、鋭かった。
何人かがその存在に気付き手を伸ばすが、誰一人として触れることすらかなわない。
風のような速さで身を運ぶその獣は、城門をくぐり外に出ると、一度足を止めた。
大きな目をくりくりと動かして周囲を探り、耳をぴくぴくと動かして遠くの音を拾う。
「にゃあ」
獣の口から声が漏れる。
行く先が決まったのか、獣は再び走り始めた。
迷いなく、主のもとへ。




