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【注目度1位御礼!】『セレンティア・サ・ガ』~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~  作者: 波 七海
第三章 血盟旅団の乱と波乱への序章

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第42話 竜前試合 ④

いつもお読み頂きありがとうございます!

 第3試合目はイグニス公爵家の令嬢ロクサーヌの圧勝に終わった。

 イグニス公の宝珠サフィラスの力――究極魔法は火属性の『ガスティガノン』

 彼女は宝珠サフィラスを継承していないので、まだ使用できないが、身軽さを活かしながら遠距離からの火魔法の連射で対戦相手はすぐに沈んだ。


 ―――


 そして第4試合――マルグリットと中等部2年のコイルズの戦いが始まる。


『さぁーーー!! いよいよ4試合目!! これまで大健闘の中等部1年Sクラスから、マルグリット・ファビウス選手ーーー!! そして一方は2年Sクラスの剣豪コイルズ選手だーーー!! それではファイッ!!』


 ついに決戦の火蓋が切られた。


「行くッスよーーー!!」


 アナウンス早々、マルグリットが駆ける。

 それを受けてコイルズは剣を抜かずに重心を落し姿勢を低くした。


 だが――止まらない。


 マルグリットは止まらない。


「滅するスッス!!」


 大きく跳躍すると巨大十字架を振りかぶって思いきり叩きつける。

 コイルズはそれを避けようともせずにポツリと呟いた。


「【乾坤一擲】」


 剣豪の能力ファクタス、『奥義』の1つ――居合斬りである。

 コイルズの手元が一瞬だけブレたかと思うとマルグリット法衣が斬り裂かれてその白く美しい肌が露出する。衝撃の後にガラスの割れるような音がして周囲に張られていた神聖防御結界が粉々に砕け散った。

 空中で回避ができないにもかかわらず、ダメージを負わなかったのは結界のお陰。


 一方で巨大十字架の一撃はコイルズが半歩横に移動して躱されてしまい、地面にめり込み衝撃で大きなクレーターを作り出す。

 すぐに身を翻してその場を離脱するマルグリット。


「面倒ッスねぇ……」


 眉をひそめてそう言ったマルグリットは巨大十字架を肩に担いで再び走り出す。

 コイルズも再び剣を鞘にしまおうとしたが、思った以上に彼女の接近が速い。


 結果――十字架と剣がぶつかり合って火花を散らす。


 そこからは両者の武器による殴り合いが始まった。

 重量のある巨大な十字架を手足の如く振り回すマルグリットの膂力がどうなっているのか分からない者も多いだろう。


 実際にコイルズがそうだった。

 圧倒的な質量で打たれ続ける圧力は相当なものだ。

 何とか弾き返してはいるが、彼の手は痺れて握力が無くなりつつあり剣の柄を握っている感覚がじょじょに失われていく。


「くッ……」


 無意識の内にコイルズの口からは呻き声が漏れ出る。

 それほどの苛烈な攻撃であった。


「ほらほら! いい加減に降参したらどうッスかー?」

「良い気になるなよッ! 【浪返し】」


 挑発するマルグリットが右側からコイルズに向かって巨大十字架を振り払った。


 その瞬間――彼は『奥義』を発動した。


 双方の武器がが接触するや、コイルズの剣から波動が発せられてマルグリットの巨大十字架に伝わると大きく跳ね上げられる。


「隙あり……」


 コイルズはすかさずマルグリットの懐に入り込むと連続で斬撃を叩き込む。

 流石は剣豪だけあって流れるような体捌きと淀みない剣の動き。

 終わりの見えない連撃に、今度はマルグリットが焦る番であった。


「ちょちょちょ……ッスッス」


 何しろ2、3mはあろうかと言う巨大十字架なので小回りが利かない。

 接近を許せば、凌ぐので精一杯な状況に陥ってしまう。

 後退に次ぐ後退。

 押されまくるマルグリットは止む無く右手に大きく跳ぶが、それを読んでいたコイルズも当然のように付いてくる。

 更に密着されてぐいぐいと押し込まれるマルグリット。


「(マズいッス……思ったよりやるッスねぇ……だったら!ッス!)」


 なるべく力を見せないで戦おうとしていたマルグリットであったが能力ファクタスを使うことに決める。


「『天使降臨』」


 聖女の能力ファクタスの1つ。

 絶対なる神に仕える天使を召喚する能力だ。

 地面には太古の言語(ラング・オリジン)によって描き出された五芒星の魔法陣。

 そこから光の奔流が天を衝いた。


 すると眩いばかりの光の中から現れる――第4位の天使・主天使ドミニオン


 煌めく6枚の翼をはためかせ、硬質化した鎧のような物を体中に纏って浮遊している。現在のマルグリットの神格で呼び出せる最高位の天使である。


 突然の強大な力の出現にコイルズから焦りの感情が生まれた。

 動揺を悟らせまいと、ひたすら攻撃は続けているが背後から発せられる圧力に技のキレが失われつつある。


主天使ドミニオンよ! 死なない程度にやっちゃうッス!!」


 マルグリットの超雑な命令に応えて主天使がおもむろに右手を前にかざした。

 それと同時に彼女は左拳をコイルズの右脇腹に叩き込んで大きく横に跳ぶ。


 それに付いて行こうとするコイルズであったが、ダメージで動作がワンテンポ遅れた。

 マルグリットがニヤりと笑む。

 勝利の笑み。


 天から流れ落ちる光の奔流がコイルズに直撃した。

 まるで光の柱に叩きつけられたような衝撃が彼を襲い、絶叫が木霊する。


 やがて光が治まった後には呻きながら何とか立っているコイルズの姿。

 神聖なる光によって肉体的、精神的なダメージを負っているのは間違いない。


 マルグリットは動くことすらできないコイルズの元へ歩み寄ると、ニヤリと笑って巨大十字架をフルスイングした。


「ジャストミーーートッス!!」


 巨大十字架の真芯で打ち抜かれたコイルズは観客席にスタンドインするかに思われたが、絶対魔力障壁の魔導具の効力によって阻まれ闘技場内に落下した。

 頭から地上に落ちたものの損傷回避型障壁のお陰で死んではいないはずだ。


『天使まで呼び出したマルグリット選手の勝利だーーー!! 強い! 聖女強い!』


 勝利判定によりすぐに救護班も駆けつけてコイルズの治療が開始される。

 ぴくりとも動かない彼を見てマルグリットは観客席に向けてVサインをして勝利宣言をするとワァッと歓声が大きくなった。


「ヴィクトリーッス!!」




 ◆ ◆ ◆




 第5試合は白熱した剣と剣とのぶつかり合いとなったものの、順当に中等部3年の生徒が勝ち上がった。


 ――そして第6試合


 レクスの同級生であり暗黒闘士のブラドリィルが登場する。


 武器を持たずに素手で戦う究極の職業クラス――それが聖闘士と暗黒闘士である。


 彼女の手には鉤爪かぎづめの付いたナックルがはめられており、黒いそれは陽光を浴びてぬらりと妖しく光り輝く。凶悪そうなナックルを見て対戦相手である中等部2年のバウアーがゴクリと喉を鳴らした。

 戦う前から飲まれてしまっているように見える。


 両者が対峙しているが、ブラドリィルは両手の鉤爪をぶつけ合って調子を確認しており、全くバウアーの方を気にしていない。

 怖気おぞけが走ったバウアーであったが、持ち前のプライドの高さから自らに気合を入れると抜剣する。それが視界に入ったようでブラドリィルがようやくバウアーに視線を向けた。


「オレは手加減できないんでな。自分の身は自分で護りな」

「あ?」


 挑発されたと感じたバウアーが言い返そうと口を開きかけるが、ブラドリィルから発せられる雰囲気は先程までとは全く変わっていた。


 圧倒的なまでの覇気。

 鋭い眼光で睨みつけられたバウアーは射すくめられる。

 一瞬前に入れた気合など霧散してしまっている。


『ではではーーー!! 始まりますよーーー!! またまた1年生の女傑ブラドリィル選手ーーー!! 対するは2年生のホープ、バウアー選手だーーー!! それではーファイッ!!』


 ゆっくりとブラドリィルが歩き出す。

 躊躇うこともなく、怯むこともなく、淡々と。

 考えるのは1つだけ。

 敵を殴殺おうさつする。


 一方のバウアーは脳内でしきりに警告音が鳴り響いていた。


「ヤバいヤバいヤバいヤバい……あいつは危ねぇヤツだ……戦うなと頭が警鐘を鳴らしてるぜ……」


 だが――何もしなければオドラン伯爵家の名がすたる。


「俺は貴族なんだぞ……平民なんかに負けられるか……」


 カチカチと歯が音を鳴らしている。

 立っていられるのは貴族としてのプライドが故であった。


 ブラドリィルがどんどんと近づいて来るのに合わせて、バウアーの足は自然と後退していく。

 甘やかされて育ったバウアーだが、学園で築き上げてきた物はある。

 小山の大将の地位が崩れ去ることだけは避けねばならないと彼は考えていた。

 とにかく何とかしなければと言う思いで、バウアーは後退して間合いを取ると『騎士剣技』を発動した。


「【真空破】」


 衝撃波が軌跡を残してブラドリィルへと迫る。

 人間の反応速度では躱しきれない、躱すならあ発動の瞬間に回避しなければならない技だ。


 だが――


 ブラドリィルが右手を横に軽く振った。


「あぇ?」


 間の抜けた声がバウアーの口から漏れる。

 必殺の一撃が呆気なく吹き散らされた――それが事実。

 彼女がやったことは右手を振った。

 それだけ。


「ヌルいな……お前は騎士ナイトか。オレを失望させないでくれよ?」


 抑揚のない声でそう言い終わるや否や、ブラドリィルが走る。

 いやバウアーの眼前に出現したと言った方が良いかも知れない。

 目と鼻の先の距離でブラドリィルが右拳を撃ち込んでくる。

 大地をしっかりと踏みしめた完璧な重心移動からの一撃。

 踏み込んだ足によって大地にヒビを入るほどだ。

 反射的に剣を出したバウアーだったが間に合うはずもなく、鉤爪付きの正拳突きをまともに喰らって吹っ飛ばされる。

 そしてそのまま闘技場の壁に激突し、大きな鈍い衝撃音が周囲に響いた。


「終わりか。呆気ないもんだな。ふん……敗北を知りたい」


 そう言って立ち去ろうと振替ったブラドリィルの耳に呻き声のような物が届く。


「う……ぐ……てめぇ……」


 思わずバウアーに目を向けるブラドリィルが見たのは、剣を支えに何とか立ち上がろうともがく男が1人。

 正拳突きを受けたみぞおち付近からは大きく流血している。

 すぐに救護班が入ろうとするが、バウアーはよろめく足で剣を振り誰も近づけさせようとはしない。


「平民が……殺す! 【剛勇玉砕ごうゆうぎょくさい】」


 流血しながらもブラドリィルの近くまで接近したバウアーが最後の力を振り絞って太古の言語(ラング・オリジン)を叫んだ。

 光のオーラに包み込まれたバウアーが大怪我をしているとは思えない速度で突っ込むと、ブラドリィルに剣を振り下ろす。


 光り輝く剣に触れた者は体の内部で破壊力が解放され大ダメージを負うと言うバウアーが最近習得した『騎士剣技』だ。


「無益……」


 ブラドリィルが暗黒のオーラを溜めた左拳で振り下ろされる剣を破壊すると、すぐさま凶悪なまでの右フックがバウアーの脇腹に突き刺さった。

 貫かれたバウアーは最早ピクリとも動かない。


『カンカンカーーーン!! 圧倒的ッ! まさに! まーさーにー圧倒的強さだーーー!! この勝負、ブラドリィル選手の勝利ーーー!!』


 それを聞いたブラドリィルは右手を振ってバウアーの体を振り払うと、無表情のまま踵を返して退場していった。

 後には神聖魔法や光魔法で治療に当たる救護班と瀕死のバウアーが残るのみ。


 観客はブラドリィルのあまりの強さに熱狂と言うよりも困惑している様子だ。

 流石に実力差が圧倒的だったことと、バウアーが大怪我を負ったことが原因だろう。


 あまりにも危険と言われる竜前試合は戸惑いの中、粛々と進行されていく。

お忘れの方もいらっしゃるかも知れませんがブラドリィルは女の子です。

次回、竜前試合・中等部トーナメント戦は続いていく。


ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新です。

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