後輩6-15
「伊澤さんあと一人はどうするんですか?」
「うん、どうしようかな」
「どうしようじゃないですよ」
やっぱり花宮さんは僕にだけあたりが強いな。
「私も麗ちゃんも友達が少ないので自分でなんとかしてくださいよ」
「うん、とりあえず頑張るよ」
教室に戻り、残りの昼休みの時間を全て使って生徒会への勧誘をしたが結局、成果はなかった。
学校が終わり、神無と二人で寮へ帰ろうと下駄箱の方に向かう途中で、一ノ瀬さんと花宮さんに会った。
「伊澤さんと十川さん、一緒に帰ってもいいですか?」
「うん、一緒に帰ろうか」
「はい。じゃあ麗ちゃんまた明日ね」
「葵、ちょっと待って。私も寮まで一緒に帰る。十川先輩と伊澤先輩もいいですよね?」
「麗ちゃん?いつもは校門から車で帰ってるよね?」
「たまにはいいじゃない。今日は寮から車を呼ぶから」
いつもと一ノ瀬さんの様子が違うのか、花宮さんはかなり困惑している。
「僕はいいよ」
「私も」
神無と僕が頷き4人で帰ることになった。
なんかいきなり4人で帰ることになったけど共通の話もないし、若干気まずいな。
そんな事を考えていると一ノ瀬さんが僕のことをじっと見る。神無に僕の事を男だと知っているか聞けってことかな。
僕も今すぐ聞きたいが聞き方が難しい。もし気づいていなかった場合は間違いなくこいつは何を言ってるんだと思われるよね。それとなくぼかして聞いてみようかな。
「神無、僕の秘密知ってる?」
「どれのこと?」
「えっ、どれって何個かあるの?」
「うん」
まさかすぎる回答に逃げ出したくなるが勇気を振り絞って聞く。
「知っているやつで一番大きいのを言って」
「雪と麗に男ってバレてること?あと葵にも」
男と知っているとかのレベルじゃなくて他の人にバレていることもバレていた。
後ろで花宮さんが驚き、一ノ瀬さんがやっぱりという顔で見ている。
「いつから男だって知っていたの」
「初めて会ったときから」
「な、なんで?」
「目を見ればわかる」
最早、仕草とかですらないのか。
そんなことでばれるならもう女装とか化粧をする意味もなくなるんだけど。
「なんで知っていたのに誰にもばらさないでくれていたの?」
「おもしろいから」
そういえば、最初に寮で会ったときにもおもしろいって言われたことがあったな。
そうなると、本当に神無は最初から気づいていたのか。
「ばらさないでくれてありがとう、でも心臓に悪いから僕には教えて欲しかったよ」
「気づいてると思ってた」
一ノ瀬さんもそうだけど僕を買いかぶり過ぎている気がする。
「やっぱり伊澤さんはちょっと可愛そうですね。目とか歩く仕草でバレるなんてどうしようもないです。ちなみに、天野さんにはどうやってばれたんですか?」
「裸を見られた」
「馬鹿じゃないですか」
花宮さんに急に梯子を外されてしまった。たしかにそっちはまるで同情できないよね。僕もかなり不用心だったと思う。
それから、少し話していたらミスコンの話題になった。
「麗ちゃんは結局ミスコンの賞品はまだ決めてないの?」
「うん。私としてはいらないんだけどね。まあ生徒会に入ったので天野先輩と同じで生徒会に寄付しようかな」
「十川先輩は伊澤先輩に何をお願いしたんですか?」
そういえば、ミスコンの賞品はチョコ一年分を貰っていたけど僕へのお願いの内容は結局聞いてなかったな。
「まだ言ってなかった。優、私の彼氏になって」
「「「えっ」」」
花宮さんは顔を真っ赤にして興味津々でこちらを見て、一ノ瀬さんは僕のことを睨み付け、僕はどうして良いかわからずにただただ困惑した。
読んでくださりありがとうございます。今日は夕方くらいにもう一本投稿します!
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