生徒会長編5-3
23時半になり、彼女の部屋の扉をノックする。
中から生徒会長が出て来て、入っていいわよと言われたので部屋に入りドアを閉めた。
間取りは当然ながら僕の部屋と同じだが普通の部屋にはない、電話ボックスよりも大きい、謎の黒い箱があった。
「ああ、これ防音室なの。もう私がやってることは知ってるよね?」
なるほど、寮の部屋はそこそこ防音性はいいはずだけど歌ったり叫んだりすると流石に聞こえるし、こういう設備は必要なのか。
僕は言い訳をしてもしょうがないので、正直に話す。
「はい、さっきの配信見てました」
「だよね。校舎裏であった時はいつもと違う声で話していたから気になって調べるのも仕方がないね」
「はい、すみません」
「でも、こっちが素の声と話し方なんだけどね」
たしかに今の声と口調はいつもの威圧感のある話し方ではない。
「え、普段の方が演技なんですか」
「うん」
「な、なんで普段はあんな感じなんですか?」
「格好付け?」
驚くくらいどうでもいい理由だった。
僕が呆れて生徒会長の方をみていると彼女は慌てて訂正する。
「いやいや、そこだけ聞くと変だけど、ちゃんとした理由なの。私の顔って結構目付きがきつかったりするけど、声がこんなんじゃない?だから中学の時とか男子に結構バカにされててね。だから高校デビュー的な感じで違う声と口調で話すことにしたの」
「なるほど」
たしかに目付きはややきついが美人で声が可愛いっていうのはかなりのギャップで良いような気がするけど。
その男子は生徒会長に気があったから、ちょっかいをかけていただけなんじゃ。
「外部受験で高校からこの学校に入ったからタイミング的にも良かったしね。まあ、私って凝り性だから本気でキャラ作りしちゃって、戻れなくなっちゃったんだけど」
やっぱりこの人アホなんじゃないか。
いや、あそこまでキャラ作りできるのはすごいけど残念美人だな。
「そういえば、vtuberはいつもの声でやらないんですか?」
「いつも声を作ってるから素の声でも話したくなって、この活動を始めたからね。いつもの声でやったらやる意味なくなっちゃうし。たまたま事務所のオーディションにもこの声で受かったしね」
生徒会長はたまたまといったがおそらく実力だと思う。
たしかに生徒会長のルックスとこの可愛いらしい声はあまり合っているとは言えないが2次元の可愛いキャラとはすごく合っているし、事務所が求めている声だったのだろう。
「まあ、そんな事よりも」
ニコニコしながら彼女はこちらを見る。いつもの生徒会長からは見たことの無い表情だ。
「本題を話しましょう」
「はい、僕のことですよね」
本来の本題は生徒会長の話のはずだったのに、僕の男バレが大問題すぎてこっちがメインの話になっていた。
「まず一応確認だけど男の子なんだよね」
「はいその通りです」
「なんでこの学校に通うことになったの」
そのあと、生徒会長には全てを話した。
「なるほどね。で、これからどうするの?」
「どうするって、生徒会長の判断に従いますよ。退学はもちろんしますが、生徒会長が通報するっていうなら警察にもお世話になります」
「ふーん、指示に従ってくれるの。じゃあ、来月の生徒会長選挙に立候補しなさい」
生徒会長は意味不明なことを言い出した。
読んでくださりありがとうございます。
生徒会長編はだいたい書き終わっているので明日も投稿します。
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