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生徒会長編5-1

とりあえず友達から始めるということで谷村さんも納得してくれたので、胸を撫で下ろす。


これからどうしようかな。

谷村さんの告白でどっと疲れてしまったので、ちょっと一人でゆっくりしたい気分だ。


「谷村さん、ちょっと一人で考え事したいから先に帰ってもらってもいい?」


しまった。ちょっときつい言い方になってしまった気がする。

谷村さんはふてくされているのか、頬を膨らませている。


「伊織って呼んでくれたら今日は帰ってもいいよ」


神無にも名前で呼べと言われたけど女の子を名前で呼ぶの恥ずかしいんだよな。


「伊織」

「そんな風に呼ばれるとなんか照れるね」


顔を赤くして谷村さんは微笑む。

照れるなら呼ばせないでくれると助かるんだけど。

少し会話をして、谷村さんは満足したようでやっと帰ってくれた。


とりあえず、校舎裏の2つの梁が出っ張っているところの間に隠れてゆっくりする。

ここだと正面から見ない限りは誰にも見えないし、かなり落ち着けるだろう。ややジメジメするがゆったりできる。


この時の僕はなぜさっさと帰って寮で考え事をするという選択肢を思い付けなかったのだろう。


少しの間校舎裏でゆっくりしていると、近くで声が聞こえてきた。


こんなところで、話しているなんてまた告白かな?


アニメの声優のような可愛らしい声で何かを話しているが一人分しか聞こえないし電話でもしているのだろうか。

結構近くにいるようだがこちらが窪みにいるせいでおそらく向こうは僕が近くに居ることに気づいてはいない。


「今日のロゼララコラボよろしくね。配信の打ち合わせと準備は18時半からでいいんだよね」


コラボ?何の話しだろう。人の話しを盗み聞きするのは良くないが今出ていったら驚かせてしまうだろうししばらくじっとしてよう。

まあ声を聞いた感じでは会ったことがある人では無いし、今すぐ出ていっても一瞬気まずくなる程度でこの場を立ち去ることはできる気もするけど。


「うん、今はまだ学校だよ。生徒会の作業が終わってなくて」


あれ?なんかどんどん声が近づいて来てる気がするんだけど。


「でも大丈夫だよ、家近いし18時半までには帰れるから。えっ」


「えっ」


電話している人とバッチリ目が合ってしまった。

どうやら彼女もこの窪みにもたれかかるつもりだったらしい。


驚いた表情で彼女がこちらを見るが、恐らく僕は彼女よりも驚いている。


先程まで聞いていた声と僕が聞いたことのある目の前の人の声が全く一致していなかったからだ。


「せ、生徒会長…?」


「ららちゃん、一回通話切るね。うん、また後で」


「さて、何であなたはここにいるのかしら?」


生徒会長が通話を切り、低めの凛々しい声で僕に話しかけてくる。

この声を聞いてやっと生徒会長だと確信できた。


訝しげな目をして彼女はこちらを睨みつける。


もう正直に言うしかない。

僕は先ほどまで告白されていたこと、疲れたのでここで休んでいたことを説明した。


彼女は眉間に手を当てながらため息をつく。


「なるほどね。ここにいた理由はわかったわ。電話の内容はどのくらい聞こえたのかしら?」


「いや、全く聞こえませんでした。

声もいつも通りでした」


僕の明らかな嘘に今までと段違いの怒気を纏い冷静な声色で淡々と話してくる。


「そんな訳無いでしょう。まあ、今は長話するほど暇でもないから寮でゆっくり話しましょう。今日の23時半に私の部屋に来なさい」


声をあらげないのが逆に恐い。

今日は立て続けに恐い目にあいすぎじゃないか。何も悪いことしてないのになぜこんなことに。


不可抗力とはいえ体育の着替えでクラスの女の子の下着姿を見てしまっていた事を思い出してバチが当たったのなだと思い知る。


僕は観念して、わかりましたとだけ返事をした。

誤字報告いつもありがとうございます。

頂いた誤字報告の箇所は修正致しました。

自分では気づくことができないことも多々あるので報告していただけるととても助かります。


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