初日3-3
職員室から出て外に行くと桜並木には不似合いな人混みで溢れていた。
職員室で少し時間をかけてしまったのが仇になり、部活勧誘が思い切り始まっていた。
まあ、せっかくだし波に流されてどんな部活があるか見てみようかな。
テニス、バスケットボール、バドミントンなどの一般的な部活はもちろん、料理部や茶道部などの文化系の部もかなりあるみたいだ。
興味本意で色々な部活を見ているとバレー部のブースから五條さんが飛び出してきた。
「おー!伊澤さんじゃないっすか。バレー部入りませんか?バスケ部でもいいっすよ~」
「適当な勧誘すな」
「痛っ」
五條さんは後ろにいた黒髪でショートヘアの女の子にチョップされている。
バレー部なだけはあり、身長は僕よりも高く170センチくらいはありそうだった。
「あれ?伊澤さんじゃん」
「あなたはたしか三木さん?」
「おお、良く覚えてるね」
同じクラスの人は自己紹介でだいたい覚えたからね。特に三木さんは五條さんと同じバレー部と言っていたしかなり印象に残っていた。
「三木さんこそ良く僕の名前覚えていたね」
「そりゃあ自己紹介の中で一番目立ってたからね!運動神経抜群の皐月とか見た目も中身も他の人とは全然違う十川ちゃんとかいるけど、伊澤さんはまた違った目立ち方だった気がするよ。これから楽しみだよ」
「これから?」
「うん、早い人なら明日には動きそうだし」
「動くって?」
「うーん、今言ってもいいけど明日自分の目で確認したほうがいいかも」
含み笑いを浮かべながら三木さんは意味深なことを言った。
よくわからないが、明日になればわかるなら待ってもいいかな。
「じゃあ明日まで待つことにするね」
「うん、そのほうがいいよ。楽しみは後に取っておかないとね。そういえば、伊澤さんは何処かの部活に入るの?」
「いや、どこにも入らないと思う。ここにも来るつもりはなかったんだけど、職員室によって帰るのが遅くなったら波に流されて」
「あーなるほど、すごい人混みっすもんね」
「でも、伊澤さんならどこかに幽霊部員としてでも入ったほうがいいかもよ。いつまでも、どこにも入らないと勧誘が止まらなそうだから」
「それはあるかもっすね。ってことでやっぱりバレー部に」
五條さんはバレー部に誘ってくれてはいるが、流石に運動部に入るわけにはいかない。
ウイッグが取れる可能性もあるし、何より大会とかに出られないのに本気でやってる人と一緒に部活をやるなんて失礼にもほどがある。
僕は丁寧に断ってバレー部のブースから出た。
バレー部のブースから出ると、ひと際一年生が集まっている場所を見つけた。
よくある運動部はだいたい見た気がするし吹奏楽や美術部などの人気がありそうな文化部も大体見た気がするんだけどどこの部活に集まっているんだろう。
中を見るとそこには10個ほどのファンクラブがあった。
聞いたことはあったが本当にファンクラブなんてあるのか。
てかファンクラブは部活として認可されているのか。ここに出ているところは全部部活として認められていた気がするが。
ほとんどのファンクラブが先生や2年生、3年生の物だがひとつだけ1年生の物もあった。新入生なのに凄いな。
先程の一年生の所もすごいがざっとみた感じだと、それよりも人気がある場所はこの3つかな。
先生 伊澤 優愛
三年生 天野 雪
二年生 十川 神無
うん、全員知り合いだった。
姉さんのブースには花宮さんがいたが、見て見ぬふりをして帰ることにした。




