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氷雨と大牙……向かう先に3

 腹部を押さえながら、痛みを噛み殺すように、歯を食い縛る銀大。


「はぁ……はぁ……厄介な異能を使うじゃねぇか……お陰で、腹がザクザクだ……」


 未だに諦める様子のない銀大の姿に、大牙は無言のまま刃を構え、踏み出していく。


 一撃、一撃と銀大が大牙からの斬撃を防ぐ度に腹部から、真っ赤な血が流れ出す。


 しかし、大牙は、攻撃を緩めることなく、我武者羅に斬り続けていく。


 力強く踏み込んだ一撃に、銀大の片膝が地面に向けて崩れる。


「はぁ……はぁ……クソガキが……姐さん、本当にすいやせん……」


 崩れるように、倒れ込む銀大、それを即座に感じとった馬黄は我慢の限界を迎えたように、雷砲を大牙と銀大の戦っていた方向へと炸裂させる。


「銀大のバカ! 諦めんじゃないよ! くそ、アンタ達はあの死に損ないを確実に始末しな! 私があの化物を始末するから!」


 馬黄の指示で、兵隊達が五郎を無視して、動けない氷雨に向かって駆け出していく。


 五郎が応戦しようとするも、対象を氷雨と決めた一団が分散しながら、氷雨に向けて襲い掛かる。


「まて、待ちやがれ! お前等に雷国の戦士としての誇りはないのかッ!」


 五郎の叫び声が響き渡る最中、止まることなく、氷雨に向かっていく兵隊達。


 しかし、予想だにしない出来事がその場にいた全員の体内に響き渡る。


 大地を震わせる程の荒々しい轟音が響き渡る。


 その音の先に姿を現した黒雷の百姫であり、その只ならぬ雰囲気に誰もが動きを止める。


「あ、姐御……」

「なんで、頭が此処に……」


 突然の百姫襲来は、黒雷の全兵に恐怖と疑問を与えた。


 そんな最中、更に激しい轟音と共に激しい(いかずち)が大地を震わせる。


「何をしてるんだい、なんでこんな勝手な仕事を受けたんだ! 答えな、馬黄、銀大!」


 しかし、百姫が目にしたのは、倒れ込み、血を流す銀大の姿と動揺する馬黄の姿であった。


「な、なんなんだい……誰か説明しな!」


「簡単だ、お前の部下が先に仕掛けてきた結界、返り討ちにあった、今はその真っ只中だ……」


 百姫の声にいち早く反応したのは、黒雷の面々ではなく、五郎であった。


「な、五郎……なんでアンタが、それにこの話は、間違えなく断った話だぞ!」


 そう語る百姫に対して、視線をそらす馬黄達の姿があった。


「あ、姐様、私達が受けないと、姐様が……私達は姐様の為に……」


 馬黄は、雷国が今回の依頼を百姫が断った事実を赦さなかった。

 その為、百姫を通さず、部下をまとめる隊長である銀大と馬黄に雷国から直接、命令がくだったのだ。


 依頼を受けねば、百姫の身柄を拘束し、国家反逆罪として、罪人扱いで捕らえると言う内容が銀大と馬黄に告げられたのだ。


 その際、百姫は、依頼を断った事で依頼内容を口外しない為に雷国から待機と言う名の拘束を受け、水国に船で運ばれていたのだ。


 結果、断れずに依頼を秘密裏にこなす道を選択せねばならなくなったのである。


 そんな秘密裏に進んでいた計画が百姫の耳に入る結果となったのは、意外にも待機命令が雷国から告げられ、水国に強制送還されて直ぐの事であった。


「この港から、出ないように……見張りはつけさせて貰うが、食事や買い物は自由だ。すまないな百姫よ」


 そう語る雷国の司令官、百姫もたまの休日を楽しむことを考え、港街を楽しむようにしていた。


 しかし、百姫の食事をする席の向い側に一人の老人が座る。


 老人は、独り言だといいながら、百姫に語りかけるように口を開いた。


「水国にいる、黒雷が受けた依頼は……正直、全滅の危険すらある……以前より厄介な連中だからなぁ」


 そこから、老人の胸ぐらを掴むようにして、掴み掛かると話が更に続く。

 その結果、黒雷が秘密裏に命令された依頼の内容を知り、本能のままに動き出したのだ。

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