第334話 vs大隊長ギデオン・そして、「決着」の時へ・2
「この私ギデオン・シンクレアが、我が剣『神剣スパークル』と、我が最大の『奥義』で、貴様の命を偉大なる5柱の神々に捧げてくれるわ!」
と、春風に向かってそう言ったギデオン。
バチバチと音を鳴らす白い光に包まれたそんなギデオンの雰囲気に、
「こ、この光は!」
と、ヴァレリーがそう呟いたので、
「え、ヴァレリーさん、何か知ってるんですか!?」
と、隣のディックがそう尋ねると、
「ああ、実はこの戦いの前に、私とタイラー、そしてアメリアも、奴の『奥義』を受けたんだ」
と、ヴァレリーはコクリと頷きながらそう答え、それに続くように、
「ええ。しかしこの感じ、恐らくですが、僕達の時以上の威力が出ると思います。そしてこのままあれを受けてしまえば、春風君は間違いなく、跡形もなく消し飛んでしまうでしょう」
と、タイラーもタラリと汗を流しながらそう言ったので、その言葉を聞いたアデレードが、
「そ、そんな……」
と、顔を真っ青にすると、
「は、春風君! 駄目だ、逃げろ! 逃げてくれぇ!」
と、アメリアがギデオンと対峙している春風に向かってそう叫んだ。「恐怖」によるものか、その表情はアデレードよりも真っ青になっていて、声の方も酷く震えていた。
しかし、そんなアメリアの叫びが届いてないのか、
「……」
肝心の春風はギデオンをジッと見つめたままで、その場から動こうとしなかったので、
「お、お願いだから……逃げてぇ!」
と、アメリアは力いっぱいそう叫んだが、
「無駄だアメリアよ。何処へ逃げようとも、何人たりともこの『奥義』から逃げることが出来た者など、1人もいないのだよ!」
と、ギデオンは無情にも冷たい口調でそう言ったので、
「あ、ああ……そんな」
と、アメリアはその場に膝から崩れ落ちそうになったが、
「姉さん!」
「アメリアお姉ちゃん!」
と、ニーナとピートに支えられて、どうにか踏ん張ることは出来た。
そんな状況の中、レナとヘリアテスはというと、
「レナ」
と、ヘリアテスが小声でレナにそう声をかけてきたので、それにレナが「何?」とヘリアテスと同じように小声でそう返事すると、ヘリアテスは離れた位置にいるルークと断罪官の隊員達をチラッと見ながら、
「今なら、連中の視線はあの男に釘付けの状態だから、隙をついてみんなで春風さんのもとに行くよ」
と、小声のままそう提案してきたので、
「うん、わかった」
と、レナはコクリと頷きながらそう返事すると、その後はルーク達の様子を確認しながら、少しずつその場から移動していった」
一方、未だにギデオンと対峙している春風の方はというと、表情は落ち着いているが、
(うぅ、なんか凄いバチバチいってるよぉ。いよいよおっさん本気で来るよぉ)
と、内心では目の前いるギデオンの雰囲気にかなりビビりまくっていた。
すると、
「春風様」
と、左腕の銀の籠手に装着されているマジスマ内からグラシアが声をかけてきたので、それに春風が「ん?」とギデオンを見つめたままそう返事すると、
「あの男の様子からして、どうやら『最大の奥義』というのは大袈裟でも冗談でもなさそうですが……」
と、グラシアは不安そうに言ったので、
「……それについては俺もそう思います」
と、春風はタラリと汗を流しながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「その……勝てる見込みは、ありますか?」
と、グラシアは更に不安そうにそう尋ねると、
「……少々ぶっ飛んでますが、1つだけ『作戦』があります」
と、春風はジッとギデオンを見つめたままそう答えたので、その答えにグラシアが「そ、それは一体……!?」と反応すると、
「それを実行する為にも……」
と、春風はそう呟いた後、まず自身の右足を1歩前に出して、次に腰を少し低くし、左手で腰のベルトに下げた愛用の刀・翼丸の鞘をグッと握って、最後に自身の右手を翼丸の柄に近づけて、いつでも鞘から抜ける体勢に入ると、
「山の型」
と、小さくそう呟いた。
次の瞬間、
「うっ!」
と、ギデオンは何かを感じたかのようにそう呻いて、全身を硬直させた。
いや、ギデオンだけではない。レナをはじめとした周囲にいる者達までもが、ギデオンと同じような反応をしていた。
何故そんなことになったのか?
答えは1つ。それは、
(な、何故だ? 何故、目の前にいるこの少年が、まるで大きな『山』のように見える!?)
と、ギデオンがそう感じたように、春風が体勢を変えた瞬間、目の前にいる春風が、まるで「山」を思わせるかのような巨大に見えたからだ。
すると、
「あ! あの構えは!」
と、何かに気付いたかのようにレナがハッとなったので、
「え? レナ、知ってるの?」
と、ヘリアテスが首を傾げながらそう尋ねてきたので、
「この前のハンターの仕事中に、春風がデッド・マンティスを真っ二つにした時の構えだよ!」
と、レナは春風に視線を向けたままそう答えた。
その答えが聞こえたのか、ギデオンが「何?」と反応すると、改めて目の前にいる春風の構えを見て、
「そうか、その構え! 次の一撃で、この私を斬るという訳だな!?」
と、今になって気付いたかのようにそう言うと、すぐにニヤリと笑って、
「無駄だ! 如何に『悪魔』の力を以てしても、『人間』をこえ、『天使』となったこの私を斬ることなど出来ん! それは、貴様自身が既に証明してるではないか!」
と、春風に向かってそう言った。
その言葉を聞いて、レナ達が「あ、そういえば!」とハッとなったが、春風本人は「ふ!」と鼻で笑った後、
「生憎だけど、こっちは無駄なお喋りに付き合う気はねぇんだ」
と、ギデオンに向かって静かにそう言うと、
「だから……とっとと来いよおっさん!」
と、まるで挑発するかのようにギデオン以上にニヤリとしながらそう付け加えたので、その言葉にギデオンはピキッとなったのか、
「いいだろう! ならば、望み通り貴様を葬ってくれるわ!」
と、怒鳴るようにそう叫ぶと、先程まで自身の体を包んでいた白い光を、手にした神剣スパークルの刀身に纏わせて、
「聖なる光よ、『悪しきもの』を滅ぼす稲妻となれ!」
と、まるで詠唱するかのようにそう唱えた。
そして、白い光を纏わせたスパークルの切先を夜空に向けると、
「くらうがいい! 奥義、『聖光轟雷波』!」
と叫んで、そのスパークルを夜空に向かって突き出した。
すると、スパークルに纏わせていた白い光が、ものすごい勢いで夜空へ昇っていくと、春風達の上空が黒い雲で覆われ始めて、次の瞬間、その黒い雲から、春風に向かって大きな白い稲妻が落ちてきたので、
『は、春風!』
『春風君!』
『春風さん!』
「兄貴ぃ!」
「春風お兄さん!」
と、それを見たレナ達がそう悲鳴をあげ、
「春風様!」
と、最後にグラシアが春風に向かってそう叫ぶと、
「そいつを、待ってたぜぇ!」
と、春風はニヤリとしながらそう叫んだ。




