第332話 vs大隊長ギデオン・「戦う理由」
「貴様は、何の為に戦っている?」
と、春風に向かってそう尋ねたギデオン。
そのギデオンの質問に、レナをはじめとした周囲の人達が、
(な、何言ってんだこの人?)
と言わんばかりに首を傾げながらそう疑問に思っている中、
「自分と、自分にとって大事なものの為に戦っている」
と、春風はまっすぐギデオンを見つめながらそう答えた。
その答えを聞いて、ギデオンが「ほう」と声をもらすと、
「あんたのその質問にどんな意図が込められているのか、俺にはわからない。だけど、俺には絶対に失いたくない『大切なもの』があるし、『生きる』と決めた『理由』がある。実際、俺の『命』には、『生きて幸せになってくれ』という、大好きな人達の『願い』が込められてるからね」
と、春風はまっすぐギデオンを見つめたままそう話を続けて、それを聞いたギデオンが再び「ほう」と声をもらすと、
「だから俺は、俺の大切なものを守って、その上で俺自身も生きる、この『想い』を貫く為に戦っている」
と、春風は自身の右拳を、自身の胸にあてながらそう話を締め括った。
その言葉を聞いて、
「……ふ。可憐な少女のような顔をして、なんと強き『信念』のあることを言う」
と、ギデオンは鼻で笑いながらそう言うと、
「ギデオン・シンクレア。俺からも、あんたに聞きたいことがある」
と、今度は春風がギデオンに向かってそう言ったので、その言葉にギデオンが「何?」と反応すると、
「17年前、あんたはグラシアさんのスキルで『未来』を見た時、一緒に『過去』も見たな?」
と、春風がまっすぐギデオンを見つめながらそう尋ねてきたので、その質問に対して、
「……それが、どうした?」
と、ギデオンは顔を顰めながらそう返事すると、
「それなら、あんたは知ってる筈だ。500年前の真実を!」
と、春風は真剣な表情でそう言った。
そんな春風の言葉に、ギデオンは更に顔を顰め、
「え? あ、兄貴?」
「春風さん……何を?」
と、ディックとフィオナは「訳がわからん!」と言わんばかりの表情でそう呟いた。因みに、ヴァレリーとタイラー、そしてアデレードも、ディックとフィオナも同様に、春風の言葉にポカンとしていた。
そんな彼らを前に、ギデオンは「ふ……」とまた鼻で笑うと、
「ああ、知っているさ。私以外にも、あの時ともにいた当時の大隊長や隊員達も知っているし、ルーク副隊長にもその時のことは教えた」
と、チラッとルークを見ながらそう言い、
「そして、グラシア・ブルームを殺したあの後、ウィルフレッド陛下に直接聞いたからな」
と、最後にまっすぐ春風を見つめながらそう答えたので、その答えを聞いて、
「やっぱり、ウィルフレッド陛下は知ってたんだ」
と、春風は複雑そうな表情を浮かべながらそう呟いた。
すると、
「どうして!?」
と、レナがいきなりそう怒声をあげたので、それにビクッとなった春風とギデオンが、一斉にレナの方を向くと、
「知ってたなら……どうして奴らの為に戦っているの!?」
と、レナは怒鳴るようにギデオンに向かってそう尋ねた。表情は「怒り」に満ちていて、今にもギデオンに飛び掛かりそうな様子だったが、よく見ると、その目からは涙が流れていたので、
「れ、レナ……」
と、ヘリアテスは心配そうな表情を浮かべた。
そんなレナに向かって、ギデオンは答える。
「決まってるだろ。どうでもいいことだからだよ、白き悪魔」
その言葉を聞いて、レナだけでなく春風までもが「はぁ?」と声をもらすと、
「『真実』がどうであれ、今この世界に生きてる人間にとって、この世界こそが自分達の故郷で、彼らが今もこの世界で幸せに生きてるのは、偉大なる5柱の神々のおかげ、この『事実』だけあれば十分なのだよ。そう考えれば、『500年前の真相』や、自分達『人間』という種族の真実など、ほんの些末なことにすぎん。故に、どうでもいいことなのだよ」
と、ギデオンはレナに向かってはっきりとそう言い放った。
その言葉にレナが更に「怒り」に満ちた表情になる中、
「おいちょっと待て! 私は滅茶苦茶気になるんだが!?」
「ええ、同じくです!」
と、ヴァレリーとタイラーが戸惑いの表情を浮かべながらそう叫んだ。当然、ディックやフィオナ、アデレード、そして、アメリアも、ヴァレリー達と同じような表情になっていた。
しかし、ギデオンはまたも「ふ……」と鼻で笑うと、
「では尋ねるが、貴様らが身に付けてる『職能』や『スキル』、授けてくれたのは誰だ? 自分達に、魔物と戦う力を、ものを作る力を授けたのは誰だ? 自分達が今も幸せに暮らしているのは、誰のおかげだ!?」
と、ヴァレリー達に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「「う! そ、それは……!」」
と、ヴァレリーもタイラーも顔を真っ青にするだけで、それ以上何も答えることが出来ないでいると、
「そうだ。この世界に生きる人間達が今も幸せなのは、偉大なる5柱の神々のおかげだ。そして、それはこれからも変わることはないだろう」
と、ギデオンは静かにそう言い放った。
その瞬間、その場がシーンとしずかになったが、
「だというのに、今も神々の加護を受けているこの世界に、その加護から大きく外れた存在が現れた」
と、ギデオンはグッと拳を握り締め、震えた声でそう言うと、
「『固有職能』と『固有職保持者』!? 『神々の加護を持たぬ者』だと!? そんな存在、許される訳がないだろう!」
と、徐々に声を荒げながらそう叫び、それを聞いて、ニーナが「ひっ!」と小さく悲鳴をあげると、
「ましてや!」
と、ギデオンはクルッと春風の方を向いた。
いや、正確に言えば、
「グラシア・ブルーム! 貴様が我々に見せた、あのふざけた『未来』など! 偉大なる5柱の神々が死ぬ『未来』など! 許される訳が、ないだろう!」
そう、春風とともにいるであろうグラシアに向かって怒鳴るようにそう言った。
その怒声に、
「……」
春風の左腕の籠手に装着されたマジスマ内のグラシアが何も言えないでいると、
「故に私は、変えなくてはならないのだよ! この世界の存続の為にも、あのようなふざけた『未来』など、現実にさせてなるものか!」
と、ギデオンは強い決意を秘めているかのような表情でそう言い放った。
その言葉を聞いて、
「……それが、あんたが戦う『理由』なんだな? 多くの人間達を殺し、その人間を超えた存在とやらになった、あんたの」
と、春風がギデオンに向かって静かな口調でそう尋ねると、
「ああ、その通りだ雪村春風……いや、『赤き悪魔』よ。たとえ多くの同族を殺すことになったとしても、その為に多くに同族から恐れられることになろうとも、私は、貴様と『白き悪魔』、そして残る『青き悪魔』と邪神共を滅ぼす! そして、この世界の存続の為に『未来』を変える!」
と、ギデオンは強い決意を秘めたかのような表情のままそう答えた。
その答えを聞いて、春風は「そうか」と呟くと、
「だったら、今ここで決着をつけよう。お互いの『譲れないもの』の為に」
と、真剣な表情でまっすぐギデオンを見てそう言った。
謝罪)
大変申し訳ありません。前回投稿した話ですが、誠に勝手ながら最後の部分を修正させてもらいました。
本当にすみません。




