第331話 vs大隊長ギデオン・ギデオン、狂ったように喜ぶ
「俺の名は、雪村春風。『雪村』が苗字で、『春風』が名前。異世界『地球』の神が1柱、『オーディン』様と契約を結びし者。そして、固有職能『見習い賢者』の固有職保持者だ!」
と、目の前にいるギデオンに向かって胸を張ってそう自己紹介した春風。
その自己紹介を聞いて、
『な、なんだってぇえええええええ!?』
と、周囲の人達は一斉に驚きに満ちた叫びをあげて、
(ちょおっとぉおおおおお! 春風ぁあああああ! そこまで自己紹介する必要あるのぉおおおおお!?)
と、レナは心の中で春風に向かってそうツッコミをいれた。
その後、
「あ、兄貴が、固有職保持者?」
「ほ、本当に?」
と、ディックとフィオナはショックを受けた表情になり、
「はは、やっぱり固有職保持者だったか……」
「しかも、『賢者』……最初の固有職保持者と同じ職能とは。まぁ、『見習い』の意味はわかりませんが……」
と、ヴァレリーとタイラーは頬を引き攣らせながらそう呟いていて、5人とも春風が固有職保持者だという事実に驚きを隠せない様子だが、
「いえ、それも気になりますけど、『異世界の神と契約を結びし者』も気になるんですが……」
と、アデレードは別の方も気になっている様子だった。
そして、
「ま、まさか、彼も固有職保持者だったとは……いや、それもショックだが、あの背中の赤い翼……それに『異世界の神』と契約とは……?」
と、アメリアはかなり混乱している様子で、そんなアメリアを、
「ね、姉さん。私も色々と気になってるけど、落ち着いて!」
と、ニーナは戸惑いの表情を浮かべながらも必死になって宥めていた。
そんなアメリアとニーナを他所に、ピートはというと、
「……だから、女神様と同じ匂いがしたんだ」
と、春風の自己紹介を聞いて、何処か納得したと言わんばかりの表情になっていた。
一方、ルークら断罪官側はというと、
「あ、あいつも固有職保持者……異端者だと!? いや、それ以上に、あの赤い翼は!?」
と、ルークは春風の自己紹介を聞き、春風の背中から出ている赤い翼を見て戸惑いの表情をうかべ、他の隊員達は、
「見習い……賢者だと!?」
「何だ、そのふざけた名前の職能は!?」
「というか、あいつの背中から赤い翼が出てないか!?」
と、それぞれ異なる反応をしていた。
さて、周囲がそれぞれ驚いている中、春風はというと、
(うーん。まぁ、覚悟はしてたけど、皆さん凄いショック受けてるなぁ)
と、自身の自己紹介によって周囲から様々な反応が出ていることに若干の申し訳なさを感じて、「はは」と乾いた笑い声をこぼしながら頬をポリポリと掻いていた。
すると、
「……クックック」
と、目の前にいるギデオンから何やら不気味な笑い声が聞こえたので、それの春風だけでなく周りの人達までもが「ん?」と反応すると、
「その翼……その赤い翼……そうか……貴様が……」
と、ギデオンは何やらぶつぶつとそう呟き始めたので、
(な、何だ?)
と、春風が首を傾げながらそう疑問に思っていると、
「とうとう……とうとう見つけた。まさか、『白き悪魔』だけじゃなく、『赤き悪魔』にも出会えたとは……クックック……まさか……まさか、これほど素晴らしい日を迎えるとはな」
と、ギデオンは顔を下に向けて更に不気味に笑いながらそう呟いたので、それを聞いた春風は、
「……あんた、何を言ってるんだ?」
と、ギデオンを警戒しながらそう尋ねた。
次の瞬間、ギデオンはガバッと顔を上げると、
「フハハハハハハハ! フハハハハハハハ!」
と、大きな声で笑い出したので、
「うお! 何だ!?」
『うわ!』
『だ、大隊長!?』
と、春風をはじめとした周囲の人達は、この突然の出来事に驚きに満ちた声をあげたが、そんな春風達を他所に、
「なんという! なんという素晴らしき日だ! 『裏切り者』のアメリアと2人の『異端者』を追ってここまで来てみれば、『邪神ヘリアテス』だけでなく、『神を滅ぼす3人の悪魔』のうち2人にも出会うことになるとは! しかも、そのうちの1人の職能が『賢者』、『賢者』だと!? 『始まりの悪魔』、『最初に固有職保持者』と同じ職能とは! おお、なんという出来事か! まさに、『神々の導き』ではないか!」
と、ギデオンは更に大きな声でそう言った。
よく見ると、その表情は『喜び』に満ちてはいるが、同時に何処か『狂気』のようなものを含んでいるかのように思えたので、そんな様子のギデオンを見て、
「な、何だよ、あの人……」
「なんか、凄く怖い……」
と、ディックとフィオナは恐怖で震え上がった。勿論、アメリアの傍にいるニーナとピートも同様だった。
その後、ギデオンはバッと両腕を広げると、夜空を見上げて、
「神よ! 偉大なる5柱の神々よ! 私は、ギデオン・シンクレアは、貴方様方に感謝します!」
と、まるで本当に神々に向かってそう言っているかのように叫んだ。よく見ると、その瞳からは一筋の涙が流れていたので、それが「嬉し涙」だと思ったのか、
(う、うわぁ。このおっさん、マジで神様に忠誠を誓ってんのかなぁ?)
と、春風は若干引きながらも、心の中でそう疑問に思った。
それからすぐに、ギデオンは涙を拭うと、スッと表情を変えて、
「春風・スカーレット……いや、雪村春風よ」
と、春風に向かってフルネームでそう呼んだので、それに春風が「む?」と反応すると、
「貴様の職能、『見習い賢者』……と言ったな?」
と、ギデオンが春風の持つ固有職能についてそう尋ねてきたので、
「ああ。『賢者』は『賢者』でも、能力に目覚めたばかりの、未熟な『見習い賢者』だよ」
と、春風は特に気にする様子もなく軽い感じでそう答えた。
その答えを聞いて、
「「いや、自分で『未熟』って……」」
と、ヴァレリーとタイラーはそうツッコミを入れたが、そんな2人を無視して、ギデオンは「そうか」と返事すると、
「貴様に幾つか聞きたいことがある」
と、春風に向かってそう言ったので、それに春風が「何?」と返事すると、
「『異世界の神と契約を結んだ』と言ったな。そして、私が『勇者』達の話をした時の貴様の反応……貴様、『勇者』と同じ異世界の人間だな?」
と、ギデオンは真剣な表情でそう尋ねてきた。
その質問に、ルークら断罪官が「え!?」と驚く中、
「そうだよ。俺は異世界人。それも『勇者』達と同じ世界の住人だ」
と、春風はまっすぐギデオンを見つめながらそう答えた。
その答えに周囲の人間達がゴクリと唾を飲む中、ギデオンは再び「そうか」と呟くと、
「ならば貴様に問いたい」
と言って、その言葉に春風が目を細めると、
「貴様は、何の為に戦っている?」
と、ギデオンは更に真剣な表情で、春風に向かってそう尋ねた。




