第326話 vs大隊長ギデオン・ギデオンの「翼」
今回は、いつもより長めの話になります。
「レナ! アメリアさん! ヴァレリーさん! 今です!」
と、レナやアメリア、そしてヴァレリーに向かってそう叫んだ春風。そして、それに応えるかのように、
「「「はぁあああああ!」」」
と、3人はギデオンに向かって武器を振り下ろした。
だが、
(くっくっく……)
と、ギデオンは口元を歪ませながら心の中でそう笑うと、次の瞬間、ギデオンの背中から出てきた白い翼が大きくなり、まるでギデオンを包むかのように動いて、
ーーガキィン!
「「「な!?」」」
レナ達の同時攻撃を防いだ。
それを見て、
「え!? 翼が大きくなった!?」
「ていうか、あれ防御も出来るの!?」
と、ディックとフィオナが大きく目を見開くと、2人の声が聞こえたのか、
「いいや、防御だけではない」
と、ギデオンはそう呟くと、
「この翼は……!」
と、そう叫びながら翼を大きく広げて、
「きゃ!」
「うわ!」
「ぐぅ!」
レナ、アメリア、ヴァレリーの3人を吹き飛ばした。
そして、3人がそれぞれ空中で体を回転させながら、どうにか地面に着地すると、
「こういうことも出来る!」
と、ギデオンは更にそう叫びながら、今度は2枚の翼をビシッと限界まで伸ばすと、その状態で力いっぱいクルッと一回転した。
次の瞬間、ビシッと伸びたその翼から突風が放たれたので、それを見て嫌な予感がした春風達は、一斉にその場に身を縮めた。
すると、翼から放たれた突風が、次々と森の木々を真っ二つにした。
その後、切られた木が大きな音を立てて倒れたところで、春風達はゆっくりと立ち上がると、
(うわ、これは……)
周囲の木々は見事に切り倒されていて、ヘリアテスがその断面をよく見ると、その切り口はまるで切れ味鋭い刃物で真っ二つにしたかのように綺麗だったので、
「な、なんて恐ろしい切れ味なの」
と、ヘリアテスはタラリと汗を流しながらそう戦慄した。
そんなヘリアテスを他所に、
「ふっふっふ。更にこの翼は……」
と、ギデオンが笑いながらそう言うと、今度は伸ばした翼を一旦ダラリとさせて、
「ぬぅうううううううん!」
と、左右の手をグッと握り締めながらそう力んだ。
すると、ダラリとさせた翼がグググっと少しずつ形を変え始めて、それを見た春風達が、
『な、何だ!?』
と、警戒していると、左右の翼はまるで大きな腕のような形になり、先端部分はまるで大きな握り拳のようになった。
そう。それはまさに、ギデオンの新たな両腕だったので、
「うっそーん」
と、それを見た春風は、なんとも間抜けな感じの口調でそう呟いた。
その時だ。
「ふ、ふっざけんなぁあああああ!」
と、ヴァレリーがそう叫びながら、ギデオンに向かって突進したので、
「駄目です! ヴァレリーさ……!」
と、それを見たタイラーは「待った」をかけようとしたが、
「ふ……」
それを遮るかのように、ギデオンは不敵な笑みを浮かべながら素早くヴァレリーに近づくと、
「ふん!」
ーードゴン!
ヴァレリーの頭上に、大きな握り拳と化した白い翼を叩きつけた。
「……ぁ!」
真上から強い一撃を受けたヴァレリーは、その勢いで地面に倒れ伏すと、ピクピクと体を動かすだけの状態となってしまった。
それを見て、
「ヴァレリーさん!」
「いやぁあああ!」
と、ディックとフィオナは顔を真っ青にしてそう悲鳴をあげると、
「このぉ!」
「よくも!」
と、今度はレナとアメリアがギデオンに突撃したので、
「ふふふ……」
と、ギデオンはそう鼻で笑うと、素早くその場から動いて、
「「っ!」」
「はぁあ!」
と、今度は大きな両腕と化した白い翼と一緒に再び体を一回転させると、その勢いに乗せた白い翼でレナとアメリアを薙ぎ払った。
「「ああ!」」
薙ぎ払われた2人はそう悲鳴をあげながら吹っ飛ばさせると、やがて2人ともドサッと地面に落ちて、ヴァレリーと同じように体をピクピクとさせた。因みに、その際レナの姿は狐の獣人の姿から元に戻っていた。
そんな状態の2人を見て、
「レナァ!」
「姉さん!」
「アメリアお姉ちゃん!」
と、ヘリアテス、ニーナ、ピートがそう悲鳴をあげると、それを聞いたタイラーはギリッと歯を鳴らしながらギロリとギデオンを睨むと、
「この、化け物がぁ!」
と、ギデオンに向かってそう怒鳴りながら、魔砲杖による砲撃を放った。
数十発の魔力の砲弾がギデオンに襲いかかるが、
「そんなもの……」
と、ギデオンはそう呟くと、
「効かぬわぁ!」
と叫びながら、大きな両腕と化した白い翼を動かして、その魔力の砲弾を全て消し去った。
それを見て、
「ああ……そ、そんな……」
と、タイラーがショックを受けていると、
「タイラーさん、逃げて!」
と、春風がタイラーに向かってそう叫んだが、
「は!」
「遅い!」
その叫びタイラーが我に返った時には、既に目の前にギデオンがいた。
そして、ギデオンはタイラーに向かって、大きな白い握り拳によるアッパーをお見舞いした。
「グハァ!」
と、それを食らったタイラーは大きく上空まで吹っ飛ばさせると、最後はレナとアメリアのようにドサッと地面に落ちたので、
「た、タイラーさん!」
と、それを見たアデレードはそう悲鳴をあげた。
とんでもない形でレナ達が倒されてしまったので、
「そ、そんな……」
と、春風はショックで顔を真っ青にしたが、そんな春風に構わずギデオンは一瞬で春風の目の前の立つと、
「残りは貴様か」
と、ギデオンはそう言って左手で春風の顔面をガシッと掴んだ。
その瞬間、
(し、しま……!)
と、春風はハッとなったが、そんな春風を無視して、
「覚えてるぞ春風・スカーレット。貴様、よくもこの私の顔面を踏み付けて地面に埋めてくれたな」
と、ギデオンは恐ろしく低い声でそう言うと、両腕と化した白い翼を元に戻し、それをバサバサと動かしながら上空へと飛び立った。
その後、ある程度の高さまで達すると、
「これは……お返しだ!」
と、ギデオンはそう叫びながらそこからもの凄い勢いで急降下し、掴んでいた春風の頭部を地面に叩きつけた。
ドゴンッという音と共に、頭部に強い一撃を受けた春風。
そんな状態の春風を見て、
「春風!」
「「「春風さん!」」」
「兄貴!」
「春風お兄さん!」
と、アデレード、ヘリアテス、ニーナ、フィオナ、ディック、ピートがそう悲鳴をあげて、
「ふ、死んだか」
と、ギデオンはそう呟いたが、
「……ま」
「む?」
「まだ……死んでないぞ……おっさん」
と、春風が苦しそうにそう反論したので、それを聞いたギデオンは「ほう」と声をもらすと、右手に持っていたスパークルで春風に突きを繰り出したが、
「ふぐ!」
と、春風は精一杯体を動かして、間一髪のところでそれを避けたので、それを見たギデオンは「ほほう」と更にそう声をもらすと、左手を春風の顔面から離して、再び上空に飛び立った。
そして、またある程度の高さにまで達すると、
「それなら、これはどうかな」
と言って、スパークルの刀身に白い光を纏わせた。
すると、刀身を覆った白い光が、バチバチと音を鳴らしたので、
「い、いけない! あれは流石に……!」
と、嫌な予感がしたヘリアテスがそう呟くと、
「春風!」
「兄貴ぃ!」
「「春風さん!」」
「春風お兄さん!」
と、アデレード、ディック、フィオナ、ニーナ、ピートが春風のもとへと駆け出したので、
「みんな、駄目!」
と、ヘリアテスが止めようとしたが、
「ふ、もう遅い!」
と、上空のギデオンはそう言うと、
「死ねぇ!」
と、そう叫びながら、スパークルに纏わせた白い光を稲妻に変えて、それを春風に放った。




