第325話 vs大隊長ギデオン・「大反撃」の時
スキル「獣化」によって白い狐の獣人の姿へと変身したレナ。
そんなレナの姿を見て、その場にいる誰もが見惚れている中、ギデオンはというと、
(あの姿……間違いなく、あの時見た『悪魔』の姿だ!)
と、レナに真剣な眼差しを向けながら、とある記憶を思い出していた。
そう。それは忘れもしない17年前、自身が殺したグラシアのスキルによって「未来」を見せられた時の記憶。
その「未来」に出てきた「神を滅ぼす3人の悪魔」の1人、「白い尻尾を生やした悪魔」によく似ていたのだ。
その時の姿形は、まるで幼い子供が描いた落書きのような見た目をしていたが、17年経った現在、自身の目の前で変身したレナの姿こそ、あの日見た「未来」に出てきた、「白い尻尾を生やした悪魔」に間違いなかったのだ。
そんなレナを前に、
「ああ、とうとう……とうとう見つけた」
と、ギデオンはボソリとそう呟くと、腰のベルトに下げた神剣スパークルを鞘から引き抜き、それを両手で持つと、自身の目の前に翳したので、それを見た春風達が「何だ?」と首を傾げていると、ギデオンはゆっくりと目を閉じて、
「偉大なる5柱の神々よ。私、ギデオン・シンクレアは、とうとう貴方様方を滅ぼす『悪魔』の1人を発見しました。どうか、この私めに、『悪魔』を倒すお力をお貸しください」
と、まるで……いや、まさに「神」に祈るようにそう言った。
その言葉に春風達が「むむ!」と警戒すると、ギデオンはスパークルを構え直して、
「さぁ来るがいい、『白き悪魔』と『裏切り者』、そして『異端者』共よ。貴様らはこの私、断罪官大隊長ギデオン・シンクレアが直々に5柱の神々のもとへと送ってやろう。そして、その次は……」
と言うと、
「『邪神ヘリアテス』、貴様の番だ」
と、最後にギロリとヘリアテスを睨みながらそう言ったので、その言葉にヘリアテスが「む!」と身構えると、
「そんなこと私が絶対にさせない! お母さんは、私が守る!」
と、レナが反論するかのようにギデオンに向かってそう言い、それに続くように、
「レナだけじゃない! 俺もいることを忘れるな!」
と、春風も夜羽を構えながら、ギデオンに向かってそう言い、それに合わせるかのように、アメリア、ヴァレリー、そしてタイラーも、それぞれ武器をかまえながら、ギデオンを睨みつけた。
静寂が春風達を包み込む。
武器を構えながら睨み合う彼らの間を、ヒュウッと風が吹き抜ける。
そして、
「春風!」
と、レナがギデオンに視線を向けたままそう叫び、
「『アクセラレート』! 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」
と、春風がレナに向かって、風、炎、土属性の魔術をかけた。
その瞬間、緑、赤、そしてオレンジ色の光が、レナの全身を包み込む。
それを確認すると同時に、自分の体が強化されていくのを感じたレナは、すぐにダッとギデオンに向かって駆け出し、炎を纏った右手を広げた。
すると、右手の炎が形を変え、やがてそれは鋭い爪を持つ大きな手となった。
その後、レナは大きくジャンプしながら、その大きな炎の手を振り上げると、それをギデオンに向かって勢いよく振り下ろした。
しかし、
「ふ!」
と、ギデオンはスパークルでその攻撃を受け止めた。
レナはそれを確認すると、一旦ギデオンから離れて、今度は別の角度から炎の手を振ったが、
「甘い!」
と、ギデオンはそう言いながら、その攻撃もスパークルで防いだ。
その時だ。
「『アクセラレート』! 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」
という春風の叫びがきこえたので、その声にギデオンが「何!?」と反応すると、
「はぁ!」
と、レナの背後から、緑、赤、オレンジ色の光に包まれたアメリアが現れて、ギデオンに向かってハルバードを振り下ろした。
ギデオンはすぐに後ろに飛び退いてその一撃を避けたが、
「『アクセラレート』! 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」
と、また春風の叫びがあがったので、それにギデオンが「むむ!?」と反応すると、
「こっちだよ!」
と、自身の背後でそんな声がしたので、その声を聞いたギデオンが思わず後ろを振り向くと、そこにはレナ、アメリアと同じく、緑、赤、オレンジ色の光に包まれたヴァレリーが、
「くらいな!」
と、ギデオンに向かって剣を振り下ろした。
しかし、
「無駄だ!」
と、ギデオンは素早くその攻撃も避けたので、振り下ろされたヴァレリーの剣は、ギデオンの代わりに何もない空間を斬ることになった。
それにヴァレリーが「ちっ!」と舌打ちし、その後ギデオンは余裕のある笑みを浮かべながら地面に着地したが、
「喜ぶのは早いですよ!」
と、タイラーはそう言いながら、ギデオンに向かって魔砲杖をぶっ放した。
金属の筒から放たれた何発もの魔力の塊が、ギデオンに向かってもの凄い勢いで飛ぶ。
誰もが「あたりか!」とそう思ったが、ギデオンはニヤリと笑うと、
「ふっ! はっ! ふん!」
と、そう叫びながら、その何発もの魔力の塊を全て回避した。
そして回避し終えると、
「どうした? そんなものか?」
と、ギデオンは不敵な笑みを浮かべながらタイラーに向かってそう尋ねたが、
「そんなわけ、ないでしょう」
と、タイラーも不敵な笑みを浮かべながら、ギデオンに向かってそう答えた、まさにその時、ギデオンの近くの地面からボコリと何かが飛び出てきた。
それも1箇所ではなく、ギデオンの周辺から複数の何かが飛び出て、ギデオンの体に纏わり付いた。
よく見ると、それは植物の蔓のようで、幾つもの箇所から飛び出たそれは、まるで鎖のようにギデオンの体に巻き付いた。
「一体これは……!?」
と、あまりのことに驚いたギデオンは、「一体何が起きた!?」と言わんばかりに辺りをキョロキョロと見回すと、
「き、貴様か!? 春風・スカーレット!」
と、そこには青とオレンジ色の光に包まれた両手を地面につけた春風の姿があったので、ギデオンは尋ねるようにそう叫んだが、
「……」
とうの春風本人はそれに答えることはなく、
「レナ! アメリアさん! ヴァレリーさん! 今です!」
と、代わりにそう叫ぶと、いつの間にかギデオンの周りにはレナやアメリア、そしてヴァレリーの姿があったので、それを見たギデオンが「しまった!」とそう叫んでいると、
「「「はぁあああああ!」」」
と、レナ、アメリア、ヴァレリーは、ギデオンに向かって武器を振り下ろした。
(くっくっく……)
と、口元を歪ませたギデオンに気付くことはなく……。




