第324話 vs大隊長ギデオン・そして、「少女」は……
春風、グラシア、ピートのもとに、レナ、ヘリアテス、アデレード、ディック、フィオナ、そしてニーナが駆け寄る。
その後、春風達の傍に着くと、
「春風、大丈夫!?」
「ピート、平気!?」
と、レナとニーナは心配そうな表情で詰め寄った。
そんなレナとニーナに、春風とピートは「うお!」と驚きながらも、
「あー、俺はこの通り大丈夫だよレナ」
「う、うん。僕も大丈夫だからね、ニーナお姉ちゃん」
と、落ち着いた表情でそう返事したので、それを聞いたレナとニーナ、そしてヘリアテス達までもがホッと胸を撫で下ろすと、
「もう。いきなり怒って飛び出したもんだから、びっくりしちゃったし心配したんだよ」
と、アデレードが「むぅ」と頬を膨らませながらそう言ったので、その言葉に春風は「あ……」と声をもらすと、レナやヘリアテスといった周囲の人達を見回して、
「ご、ごめんなさい」
と、申し訳なさそうな表情で頭を下げてそう謝罪した。
すると、
「春風」
と、レナがそう口を開いたので、それに春風が「ん?」と反応すると、
「春風が怒る気持ち、わかるよ。私だって、春風と同じ立場に立ってたら、きっと私も凄い怒ると思うから」
と、レナは真っ直ぐ春風を見つめながらそう言った。
その言葉に、春風は表情を暗くすると、レナはソッと春風の手を握って、
「春風、1人で戦わないで。春風にもしものことがあったら、私達は勿論、フロントラルで春風を待ってる人達や、ルーセンティア王国に残してきた勇者達と、ストロザイア帝国に旅立った勇者達、そして春風の故郷にいる大切な人達が悲しむから」
と、真剣な表情でそう言い、それに続くように、ヘリアテスやグラシア、アデレード、ディック、フィオナ、ニーナ、ピートも「うんうん」と頷いたので、それを見た春風は思わず泣きそうになったが、どうにか堪えると、
「……うん、そうだよね。ごめんなさい」
と、再びレナ達に向かって謝罪した後、
「勝手なこと言ってるのはわかってるけど……俺と一緒に、戦ってください」
と、真っ直ぐレナを見つめながらそう言った。
一方、ギデオンと戦っているアメリア、ヴァレリー、タイラーはというと、
「どうした? もう限界か?」
と、余裕のある笑みを浮かべながらそう尋ねるギデオンとは対照的に、
「「「はぁ……はぁ……」」」
と、アメリアもヴァレリーもタイラーも、辛そうに肩で息をしながらギデオンを睨みつけていた。3人とも身体中は傷だらけで、疲れがかなり溜まってたのか、それぞれ武器を地面に突き立てて、それにもたれる形でどうにか立っている状態だ。
そんな状況の中、
「ちくしょう。やっぱ強すぎだろこいつ……」
と、ヴァレリーが「ちっ!」と舌打ちしながら、ギデオンを見て文句を言い、
「そうですね。レベル100というだけでも最早『化け物』だというのに、更に『人間』から『天使』になったとか、あり得ないにも程がありますよ」
と、ヴァレリーに続くようにタイラーも、ギデオンを見て文句を言ったが、
「ですが、だからといってここで殺されてやるわけにはいかない……ですよね?」
と、アメリアがそう尋ねてきたので、
「「当然!」」
と、ヴァレリーとタイラーは同時にそう返事した。
そんな3人を前に、
「ふむ、ではトドメといこうか……」
と、ギデオンが不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、
「待てよおっさん!」
という声が聞こえたので、その声にギデオンだけでなくアメリア、ヴァレリー、タイラーも「む!?」と反応して、それからすぐに全員が声がした方へと振り向くと、
「あ、春風! それにレナも!」
と、ヴァレリーが大きく目を見開いたように、そこには堂々とした佇まいの春風とレナがいた。
因みに、ヘリアテス、アデレード、ディック、フィオナ、ニーナ、ピートはすぐに傍の木の近くにいて、少し前に、
「お母さん、みんなのことはお願い」
と、レナはヘリアテスに向かってそうお願いし、
「わかったわ。2人とも、絶対に死なないでね」
と、それを聞いたヘリアテスはコクリと頷きながらそう了承した後、最後に2人に向かってそう頼むと、
「「勿論、絶対に生きて帰ります!」」
と、春風とレナは2人同時にそう返事した。
そして今、春風とレナはゆっくりとアメリア達のもとへと歩き、その近くに着くと、春風は腰のケースから夜羽を引き抜いた。
そして、その先端をアメリア達に向けると、
「『ヒールレイン』!」
と、水属性の魔術「ヒールレイン」を唱えた。
その瞬間、アメリア達に青い光の雨が降り注ぎ、それがアメリア達の体にあたるとみるみる傷が塞がっていったので、
「はは、ありがたい」
と、ヴァレリーは春風に向かってお礼を言った。
それを聞いた春風は「ふふ」と優しそうな笑みを浮かべると、すぐに真剣な表情でギデオンを見つめた。
その後、
「春風」
と、レナがギデオンに視線を向けた状態でそう口を開いたので、
「何、レナ?」
と、春風もギデオンに視線を向けた状態でそう返事すると、
「ここからは私、本気で戦うけど……その………怖かったら、『怖い』って言っていいからね」
と、レナは自信なさそうな口調でそう言ったので、それに春風は「え?」と首を傾げると、レナはそんな春風を無視して1歩前に出て、
「スキル……『獣化』!」
と唱えた。
次の瞬間、レナの露出した体の一部が白い毛で覆われ始めて、両手の爪が鋭くなり、終いには顔の形も変化し始めた。
それは、紛れもなく白い狐の獣人の姿で、月の光があたった所為か、とても美しく見えたので、春風をはじめとしたその場にいる誰もが「おお……」と見惚れていると、
「……それが、貴様の真の姿か?」
と、ギデオンがギロリとレナを睨みながらそう尋ねてきた。
その質問に対して、変身したレナは「ふふ……」と笑うと、自身の右手に炎を纏わせて、
「改めて名乗らせてもらうわ、ギデオン・シンクレア。私はレナ・ヒューズ。お前達『人間』によって『悪しき種族』へと貶められた『獣人』と『妖精』の血を引く者にして、お前達が崇める『5柱の神々』によって『邪神』へと貶められた、『月光と牙の神ループス』と、『太陽と花の女神ヘリアテス』の娘よ」
と、ギデオンに向かって改めてそう自己紹介した後、
「この爪に引き裂かれ、炎で焼かれる覚悟があるなら、かかってきなさい!」
と、最後にそう付け加えた。
その言葉を聞いて、ギデオンが「むむ!」と警戒していると、
「春風。こんな私の姿……怖いかな?」
と、レナは恐る恐る春風に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「全然怖くない! 寧ろ、すっごい綺麗です!」
と、春風はビシッと親指を立てながら、笑顔でそう答えたので、
「えへへ、ありがとう春風!」
と、レナも笑顔でそうお礼を言った。




