第319話 vs大隊長ギデオン・「人間(ひと)」を超えた男
今回は、いつもより少し長めの話になります。
「今の私は、偉大なる5柱の神々に仕える『天使』……『人間』を超えた存在だ」
と、春風達に向かってそう言った、断罪官の現・大隊長、ギデオン・シンクレア。
その彼の背中から現れた2枚の白い翼と、彼自身の「ステータス」を見て、
(う……嘘だろ、おい)
と、春風はショックを受けた。
いや、春風だけではない。レナをはじめとした周囲の人達も、ギデオンの「ステータス」を見て絶句していた。特に、元・断罪官の隊員であるアメリアはというと、
「そ、そんな……ギデオン大隊長が、『人間』じゃない? う、嘘だ……」
と、ギデオンの「種族」を知って顔を真っ青にしながら混乱していたので、
「あ、アメリアさん、あなたは知らなかったのですか?」
と、そんなアメリアの様子を見たタイラーがそう尋ねると、
「し……知らない……私は……本当に知らない……」
と、アメリアはギデオンに視線を向けたまま、首を左右に振りながらそう答えた。
その答えが聞こえたのか、
「そうだ。この私の『正体』を知っているのは、先代の大隊長、そして一部の隊員達だけだ」
と、ギデオンは真面目な表情でそう言い、
「因みに、先代の大隊長も、既に『天使』となって5柱の神々のもとで働いている」
と、最後そう付け加えたので、
(うわぁ、まじかぁ)
と、春風はタラリと冷や汗を流した。
すると、
「はぁ……はぁ……」
と、先ほどまで悲鳴をあげていたヘリアテスが肩で息をしていたので、
「あ、お母さん! 大丈夫!?」
と、それに気付いたレナがそう尋ねると、
「ご、ごめんね、レナ。ちょっと、昔のことを思い出しちゃって……」
と、ヘリアテスは辛そうに肩で息をしながらそう答えたので、
「え、もしかして500年前にも『天使』が現れたのですか!?」
と、春風はヘリアテスに向かってそう尋ねようとしたが、
(いや、今はそんな場合じゃない!)
と考えて、尋ねるのをやめた。
すると、
「おい、ギデオン・シンクレア! 『人間を超えた』ってどういう意味だ!? 全然わかんねぇぞ!」
と、ヴァレリーがそう抗議し、それに続くように、
「そうです! 一体、あなたの身に何が起きたというのですか!?」
と、タイラーもギデオンに向かってそう尋ねた。
その答えを聞いて、
「ふむ、そうだな。冥土の土産に教えてやろう」
と、ギデオンは特に問題なさそうな態度でそう言うと、
(うお! 現実で『冥土の土産』なんて単語、初めて聞いた!)
と、春風は表情に出さずに心の中でそう興奮した。
そんな春風を他所に、
「そもそも、人間のレベルは99が最大ではない。何故なら、『99』などという数値に達した人間など、一般人の中にはいないからだ」
と、ギデオンはキリッとした表情でそう言ったので、
「え!? そうなの!?」
と、それを聞いた春風は思わず声に出して驚いた。
すると、
「……確かに、私も長いことハンターとして魔物と戦ってきたが、未だにレベルは75だし、私が知る中で、レベルが99になった人間の話は聞いたことがない」
「ええ、それは僕も同じです。因みに、僕のレベルは73です」
と、ヴァレリーとタイラーがタラリと汗を流しながらそう言ったので、
「ええ! そうだったんですか!?」
と、春風はギョッと大きく目を見開きながら驚いた。
しかし、そんな春風を無視して、
「だ、だが、そこまでレベルを上げる為には、相当な数の魔物を倒さねばならない! それは、かなりの時間と労力がいるんじゃ……!?」
と、納得出来てない様子のタイラーが、ギデオンに向かってそう尋ねると、
「ふふ。誰が魔物だけを倒すと言った?」
と、ギデオンは不敵な笑みを浮かべながらそう答えたので、それにタイラーだけでなく春風達までもが「どういう意味だ!?」と言わんばかりの表情になると、
「いるではないか。魔物以上の経験値を有する存在が」
と、ギデオンは不敵な笑みを浮かべたままそう言ったので、その言葉に春風が「え?」となった瞬間、
「ま、まさか!」
と、顔を真っ青にした。
その様子に気付いたのか、
「は、春風、どうしたの!?」
と、レナがそう尋ねると、
「レナ、確か断罪官の仕事って……」
と、春風が顔を真っ青にしたままそう言ったので、その言葉を聞いたレナが、
「え、それは……」
と、答えようとした瞬間、レナも春風と同じく顔を真っ青にした。
何故なら、春風の言葉を聞いた時、レナの頭の中で、ある恐ろしい答えが浮かび上がってしまったからだ。
そして、レナがその結論に至ると同時に、ヴァレリーとタイラーを含めた周囲の人達も、皆、顔を真っ青にすると、
「そうとも、『人間』だ」
と、ギデオンはニヤリと醜く口を歪めながらそう言い、
「そう、『人間』は魔物よりも多くの経験値を有していてな。個体にもよるが、特に様々な技術を身につけた大人は多くの経験値を手に入れることが出来るのだ」
と、付け加えた。
その言葉を聞いて、
「ま、待ってください……」
と、アメリアが恐る恐るそう口を開くと、
「じゃあ……私達断罪官が、目的の『異端者』の周りの人間を殺すのは、レベルアップの為だというのですか!?」
と、ギデオンに向かって涙を流しながらそう尋ねた。
その質問を聞いて、春風達が「あ……」と声をもらすと、
「そうだ。しかし、全員が『天使』になれるわけではない。神々より最上位の職能を授かった人間がレベル100に至った時、はれて『天使』へと進化することが出来るのだ」
と、ギデオンはコクリと頷きながらそう答えた。
その答えを聞いて、アメリアが「そんな!」とショックを受けていると、
「ああ、そういえば……貴様も相当な数の人間だけでなく、所属していた小隊の人間達まで手にかけていたんだったな。確か、ケネス小隊長が最上位の職能保持者だったから、そんな彼を倒したということは……」
と、ギデオンは自身の顎を摩って「うーん」と考え込むと、
「うむ、レベル100になっても、問題なく『天使』になれるだろう」
と、手をポンと叩きながらそう言ったので、その言葉を聞いた瞬間、アメリアは顔を真っ青にして、
「いやぁあああああ! 違う違う違う! 私は……私はそんなつもりじゃ……そんなつもりなんてないのよぉおおおおおおお!」
と、頭を抱えてヘリアテス以上に悲鳴をあげた。
それを見て、
「ね、姉さん!」
「アメリアお姉ちゃん!」
と、ニーナとピートが必死になって宥めようとすると、
「ああ、そういえば……」
と、ギデオンが更にそう口を開いたので、それに春風が、
(今度は何だよ!?)
と、苛ついた様子でそう反応すると、
「確か、蘇った『邪神』を倒す為にルーセンティア王国で『勇者召喚』が行われて、その結果24人もの勇者が召喚されて、更にその中に最上位の職能を授かった者達がいたんだったな」
と、ギデオンは今になって思い出したかのような表情でそう言ったので、その言葉に春風が「は?」と反応すると、
「よし、その者達も我らと共に『異端者』を討伐してもらおう。偉大なる5柱の神々に選ばれた勇者なら、きっと私以上の強い『天使』となるだろう」
と、ギデオンは「いいことを思いついた!」と言わんばかりの笑みを浮かべながらそう言った。
その瞬間、
「……は?」
春風の中で、何かがブチリと切れた音がした。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。前回出てきた「ギデオン・シンクレア」のステータスですが、改めて考えた結果「何か違う」と考えたので、誠に勝手ながら変更させてもらいました。
読者の皆様、本当にすみません。




