第314話 vs大隊長ギデオン・断罪官の装備と、「神剣スパークル」
本日2本目の投稿です。
レナがギデオンに向かって一撃を入れようとしていたその一方、
(よし、俺も準備だ)
と、春風は心の中でそう呟くと、夜羽をケースに納めて、代わりに翼丸を鞘から引き抜いた。
そして、
「これでも、くらえええええええ!」
「甘いわ!」
と、ギデオンがレナの渾身の一撃を白い長剣で受け止めた、まさにその瞬間、
(今だ!)
「『アクセラレート』!」
と、春風は自身に風属性の魔術「アクセラレート」をかけて、ギデオンに向かって突撃した。
正直なところ、人を斬ることに対して迷いがないわけではない。小闘技場でアデレードと戦っていた時は、きちんと真剣で戦ってはいたが、それでもほんの少し迷いはあったのだ。
しかし現在、春風は夜羽ではなく翼丸を持った状態でギデオンに向かって突撃した。
それは、相手が自分に対して明確な殺意を持っていたからだ。
春風には死ぬわけにはいかない理由があって、命以外にも絶対失いたくない大切な存在もある。
故に、
(こんなところで、殺されてたまるかよ!)
とそう考えた春風は、ギデオンを斬ることを決めたのだ。
その後、春風はギデオンのすぐ傍まで近づくと、
(狙いは……)
「そこだ!」
と、ギデオンに向かって翼丸を思いっきり振るった。
着る場所は、鎧のない腹部の辺り。
(許せ!)
と、心の中でそう叫んだ春風の刀が、ギデオンの腹部に当たった。
だが……。
ーーガキン!
「……は?」
なんと、確かに春風の刀はギデオンの腹部に当たったが、鎧のない部分であるにも関わらず、何故かまるで硬いものに当たったかのように、ギデオンの腹部を斬り裂くことが出来なかったのだ。
その事実に、
(な、なんで……?)
と、春風はそう疑問に思ったが、すぐに気持ちを切り替えてギデオンから少し離れると、
「だったら、これだ!」
と、そう叫びながら、翼丸の刀身に風属性の魔力を纏わせた。
それを見て、ギデオンが「ほう」と感心する中、春風は再びギデオンのすぐ傍まで近づき、
「ふ!」
と、その風属性の魔力を纏わせた翼丸を、腹部目掛けて振るった。
(上手くいけば、鎧ごと斬ることが出来るかもしれない)
と、春風はそう考えたが……。
ーーガキィン!
「……はぁ?」
なんと、魔力を纏わせているにも関わらず、翼丸の刀身はまたしてもギデオンを斬り裂くことが出来なかったのだ。しかも、よく見ると刀身に纏わせていた風属性の魔力は何故か最初からなかったかのように消えていたので、
「もう一度!」
と、春風は再び刀身に風属性の魔力を纏わせると、今度は何度もギデオンに向かって振るった。
しかし、
「う、嘘だろおい……」
どの攻撃もギデオンの体を斬り裂くことは出来ず、それどころか何度も攻撃を振るっていくうちに春風の体に疲労が溜まっていったので、現在、春風はギデオンを前に「ぜぇ……はぁ……」と辛そうに肩で息をしていた。
そんな春風とは対照的に、
「ふむ、どの一撃も中々よかったぞ」
と、ギデオンは落ち着いた表情で春風に向かってそう言い、そんなギデオンを羽交締めにしているレナはというと、
「そ、そんな、春風……」
と、春風の攻撃が通用しなかったという事実にショックを受けていた。
その後、
「もういいだろう」
と、ギデオンはボソリとそう呟くと、
「ぬぅん!」
という掛け声と共に自身の上半身を大きく動かして、
「きゃあ!」
羽交締めにしていたレナを強引に振り解いた。
その後、空中に投げ出されたレナは、
「く、このぉ!」
と、強引に体を回転させると、その勢いのままスタッと地面に着地した。勿論、場所は春風の隣である。
「レナ、大丈夫!?」
と、春風がレナに向かってそう尋ねると、
「私は平気だけど、春風の方はどう?」
と、レナにそう尋ね返されてしまったので、
「……正直、精神面の方がキツいかな」
と、春風は表情を暗くしながらそう答え、
「く、魔力を込めた一撃でも斬れないなんて……」
と、最後に悔しそうな表情でそう付け加えると、
「生憎、我ら断罪官に与えられしこの鎧は特別製なのでな。特にこの大隊長の鎧はその更に上をいく装備。それ故にそんじょそこらの武器では傷1つつけることなど不可能なのだよ」
と、ギデオンは自身の鎧を摩りながら、不敵な笑顔でそう言った。
その言葉が届いたのか、
「おいおい、冗談だろ?」
と、ヴァレリーはショックで顔を真っ青にし、
「……いえ、残念ですが大隊長の言ってることは事実です。実際、私も隊員だった時、鎧の性能に何度も助けられてきました」
と、アメリアも申し訳なさそうな表情でそう言った。
そんなヴァレリー達を他所に、
「そして、防御面だけではない」
と、ギデオンはそう呟くと、両手で白い長剣の柄をグッと握り締めて、まるで春風とレナに見せつけるようにそれを翳すと、
「断罪官大隊長の証であるこの『神剣スパークル』は、偉大なる5柱の神々より賜った武器。故に……」
と、そう言った次の瞬間、ギデオンは素早く春風とレナの傍まで近づくと、
「この剣に、斬れぬものなど、ない!」
と叫びながら、思いっきりその白い長剣「神剣スパークル」……以下、スパークルを春風とレナに向かって振るった。
その瞬間、2人はハッとなって、
「「く!」」
と、すぐに後ろに飛び退いて、その攻撃を回避した。
そして、スパークルが地面についた瞬間、「ドゴン!」という大きな音と共に、これまた大きな亀裂が出来たので、
「な、なんて威力なの……」
と、レナは汗を拭う仕草をしながらそう呟くと、
「それだけじゃない。初めて見たときから、あの剣、何か危険なものを感じたんだけど……」
と、春風がギデオンが手にしてるスパークルを、警戒心剥き出しで見つめながらそう言った。
その言葉に対して、レナが「な、何それ……?」と尋ねようとすると、
「春風さん!」
「ん……ヘリアテス様!?」
「お母さん!?」
いつの間にか春風の隣にヘリアテスがいたので、思わず春風とレナはギョッと目を大きく見開いたが、そんな2人に構わず、ヘリアテスは春風の手を握ると、
「春風さん、あの剣に向かって『神眼』を使って。今度は私もいますから、きっとあの剣の情報が見るれると思う」
と、春風に向かってそう提案してきたので、
「わかりました」
と、春風はコクリと頷きながらその提案を聞き入れると、ギデオンが持つスパークルを見つめて、
「『神眼』、発動!」
と唱えた。
今度はヘリアテスと手を繋いでいる所為か、春風の目の前にスパークルの情報が記されたウィンドウが現れたので、春風は「やった!」と少しだけ喜びながら、ヘリアテスと共にそのウィンドウに記された内容を読むと、そこにはこう書かれていた。
神剣「スパークル」……対神武装の複製品。多くの人間の血を吸わせることによって強力な兵器へと成長する。
その説明を読んで、
「……は? 『対神武装』?」
と、春風は首を傾げて、
「やはり、『神殺し』か!」
と、ヘリアテスは「怒り」で表情を歪ませた。




