第30話 春風、更に質問する
「他にも幾つか質問したいことがあるので、よろしいでしょうか?」
「あ、ああ構わない」
「ありがとうございます。では……」
そう言うと春風は次の質問を始める。
(『動機』についてはわかった。それなら俺が次にするべき質問は……)
「今回、俺達をこの世界に召喚した時、何を『対価』にしたのですか?」
その質問を聞いて、ウィルフレッドは「む……」と目を細めると、
「『対価』とは、また随分と妙なことを聞くのだな」
と、警戒しているような声色でそう言ったので、
「そりゃあそうでしょ。だってこれだけの人数を召喚したんですよ? それなら、支払った『対価』……いや、『代償』は相当大きいのではないですか?」
と、春風はチラッと爽子やクラスメイト達を見ながら、ウィルフレッドに向かってそう尋ねた。
その瞬間、ウィルフレッドだけでなく周囲の人達までもが「そ、それは……」と言わんばかりに動揺し出したので、
(あ。これ、何かあるのかも……)
と、春風はそう考えたが、
(いや、駄目だ。これ以上踏み込めば、怪しまれるかもしれない)
と思い、
「そうですね。例えば、召喚を行ったクラリッサ姫様とサポートに入った人達の体調とか……だったり?」
と、チラッとクラリッサに視線を向けながら、尋ねるように言った。ただ、ちょっと口調がおかしくなってたのに気付いて、
(あ、ちょっと無理矢理だったかな?)
と、春風はそう疑問に感じたが、
「え、わたくしですか? それなら大丈夫です。確かに、ちょっと疲れた感じはしますが、その程度で倒れる程、わたくしもサポートしてくださった方達もヤワではありません」
と、クラリッサは「ふふん!」と胸を張りながらそう言った。そして彼女の近くでも「ふふん!」という声が複数あがったので、
(ふーん、そうなんだ……)
と、春風がそう思ったまさにその時、
「嘘、発見! 嘘、発見!」
と、春風の頭の中でそう叫ぶ声と、「ブー! ブー!」という警告音が聞こえて、それと同時に、
(頭いてぇえええええええ!)
と、激しい頭痛が襲ってきたので、春風は思わず自身の左右のこめかみを両手で押さえた。
その仕草を見て、
「ど、どうしたのだ!?」
と、驚いたウィルフレッドが声をかけてきたが、
「だ、大丈夫です……気にしないでください」
と、春風は穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。ただ、周囲の人達は、
(いや、ほんとに大丈夫!?)
と、言わんばかりにオロオロし出しているが。
そんな彼らを他所に、
(ちょ、ちょっと待て。今ので『神眼』が反応するってことは……)
と、春風は先程のクラリッサの発言とそれに「神眼」が発動したのを考えて、
「やっぱ無理してんじゃん!」
と、春風は思わず声に出してそう叫ぶと、
「ウィルフレッド陛下! 今すぐクラリッサ姫様とサポートに入った人達を休ませてください! すっごい無理してると思いますので!」
と、ウィルフレッドに向かって大慌てでそう懇願した。
それを聞いて、ウィルフレッドは「え? え?」と動揺したが、
「急いで! でないと手遅れになってしまうかもしれません!」
と、春風は怒鳴るようにそう叫んだので、
「わ、わかった!」
と、ハッとなったウィルフレッドはすぐに騎士達に命令して、クラリッサとサポートに入った人達を連れ出させた。
その際、
『あ、あああああああれえええええええ!』
と、クラリッサを含めた数人の人達の悲鳴が聞こえたので、
(うわぁ、現実で『あ〜れ〜』なんて悲鳴、初めて聞いたかも)
と、春風は「はは」と頬を引き攣らせた。
その後、
「さてウィルフレッド陛下、では質問の続きを……」
と、春風は普通に次の質問に入ろうとしたので、
「この状況でか!?」
と、ウィルフレッドは驚いたが、
「……で、何を聞きたいのだ?」
と、すぐに表情を変えてそう言ったので、
『切り替え早っ!』
と、周囲からそうツッコミがあがった。
しかし、そんな彼・彼女らを無視して、
「その……今回俺達をこの世界に召喚したことなのですが、この世界の人達が崇めてる5柱の神々が『勇者召喚』を授けたということは、その神々は召喚を行うことを認めている……ということでいいんですよね?」
と、春風がウィルフレッドに向かってそう尋ねると、
「むむ! それは当然ですとも! というより、認めているも何も、偉大なる5柱の神々が、我々人間の為に『勇者召喚』の秘術を授けたのですから、皆様を召喚することは既に神々にとって決定事項なのですよ!?」
と、ウィルフレッドではなく五神教会教主のジェフリーが、「何を言ってるのだ?」と言わんばかりの表情で「ふん!」と鼻を鳴らしながらそう言ってきたので、その態度に春風はイラッとなったが、すぐに表情を変えて、
「では、ジェフリー教主……にお尋ねしかすが、その際、『他の世界の神々からも許可を貰った』とか聞いたりしてませんか?」
と、ウィルフレッドではなくジェフリーに向かってそう尋ねると、
「むむむ……いえ、そのようなことは、聞いておりませんが……」
と、ジェフリーは「何を言ってるんだ?」と言わんばかりに戸惑いに満ちた表情でそう答えたので、春風は「ふーん……」とウィルフレッドに視線を向けると、
「いや……私も、そのようなことは聞いてないが」
と、ウィルフレッドもジェフリーと同じような表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
(うん、2人とも嘘は言ってないな。そして、ここまでだな)
と、春風はそう結論づけると、
「ありがとうございました。質問は以上です」
と、目の前のウィルフレッド達に向かって笑顔でそう言った。
その言葉を聞いて、
「お、おおそうか。それでは……」
と、ウィルフレッドはパァッと表情を明るくし、それに続くように、彼の周りにいる人達も、
(ああ、この人も私達の為に力を貸してくれるんだな?)
と、皆、そう言いたそうに、ウィルフレッドと同じようにパァッと表情を明るくした。
そんな彼・彼女らを見て、春風は「ふふ」と小さく笑うと、スーッと左右の手を動かし、目の前でパンッとそれらを合わせると、
「すみません。俺には無理そうですので、ここを出て行く許可をください」
と、満面の笑みを浮かべて謝罪しながらそう言った。
それを聞いて、
『な……』
目の前のウィルフレッド達だけでなく、
『な……』
爽子とクラスメイト達までもがそう声をもらすと、
『なぁあああああにぃいいいいいいいっ!?』
と、全員が驚きに満ちた叫びをあげた。




