第310話 vs大隊長ギデオン・情報共有・2
今回は、いつもより短めの話です。
ヴァレリー、タイラー、そしてアメリアの3人と、断罪官大隊長ギデオンとの戦い。その一部始終を聞いて、
「……そう、そこまで強かったのね、あの男」
と、ヘリアテスが少し暗い表情でそう言うと、
「ああ。3人がかりで戦いに挑んで、見事に敗北しちまったよ」
「そうですね。白金級ハンターになって強さに自信はありましたが、その強さも、奴の前ではなんの意味もありませんでした」
と、ヴァレリーとタイラーはヘリアテス以上に暗い表情で落ち込みながらそう返事して、最後に2人とも「はは……」と、今にも口から魂が出てきそうな感じの雰囲気でそう付け加えた。
そのあまりにも弱々しい口調から、
(ああ、よっぽどショックだったんだなぁ)
と、春風はそう感じると、チラッとアメリアを見た。
表情はヴァレリーとタイラー以上に暗く、姿勢も震える手で両膝を抱えて体育座りをしていて、そんな状態のアメリアに、妹のニーナと、獣人の少年ピートが心配そうな表情で寄り添っていた。
すると、話を聞いていたレナがタイラーに近づいて、
「『無限倉庫』、発動」
と、自身が持つスキルの1つの名を唱えた。
目の前に黒い穴が現れて、レナはその穴に手を入れると、
「これ、あなたのでしょ?」
と言って、そこからとあるものを取り出して、タイラーに見せた。
見たところ、それは木製の杖の残骸のようだが、よく見ると 金属の筒のようなものがついていたので、その形を見て、
(ん? あれってまさか……)
と、春風がそう疑問に思っていると、
「ええ、僕が作った武器ですよ。もっとも、ギデオンの奥義からヴァレリーさんとアメリアさんを守る為に無理をさせすぎて、こうなってしまいましたが……」
と、タイラーは自身の武器の残骸の1つを手に取りながら、弱々しい口調のままそう答えた。
因みに、その答えを聞いて、
「悪かったなタイラー。お前のおかげで、私も彼女も死なずに済んだよ」
と、ヴァレリーはタイラーと同じように弱々しい口調で謝罪とお礼を言った。
すると、
「ちょっといいですか?」
と、春風がタイラーに向かってそう口を開いたので、それにタイラーが「ん?」と反応すると、
「……」
と、春風はタイラーの武器の残骸をまじまじと見つめて、その後、
「レナ、見つけたのはこれで全部なの?」
と、レナに向かってそう尋ねると、
「うん、タイラーさんの傍にあったのはこれで全部だよ」
と、レナは不思議そうな顔をしつつもコクリと頷きながらそう答えたので、それに春風が「そっか……」と返事すると、
「タイラーさん、ちょっとそれ貸してください」
と、タイラーの手に持つ残骸の1つを指差しながらそうお願いし、それを聞いたタイラーは「え?」と戸惑ったが、
「ど、どうぞ」
と、すぐにその残骸の1つを春風に手渡した。
「ありがとうございます」
と、春風はそう言ってその残骸の1つを受け取ると、すぐに他の残骸の中に置いて、まるでパズルでも解いているかのようにそれを並べ始めた。
そして、
「うん、出来た」
と、全ての残骸を元の形のように並べると、
「『魔導具作成』、発動」
と、自身の持つもう1つのスキルの名を唱えたので、
『え!?』
「ちょ、春風!?」
と、レナを含めた周囲の人達が驚きの声をあげた次の瞬間、残骸を囲むように青白く輝く円ーー「作成陣」が描かれた。
その後、春風はその作成陣に自分の魔力を流すと、残骸を置いた作成陣と春風が眩い光に包まれたので、
『うわ、眩しい!』
と、その場にいる者達全員、思わず腕で顔を覆った。
そして、光がだんだん弱まったので、皆、恐る恐る顔から腕を退けると、
「よし、出来た」
そこには、出来上がったものを手に取った春風の姿があったので、
「は、春風君。君は、一体何を……?」
と、タイラーがそう尋ねたが、春風はそれを無視して、
(うん、やっぱり『銃』だよな。それも狙撃銃。でも、引き金がないな……)
と、出来上がったそれを色々と持ち替えながら、心の中でそう呟いた。
そんな春風を見て、
「あ、あのぉ……」
と、タイラーが恐る恐るそう声をかけると、
「ん? おっと!」
と、春風は「しまった!」と言わんばかりにハッとなって、
「どうぞ」
と、すぐに出来上がったものをタイラーに差し出したので、
「あ、ありがとうございます」
と、タイラーは戸惑いの表情を浮かべながらもそれを受け取った。
その後、
「タイラーさん。その武器、なんて名前ですか?」
と、春風がそう尋ねてきたので、その質問にタイラーは「え?」と首を傾げた後、
「一応、『魔砲杖』と呼んでますが……」
と答えた。
その答えを聞いて、
「ああ、なるほど。言われてみれば見た目は『杖』に見えなくもないですね。となると、差し詰め『魔力を圧縮してぶっ放す』というのがそいつの基本戦術と言ったところでしょうか?」
と、春風は再びそう尋ねたので、
「っ! よ、よくわかりましたね!」
と、タイラーは大きく目を見開いた。
その様子を見て、春風が「ああ、やっぱり!」と表情を明るくしていると、
「ちょおっとぉおおおおお! 春風何してんのぉ!?」
「あ、兄貴! 今、何やったんですか!?」
「春風さん! あなた魔術だけじゃなく生産系のスキルも持ってたんですか!?」
「春風! お前、戦闘だけじゃなく魔導具も作れるのか!?」
と、レナ、ディック、フィオナ、そしてヴァレリーがもの凄い勢いで詰め寄ってきたので、それに春風は「え?」と首を傾げると、
(しまったぁあああああ! つい好奇心に駆られてなんてことをぉおおおおお!)
と、自分のしたとんでもない行いを激しく後悔した。




