第304話 vs大隊長ギデオン・「白い稲妻」
「なぁ、タイラー」
「何ですかヴァレリーさん?」
「あの野郎、やっぱ気にくわねぇよな?」
「ええ、そうですね。あの男の目、あれは完全に僕達を見下してる目ですね」
と、ギデオンを睨みながら、冷たい口調でそう言い合うヴァレリーとタイラー。そんな2人の言葉を聞いて、アメリアがタラリと汗を流すと、
「おい、アメリアさんよぉ」
と、ヴァレリーがそう声をかけてきたので、それにアメリアが、
「ふあ!? はい!」
と、ビクッとしながら返事すると、
「もうちょっと付き合ってもらうが、いいかい?」
と、ヴァレリーが低い声でそう尋ねてきた。
その時ヴァレリー……いや、ヴァレリーとタイラーの2人から、明らかにただならぬ雰囲気を感じたアメリアは、
「だ、大丈夫です! いけます!」
と、声を張り上げながらそう返事したので、それを聞いたヴァレリーが、
「んじゃ、いくぞ」
と、そう呟くと、アメリアと共に、またギデオンに向かって突撃した。
一方、ギデオンはというと、
「あれは、完全に僕達を見下してる目ですね」
というタイラーの言葉に、
(む、いかんな。目に出てしまっていたか)
と、心の中でそう反省していた。ただし、いい意味ではないが。
そして、自分のもとへと向かって来たヴァレリーとアメリアを見て、
「ま、今は集中せねばならないな」
と、ボソリとそう呟くと、ギデオンは持っていた白い長剣をグッと握り締めて、彼女達の攻撃に備えた。
アメリアが剣による連続攻撃を繰り出す。
それに対して、ギデオンは白い長剣を振るってそれら全ての攻撃を防いだが、その際生まれた隙をついて、ヴァレリーの大剣とタイラーの魔砲杖による攻撃が襲いかかって来たが、ギデオンは特に慌てることなくスーッと息を吸うと、目をクワッと見開いて、
「かぁ!」
と、大声をあげた。
その瞬間、大剣を振るったヴァレリーは吹き飛ばされ、タイラーの攻撃は、まるで最初からなかったかのようにフッと消えた。その際、タイラー本人とアメリアも吹っ飛ばされそうになったが、2人ともそれぞれ武器を地面に突き立ててどうにかその場に踏ん張った。因みに、ヴァレリーも空中で体を回転させて地面に着地した。
その後、3人が一ヶ所に集まってギデオンを睨みつけたが、全員疲労が溜まっているのか、「ぜぇ、はぁ」と肩で息をしている。
しかし、そんな3人とは対照的に、ギデオンは特に疲れた様子もなくしれっとした表情をしていて、おまけに3人がずっと攻撃していたにも関わらず、彼はその場から1歩も動いていなかった。
そんなギデオンを見て、
「……たく、こっちは3人がかりだってのに、向こうは全然余裕かよ」
と、ヴァレリーがそう悪態をつき、
「はは。流石は、歴代最強の大隊長といったところでしょうか」
と、タイラーが頬を引き攣らせながらそう感心していると、目の前のギデオンは「ふ……」と笑って、
「流石は白金級ハンターにして、フロントラルを代表するレギオンのリーダー。そして、裏切ったとはいえ、我ら断罪官の中でも高い能力を有するアメリアといったところか」
と、ヴァレリー、タイラー、アメリアの順に視線を向けながらそう呟くと、
「だが、もうここまででいいだろう」
と、真剣な表情でそう言って、持っている白い長剣の切先を夜空に向けた。
その行動を見て、
(何だ? 何をする気だ?)
と、ヴァレリーがそう疑問に思っていると、
「あ、あれは……あの構えは!」
と、アメリアが顔を真っ青にしたので、
「む! アメリアさん、何か知ってるのですか!?」
と、タイラーがそう尋ねると、それにアメリアが答えるより先に、
「とくと受けよ、我が最大の奥義を!」
と、ギデオンはヴァレリー達に向かってそう言い放った。
次の瞬間、3人に向かって、大きな白い稲妻が落ちた。
さて、ヴァレリー達がギデオンと戦っていた、丁度その頃、
「……よし、ざっとこんなもんかな?」
「そうだね、お母さん」
レナ、ヘリアテス、アデレード、ディック、フィオナはというと、ヘリアテスがぶちのめしたルークと断罪官の隊員達を、全員森の木々に縛り付けていた。それも、ご丁寧に装備をひっぺがしてからで、彼らを縛っているのはレナが用意した縄だ。
勿論、相手は複数いたので、アデレード、ディック、フィオナにも手伝ってもらっていた。
ただ、相手が断罪官だからか、アデレードはともかくディックとフィオナは、隊員達の装備を外す際に、
「「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」」
と、恐怖で顔を真っ青にして何度も謝罪していた。
そして、全員の装備を外し終えた時には、
「「はー、はー……」」
と、ディックとフィオナはダラダラと汗を滝のように流して、辛そうに肩で息をしていた。
その後、ルーク達を森の木々に縛り付けたヘリアテスが、
「ふー、終わった終わった」
と、額の汗を拭う仕草をしながらそう呟いていると、
「お母さん、この装備どうしよう?」
と、レナが断罪官の装備を見ながらそう尋ねてきたので、それにヘリアテスが「そうねぇ……」と呟くと、
「……何処かで売れないかしら?」
と、首を傾げたので、
「「だ、駄目です! 駄目ですよ絶対!」」
と、ハッとなったディックとフィオナが止めに入ったが、
「それでしたら、帝国で買い取れるか父様……皇帝陛下と相談します」
と、アデレードがそう提案してきたので、
「「や、やめてくださいアデレード皇女様!」」
と、ディックとフィオナは今度はアデレードに向かって「待った」をかけた。
その時だ。
ーードォオオオオオン!
『!?』
突然空がピカッと光り出したかと思ったら、遠くの方でまるで何かが落ちたような大きな音がした。
あまりの出来事に、
「な、何ですか今のは!?」
と、フィオナが驚きの声をあげると、
「……」
ヘリアテスは何か嫌な予感がしたのか、
「レナ、先に行って。ここは私達でどうにかするから」
と、レナに向かってそうお願いした。
そして、レナも嫌な予感がしたのか、
「うん、わかった」
と、ヘリアテスに向かってコクリと頷きながらそう返事すると、1人、ダッともの凄い勢いでその場から音がした方へと駆け出した。




