第303話 vs大隊長ギデオン・2人の白金級ハンター
白金級ハンター、ヴァレリー・マルティネス。
レギオン「紅蓮の猛牛」のリーダーを務めている女性で、高い戦闘力と戦闘技術を誇っている。
しかし、彼女がそう呼ばれるようになるまで相当な苦難の連続だった。
何故なら、彼女が成人になった時に授かった職能は、下位戦闘職能の「大剣士」だからで、その名の通り大剣の扱いに長けた戦士系職能の1つなのだが、手に入るスキルはどれも基本的なものばかりなので、上位の戦闘系職能と比べるとどうしても能力面で劣ってしまい、その為ハンターになった当初は他の下位戦闘系職能保持者達同じように、上位の戦闘系職能保持者のハンター達から見下されることが多かったのだ。勿論、見下される理由はそれだけではないのだが。
しかし、そんな苦境に立たされながらも、彼女は諦めなかった。
「下位職能って言ったって、戦えることには変わらないんだ。折角神様から授かった職能なんだし、だったらこいつをとことん極めてやる!」
と、そう意気込んだヴァレリーは、それからも次々と魔物を倒していき、時には自身の体そのものを鍛え、時には大剣で使える様々な技術を身につけていった。
そして、もう1人の白金級ハンター、タイラー・ポッター。
「魔工技師」の職能保持者の両親のもとに生まれ、幼い頃から両親の仕事を見続けていた彼には、誰にも言えない「悩み」があった。
彼自身、両親が「魔工技師」だから、自分も「魔工技師」の職能を授かるだろうと考えてはいたが、実は密かに戦闘系職能を持つことへの憧れを抱いていたのだ。
その理由は、タイラーが幼い子供だったある日、魔物に襲われていたところをハンターに助けらて、そのハンターが戦闘系職能を持っていたのを知った彼は、
「もし自分に戦闘系職能が授かったら、あの人のように魔物から人を守るハンターになりたいな」
と、考えるようになった。勿論、「魔工技師」の職能保持者である両親のことは尊敬していたので、その考えは誰にも言わないようにしていた。
そして、15歳になって神々から「魔工技師」の職能を授かり、両親は大喜びし、タイラー自身も「やっぱりね」と一応喜んではいたが、心の何処かでは、
(戦闘系職能じゃなかったか)
と、とても残念に思っていた。
だがある日、両親が新たな仕事として、魔力を砲弾に変えて撃ち出す「魔導砲」の研究と開発を請け負ってきたので、タイラーもその開発を手伝うことになり、共に魔導砲を作っていた、まさにその時、
(あれ? もしかしてこの技術を応用すれば、僕専用の武器が出来るんじゃ?)
と、そう考えたタイラーは、両親に内緒で魔導砲の技術を使った自身の武器の開発を始めた。
数多くの失敗の末、出来上がったのは、自身の魔力を圧縮して撃ち出す機能を持つ、持ち運びが出来るくらいにまで小型化した魔導砲で、見た目が杖のように見える為、タイラーはその武器を「魔砲杖」と名づけることにした。
その後、出来上がったその魔砲杖の性能を確認すると、タイラーはそれを携えて中立都市フロントラルに行き、そこで「ハンター」となった。
それから様々な仕事をこなしていったタイラーは、その最中にヴァレリーと出会い、以降はお互い良きライバルとして、その腕を競い合っていった。
やがてハンターとして成長していった2人は、それぞれ独自のレギオンを設立した。
1つはヴァレリーをリーダーとする「紅蓮の猛牛」で、
「下位の戦闘系職能保持者達が見下されることもない場所を作る!」
という強い信念のもとに生み出されたこのレギオンには、その信念のもとに数多くの下位の戦闘系職能保持者が多く集まってきて、皆、ヴァレリーのことを心から慕っている。
もう1つはタイラーをリーダーとする「黄金の両手」で、こちらはというと、
「生産系職能保持者でも、魔物から人々を守ることが出来る!」
というタイラーの信念のもとに生み出されたレギオンで、こちらも多少の戦闘系職能保持者はいるが、入ってきたメンバーの多くは生産系職能保持者がかなり多く、こちらも戦闘系職能保持者に負けないくらいの大活躍をしていった。
そんな感じで生まれたこの2つのレギオンは、時には協力し、時にはライバルとして競い合ったりなどしていって、そうこうしていくうちに、やがてこの2つはフロントラルを代表する大手のレギオンへと成長していった。
そしてそれと同時に、その2つのレギオンと共に成長していったヴァレリーとタイラーは、ハンターギルドからの厳しい試験をクリアして、見事、最高ランクである白金級ハンターとなったのだ。
そして現在、その白金級ハンターへと成長したヴァレリーとタイラーは、断罪官大隊長ギデオン・シンクレアと戦っている。
「下位職能『大剣士』のヴァレリーと、生産系職能『魔工技師』のタイラー」
と、ギデオンから自分達のことでそう言われて、ヴァレリーとタイラーが露骨に不機嫌な表情をする中、
「あ、あの……今、大隊長が言ってたのって……」
と、アメリアが恐る恐る2人に声をかけると、
「ああ、事実だよ」
「ええ、間違いありません」
と、ヴァレリーもタイラーも「はぁ」と溜め息を吐きながらそう答えて、
「なぁ、タイラー」
「何ですかヴァレリーさん?」
と、2人がお互いそう言い合うと、
「あの野郎、やっぱ気にくわねぇよな?」
と、ヴァレリーはギロリと目の前のギデオンを睨みながらそう尋ねて、
「ええ、そうですね。あの男の目、あれは完全に僕達を見下してる目ですね」
と、タイラーもギデオンを睨みながら、冷たい口調でそう答えた。




