第301話 遭遇、断罪官・アメリア編
ヘリアテスがルーク達断罪官を相手にしていたその一方、ヴァレリー、タイラー、そしてアメリアの3人はというと、今まさに、断罪官大隊長ギデオンと対峙していた。
「ギデオン……大隊長」
「ふむ。無事で何よりだな、アメリアよ」
震えた声でギデオンの名を口にするアメリアに対して、ギデオン本人は落ち着いた口調でそう返事した。
そんな2人の間に割って入るように、
「おいおい、大隊長さんよぉ……」
「我々のことは無視ですか?」
と、ヴァレリーとタイラーが、ギロリとギデオンを睨みながらそう言うと、
「おお、白金級ハンター2人も一緒とはな。これは失礼した」
と、ギデオンは今になって2人の存在に気が付いたような態度で謝罪しながらそう言ったので、
「は! これはこれは……」
「舐められたものですねぇ」
と、2人は若干苛立った様子でそう呟いた。
しかし、ギデオンはそんな2人に構わず、
「それにしても、いるのはアメリア、貴様だけで、『異端者』の妹と獣人の少年はいないみたいだな」
と、アメリアの周りを見ながらそう言ったので、
「……そういうギデオン大隊長こそ、見たところ貴方1人だけのようですが?」
と、アメリアはタラリと汗を流しながら、緊張した様子でギデオンに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、ギデオンは「む?」と反応すると、
「そうだな。妙な空間に落ちたと思ったらこれまた妙な光に包まれて、気付いた時には森の中に私1人だけときたものだ」
とそう言って、最後に「はぁ」と溜め息を吐いた。よく見ると、表情も何処か暗そうだった。
そんな様子のギデオンを見て、アメリア達は「マジですか」と言わんばかりにタラリと汗を流したが、
「だがしかし、こうして『裏切り者』のアメリアを見つけた以上、断罪官大隊長として、貴様を偉大なる5柱の神々のもとへと送ってやろう。そして、その後は『異端者』の妹と獣人の少年、それから『邪神ヘリアテス』とその娘である『白き悪魔』、更にあの可憐な少女のような顔をした忌まわしき少年を葬り、最後はフロントラルの住人全てを殺す、皆殺しだ」
と、ギデオンはキリッとした表情でそう言うと、腰のベルトに下げた長剣をゆっくりと鞘から引き抜いた。
純白の刀身が、夜空で輝く月の光を浴びて、キラリと美しく光る。
そんな美しき白い長剣を構えるのは、漆黒の鎧を纏ったギデオンという男。
長剣を構えたギデオンから尋常じゃないプレッシャーを感じたのか、アメリアもヴァレリーもタイラーも、ブルリと全身を震わせたが、
「……はは、『皆殺し』とは随分な言い草だな」
と、ヴァレリーはニヤリと笑いながらそう言い、それに続くように、
「ええ。そんなこと、させる訳がないでしょう」
と、タイラーもヴァレリーと同じようにニヤリと笑いながら言った。
その後、
「あ、あの……」
と、アメリアがヴァレリーとタイラーに声をかけたが、ヴァレリーはスッと右手を上げると、
「アメリアさんよぉ。悪いが下がっててくれないか?」
と、目の前にいるギデオンを見つめながらそう言い、それからすぐに、ヴァレリーは背中に背負った大剣を手にすると、その切先をギデオンに向けて、
「こいつは、ここで倒す!」
と言い放った。
その言葉を聞いて、ギデオンが「ほう……」と声をもらすと、
「な、何を言ってるのですか!?」
と、アメリアがギョッと目を大きく見開きながらそう尋ねてきたので、
「聞こえませんでしたか? 『この男はここで倒す』と、彼女はそう言ったのですよ」
と、ヴァレリーではなくタイラーがそう答えた。
しかも、ヴァレリーと同じようにギデオンを見つめた状態で、である。
そして、アメリアの質問に答えたタイラーも、ヴァレリーと同じく自身の「武器」を手に取ると、それをギデオンに向かって構えた。
それは、一見物語とかに登場する魔法使いなどが扱う木製の長い杖なのだが、柄の部分には金属で作られたと思われる長い筒が取り付けられていた。
そんなタイラーの武器を見て、ギデオンが「む?」と目を細めていると、
「だ、駄目です! お2人は逃げてください! 大隊長は恐ろしく強い方なのです! 私が時間を稼ぎますから、その間に……!」
と、ヴァレリーは大慌てで2人に向かって「待った」をかけ、最後に「逃げろ」と言おうとしたが、
「いや、無理ですよ。あの男はどう見ても逃がしてくれそうにないですし、それに……」
と、タイラーは首を左右に振りながらそう拒否すると、
「『中立都市フロントラル』は、我々にとって大切な故郷のようなものですからね。そんな大切な場所を滅ぼすなどと聞かされて、黙っていられる訳がないでしょう!?」
と、最後に怒鳴るようにそう付け加えた。特に台詞の最後の辺りから強い「怒り」を感じたのか、アメリアは思わず「うぅ」と呻きながら後ろに下がった。
そんなアメリアを他所に、
「ほう。それでこの私とやり合うつもりか?」
と、ギデオンがヴァレリーとタイラーに向かってそう尋ねると、
「当然だろう」
「ええ。貴方にどんな『信念』があるのかわかりませんが、こちらだって譲れない想いがあるんですよ。その想いを貫き、我々の大切なものを守る為に、貴方はここで、倒させてもらいます」
と、2人は真剣な表情でそう答えた。
その答えを聞いて、アメリアは「覚悟」を決めたかのような表情を浮かべると、ヴァレリーとタイラーの間に立って、
「わ、わかりました……私も一緒に戦います!」
と、腰のベルトに下げた剣を引き抜き、それを構えながらそう言った。
その言葉に対して、
「いいのかい?」
と、ヴァレリーがそう尋ねると、アメリアはコクリと頷いて、
「私にも、守りたいものがありますから。ですから、ここで死ぬ訳にはいきません」
と、意を決したかのような口調でそう答えたので、その答えにタイラーは「ふふ」と笑った。
そして、そんな3人を前に、
「そうか。それが貴様らの答えか……」
と、ギデオンはそう呟くと、
「よかろう。ならば、3人纏めて殺してやろう」
と、白い長剣を構え直した。




