第299話 遭遇、断罪官・レナ編
春風、ニーナ、ピートの3人が、レナ達と合流する為に動き出した丁度その頃、レナ達はというと、
「だ、断罪官……」
「嘘……でしょ?」
今まさに、断罪官に遭遇していた。
ただ、
「あら? 『ギデオン』っていう人はいないみたいね」
と、ヘリアテスが軽い口調でそう言ったように、目の前にいる断罪官の中には、大隊長であるギデオンの姿だけがなかったので、
「多分、私達と同じようにバラバラになっちゃったんだと思う」
と、レナはそう推測した。
しかし、ふとレナがチラッとディック、フィオナ、アーデに視線を向けると、
「「あわわわわわ……」」
と、ディックとフィオナは断罪官を見てガタガタと震えていて、
「……」
アーデは目の前の断罪官に鋭い眼差しを向けながら、タラリと汗を流していたので、
「うん、まとも動けるの、私とお母さんだけみたい」
と、レナは小声でそう呟き、
「どうやら、そのようね」
と、それを聞いたヘリアテスはコクリと頷きながらそう返事した。
一方、断罪官側はというと、
「ま、まさか、ここで『邪神』の1柱に出会うとは……」
「おまけに、その『邪神』に育てられた『悪魔』まで……」
「く、大隊長がいないこんな時に!」
と、ヘリアテスとレナを前に隊員達は表情を強張らせて、その内の1人が、
「ど、どうしますか副隊長?」
と、先頭に立つ若い騎士ーー「副隊長」のルークに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、ルークはゆっくりと深呼吸すると、
「狼狽えるな。例え相手が何者だろうと、偉大なる5柱の名の下に討伐するのが、我ら断罪官の使命だ。そうだろう?」
と、レナ達に視線を向けたまま隊員達にそう尋ね返したので、その質問に隊員達はハッと我に返った後、全員コクリと頷いた。
そんなルーク達を見て、ヘリアテスは「ふむ……」と声をもらすと、1歩前に出て、
「ねぇ、断罪官とやらさん達。出来れば、このまま通してくれると嬉しいんだけどなぁ」
と、ルーク達に向かってそう言ったので、その言葉にピキッとなったのか、
「ふざけるな『邪神』が! 貴様など、この私ルーク・シンクレアと勇敢なる断罪官の隊員達が成敗してくれるわ!」
と、腰のベルトに下げた剣を鞘から引き抜き、それを構えながらそう怒鳴り、そんなルークに続くように、隊員達もそれぞれ武器を構えた。
すると、
「ルーク・シンクレア……」
と、ヘリアテスがルークの名前を呟くと、レナ達の方へと振り向いて、
「えっと、誰か知ってる人、いる?」
と、尋ねた。
その質問を聞いて、レナが「ん?」と首を傾げ、ディックとフィオナが「ふえ!?」とビクッとすると、
「……断罪官副隊長ルーク・シンクレア。大隊長ギデオン・シンクレアの息子です」
と、アーデがルークを睨みながらそう答えたので、
「へぇ、息子さんなんだ!」
と、ヘリアテスはそう言うと、再びルーク達の方を向いて、ジッとルークを見つめると、
「……うん、若いのに相当な実力者だってのがよくわかったわ」
と、真面目な表情でそう言ったので、
「何!? 貴様、『鑑定』でも使ったのか!?」
と、驚いたルークはそう尋ねたが、
「はぁ? あいつらに『力』の殆どを奪われたとはいえ、『女神』である私を舐めないでよね」
と、ヘリアテスは挑発するかのようにそう返事したので、その時何かを感じたのか、ルーク達断罪官は更に表情を強張らせて、武器を握る力を強くした。
すると、アーデは意を決したかのように前に出て、
「断罪官、武器を納めなさい」
と、まるで命令するかのようにルーク達に向かってそう言い放った。
その言葉を聞いて、レナ達は「え?」と首を傾げたが、逆にルークは落ち着いた表情で、
「アデレード皇女様、貴方こそ我らの任務の邪魔をするのですか?」
と、アーデに向かってそう尋ねてきたので、
「え、何? どういうこと?」
と、レナがその質問に戸惑っていると、
「知らんのか『白き悪魔』よ……」
と、ルークがチラッとレナを見ながらそう言って、
「そのお方はストロザイア帝国皇女、アデレード・ニコラ・ストロザイア様だ」
と、最後にアーデ……否、アデレードを見てそう付け加えた。
それを聞いて、
「「えええええ!?」」
と、ディックとフィオナが驚きに満ちた叫びをあげて、
「あ、そうなんだ」
「へぇ、お姫様だったのね」
と、レナとヘリアテスは落ち着いた表情でそう言ったので、
「……」
アーデは無言で頬を少し赤くした。
そんなレナ達を前に、
「アデレード皇女様、我々とて貴方に武器を向ける気はありません。しかし、その『邪神』の味方をするというならば、我々は断罪官として、貴方も5柱の神々のもとに送らねばなりません」
と、ルークはアデレードに向かって警告するかのようにそう言ったので、それを聞いたアデレードは「はぁ」と溜め息を吐くと、
「何を今更。私が貴方達の目的である『異端者』達と共にいた時点で、私も既に討伐の対象でしょうが」
と、鋭い眼差しをルークに向けながらそう言い返した。よく見ると、その手はアデレードの武器である双剣の柄に触れていたので、
「く。それが貴方の答えなら……」
と、ルークは「仕方ない」と言わんばかりに、剣の柄を握る力を強くした。
すると、
「ちょっといいかしら?」
と、ヘリアテスが「はい」と手を上げながらそう言ったので、
「お母さん、どうしたの?」
と、レナがそう尋ねると、
「ここは、私に任せてほしいの」
と、ヘリアテスはレナに向かって笑顔でそう答えたので、その答えに誰もが「え? え?」と戸惑っていると、
「……て、お母さん! お母さんだけであいつらと戦う気!?」
と、レナはハッとなって再びそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「「「ええ!?」」」
と、アデレード、ディック、フィオナの3人がそう驚き、
『なぁにぃ!?』
と、ルーク達断罪官が「怒り」に満ちた表情になったが、
「心配しないでレナ。『家族』を守る為なら、お母さん負けないから」
と、ヘリアテスは「ふふ」と笑いながらそう言ったので、
「お、お母さん……」
と、レナはヘリアテスの言葉にジーンと感動した。
そんなレナを見た後、ヘリアテスはまた「ふふ」と笑った後、ルーク達の方を向いて、
「さぁ、坊や達、相手になってあげるわ」
と、右手をクイックイと動かしながら、彼らに向かって挑発するかのようにそう言った。




