第291 話 断罪官、現る
本日2本目の投稿です。
時は少し前に遡り、春風達がヘリアテスのいる空間で話し合いをしていた、丁度その頃。
断罪官大隊長ギデオンは、副隊長のルークと数人の隊員達と共に、フロントラルから離れた森の中を進んでいた。
それから少しして、開けた場所(もっと言えば先ほどまで春風達がヴァレリー達と再会した場所なのだが、ギデオン達はそれを知らない)に出ると、
(む?)
と、何かを感じたのか、
「全員、止まれ」
と、ギデオンは隊員達にそう命令し、隊員達はそれに従ってその場にピタッと止まった。
その後、ギデオンは開けた場所の中央に立つと、警戒するかのように辺りを見回し始めたので、
「大隊長、どうしたのですか?」
と、気になったルークが、ギデオンに向かってそう尋ねると、ギデオンはそれに答えず、とある方向をジッと見つめると、中央から2、3歩ほど歩いて、再びその場にピタッと止まった。
そして、右手をスッと上げて、何もない空中でそれを止めると、
「『歪み』があるな」
と、ギデオンはボソリとそう呟いて、すぐに右手を引っ込めると、今度は腰のベルトに下げた長剣を鞘から引き抜いた。
柄から刀身まで真っ白な長剣が、月の光を浴びて、その美しさを増していく。それを見て、ルークと隊員達がゴクリと唾を飲む中、ギデオンは両手で長剣の柄をグッと握り締めると、ゆっくりと目を閉じた。
次の瞬間、白い刀身が更に白く輝き出して、それを見たルークと隊員達が思わず「眩しい!」と言わんばかりに腕で顔を覆う中、ギデオンは白い光を放つ長剣を真っ直ぐ構えた。
そして、
「ふん!」
と、叫ぶと共に、ギデオンは何もない空中に向かって白い長剣による「突き」を繰り出すと……。
ーーズン!
という奇妙な音と共に、白い長剣の切先が消えたので、
『な!? こ、これは!?』
と、ルークと隊員達はギョッと目を大きく見開いたが、ギデオンはそれを無視して、切先を失った白い長剣を、まるで何かを斬り裂かくかのようにズズズと下に動かした。
すると、何もない空中の筈だったのに、そこには大きな裂け目が出来たので、
『な!? こ、これは!?』
と、ルークと隊員達が再びギョッと目を大きく見開く中、
(ふむ、やはりな)
と、ギデオンは何かを察したかのようにニヤリと笑うと、白い長剣を鞘に納めて、今度はその裂け目を両手で掴むと、無言でそれを大きく広げた。
すると、
(見つけた)
裂け目の向こう側には数人の男女がいて、その中の1人が、
「あ……あなたは、ギデオン大隊長!?」
と、ギデオンを見て顔を真っ青にしたので、
「久しぶりだな。アメリア・スターク」
と、ギデオンはその人物、アメリアに向かってそう言った。
そして現在、
「久しぶりだな。アメリア・スターク」
と、突如現れたギデオンに、
「「あ……あぁ……」」
と、アメリアと妹のフィオナは恐怖のあまり顔を真っ青にし、
「アメリアお姉ちゃん! ニーナお姉ちゃん!」
と、ピートはすぐにそんな状態のアメリアとニーナを庇うように彼女達の前に出て、
「おいおい、こいつ今何したんだ?」
「わ、わかりません。まぁ、あの剣で空間を斬り裂いてここに来たことだけはわかりますが……」
「いや、それが訳わかんねぇんだって!」
と、ヴァレリーとタイラーはタラリと汗を流しながらコントじみた会話をし出して、
「「……」」
ディックとフィオナは体をガタガタと震わせ、
「ギデオン……シンクレア」
と、アーデもヴァレリーとタイラーと同じようにタラリと汗を流しながら、目の前にいるギデオンを睨みつけた。
そして、春風はというと、
(く! なんて最悪のタイミングだよ!)
と、ギデオンの登場に心の中でそう悪態を吐き、
「お母さん、私の後ろに」
と、レナは小声でそう言うと、ヘリアテスを自分の後ろに移動させた。
一方、ギデオンはというと、
「ふむ、『裏切り者』のアメリアと、その妹にして『異端者』のニーナ、そして……ほう、報告に出てきた獣人の少年もいるな」
と、アメリア、ニーナ、そしてピートを見て確認するかのようにそう呟き、その視線を受けて、
「ひ!」
と、ピートは小さくそう悲鳴をあげたが、それでもアメリアとニーナの前から動こうとせず、寧ろキッとギデオンを睨みつけてきたので、
「ほう、幼いながら勇気ある少年ようだな」
と、ギデオンはそう感心すると、自身が広げた裂け目から少し離れて、
「お前達、入っていいぞ」
と、その裂け目の向こう側に向かってそう言った。
すると、裂け目からルークをはじめとした断罪官の隊員達が次々と現れたので、
「うげ!」
「これは……断罪官集結というやつですか」
と、ヴァレリーとタイラーは険しい表情を浮かべながらそう呟いた。
一方、裂け目から出てきたルーク達はというと、
「こ、ここは一体……?」
と、ルークが先ほどまで自分達がいた森とは違う雰囲気をした場所を見回しながらそう呟いたので、
「見惚れる気持ちはわかるが、今は任務中だ」
と、ギデオンが親指をアメリア達に向けながらそう注意した。それを聞いて、ルークと隊員達は「え?」と一斉に親指が刺し示した方向を見ると、
『あ!』
と、その先にはアメリア達がいたので、
「う、『裏切り者』のアメリア・スタークと、『異端者』ニーナ・スターク! そして、『悪しき種族』の獣人!」
と、ルークはアメリア達を睨みながらそう言い、それに続くように、
「お、おまけに、『白金級ハンター』のヴァレリー・マルティネス!」
「同じく『白金級ハンター』のタイラー・ポッターもいるぞ!」
と、隊員達がヴァレリーとタイラーを見て驚きの声をあげたが、
「ウオッホン!」
と、ギデオンがそう咳き込んできたので、
『失礼しました、大隊長!』
と、それを見たルークと隊員達はすぐにギデオンに謝罪した。
すると、
「お前ら……何でここにいる? というか、どうやってここまで来た!?」
と、ヴァレリーがギデオン達を睨みながら尋ねてきたので、それにギデオンが「む?」と反応すると、
「そうだな。色々と要因はあるが、しいて言えば……」
と、「うーん」と呻きながらそう呟き、
「貴様の存在が大きいな、春風・スカーレット」
と、チラッと春風を見ながらそう答えた。
その答えから数秒後、
「……はい?」
と、春風は「何言ってんだお前?」と言わんばかりに、目を大きく見開きながら首を傾げた。




