第286話 まさかの事態、再び?
それから少しして、グラシア、アメリア、ニーナ、ピートは春風、レナ、ヘリアテスが待つログハウス内へと戻った。
「もう大丈夫ですか?」
と、春風がグラシアに向かってそう尋ねると、
「はい、私はもう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
と、グラシアは深々と頭を下げて謝罪し、それからスーッと春風の左腕に装着された銀の籠手に入った。
ただ、その様子を見て、
「え、待ってくれ、なんでそこに?」
と、アメリアがギョッと目を大きくしたが、
「あー。これ、特別製なんですよね」
と、春風は「ははは」と苦笑いしながらそう答えたので、
「「「と、特別製?」」」
と、アメリアだけでなくニーナとピートまでもがポカンとした表情になり、それからすぐにアメリアはハッとなって、
「いやいやいや! そんな説明だけで……!」
と、「納得出来るか!」と言わんばかりの勢いで春風に詰め寄ろうとしたが、
「おっほん!」
と、ヘリアテスが何やらわざとらしく咳き込んできたので、その場にいる者達全員がヘリアテスの方へと振り向くと、
「えー。取り敢えず、あなた達の『事情』は理解出来たから、次にこれからのことについて聞きたいんだけど、いいかな?」
と、ヘリアテスが真面目な表情でそう尋ねてきたので、
「は、はい、大丈夫です」
と、アメリアはコクリと頷きながら答えた。
その後、全員の気持ちが落ち着いてきたところで、
「それで、これからあなた達はどうする気なの?」
と、まずはヘリアテスがアメリア、ニーナ、ピートの3人を見ながらそう尋ねると、アメリアはニーナ、ピートの順に視線を向けて、最後にヘリアテスに向き直ると、
「そうですね。フロントラルであれだけ騒ぎを起こしてしまいましたから、もうあそこにいることは出来ません。ですから、私達はこのまま旅を続けようと思います」
と答え、それに続くように、ニーナとピートもコクリと頷いた。
それからすぐに、
「春風君、君を巻き込んですまなかった。出来れば君を連れて出たかったけど、女神様の娘さんを怒らせてしまった以上、それも出来なくなってしまったから、君とはここでお別れになるだろう」
と、アメリアは春風に向かって謝罪しつつそう言うと、
「そうですね。アメリアさん達のことは心配ですが、フロントラルにはお世話になった人達がいますし、その人達のことを考えると、大変申し訳ないのですが……」
と、春風は本当に申し訳なさそうな表情でそう言い、最後に「すみません」とアメリア達に向かって謝罪した。
そんな春風達を見て、ヘリアテスは「ふむ……」と考え込むと、
「どちらにしても、まずは外の様子を確かめないといけないわね。きっと向こうでは騒ぎなってると思うし」
と、真面目な表情を崩さずにそう言ったので、それを聞いた春風達は無言でコクリと頷いた。
そして、全員がログハウスの外に出ると、
「みんなー、集まってー!」
と、ヘリアテスが何もない空間に向かってそう号令みたいなのをかけた。
それを聞いたアメリア、ニーナ、ピートが「え?」と首を傾げると、ヘリアテスの周りに、赤、青、オレンジ、緑色の光を放つ大小様々な「精霊」達が現れたので、
「え!? な、何ですか!?」
と、アメリアがギョッと目を大きく見開くと、
「ああ、この子達は『精霊』っていって、死んだ『妖精』の力の一部が姿形を得たものなの。でもって、私の大切な『家族』で、『友達』なんだ」
と、レナが笑顔でそう説明し、それを聞いたアメリアが「ええ!?」と再び大きく目を見開いた。因みに、ニーナもアメリアと同じように目を大きく見開いていた。
すると、
「それってつまり、『妖精』の生まれ変わりみたいなものってことなの?」
と、ピートがそう尋ねてきたので、
「うん、そういうことになるかな」
と、その質問にヘリアテスがそう答えると、
「じゃあ、僕達『獣人』も、死んだら何かに生まれ変わったりするんですか?」
と、ピートが不安そうな表情で再びそう尋ねてきた。
その質問に対して、ヘリアテスが「それは……」と答えようとしたその時、レナがピートの肩にポンと手を置いて、
「うん、きっと生まれ変わってるよ。それが何なのかはまだ私も知らないけど、もしかしたら、『獣人』としての直感が働いて、すぐ見つかるかもしれないしね」
と、明るい口調でそう言ったので、それを聞いたピートは目をパチクリとさせたが、すぐに「ふふ」と小さく笑って、
「そうかも、しれませんね」
と、レナに向かって笑顔でそう言った。
その言葉を聞いて、ヘリアテスだけでなく春風もホッと安心すると、ヘリアテスは目の前の精霊達に向き直って、
「じゃあみんな、お願い」
と、精霊達にそうお願いした。
次の瞬間、精霊達は一斉に白く輝き出したので、その光に思わずアメリア達は「眩しい!」と腕で目を覆った。
そして、その白い光が弱まると、ヘリアテスの目の前に白い扉が現れたので、
「あ、私達が通った扉……」
と、ニーナがボソリとそう呟いた。
そんなニーナを前に、
「一応、場所は今日私達が合流した森の中で設定しておいたけど……」
と、ヘリアテスが恐る恐るそう言ったので、
「それじゃあ、まずは俺が外の様子を見てきます」
と、それを聞いた春風は「はい」と手を上げながら言った。
その言葉にヘリアテスだけでなくレナもコクリと頷き、
「春風様、気をつけてください」
と、左腕の銀の籠手……正確に言えばその内部に装着されたマジスマ内のグラシアもそう声をかけてきたので、その声を聞いた春風は無言でコクリと頷くと、白い扉ののぶをグッと握り、それをガチャリと動かして、ゆっくりと扉を開いた。
そして、春風が恐る恐る扉を開けながらその向こう側を見ると、
「よう」
そこには、レギオン「紅蓮の猛牛」のリーダーであるヴァレリーがいた。
いや、ヴァレリーだけではない。
「やぁ、遅かったね」
レギオン「黄金の両手」のリーダーであるタイラーや、
「あ、兄貴!」
「春風さん!」
紅蓮の猛牛メンバーである双子の兄妹、ディックとフィオナに、
「春風……」
タイラーの助手であるアーデもいたので、その姿を見た春風は目をパチクリとさせると、
「間違えました、ごめんなさい」
と謝罪しながら、すぐにその扉を閉めた。




