第284話 グラシアとアメリア
本日2本目の投稿です。
レナとヘリアテスの実家であるログハウス。
そのログハウスの外にある湖の畔で、
「はぁ……」
今、グラシアは1人、浮かない顔で溜め息を吐いていた。
その理由は1つ、アメリア達の話を聞いて、グラシアの中で、ある複雑な想いが芽生えたからだ。
そのことを考えて、グラシアは1人、ログハウスの外でどうしたものかと悩んでいたが、悩めば悩むほど答えが見つかることはなく、
「本当に、どうしたものかしら」
と、グラシアは表情を暗くしながら、湖面に映った自分の顔に向かってボソリとそう呟いた。
その時だ。
バンッと大きな音を立てて、ログハウスの玄関の扉が開かれたので、思わずグラシアはビクッとなってログハウスの方を見ると、
「あ、アメリアさん?」
「……」
そこには、何やら顔を真っ青にしたアメリアがいたので、彼女の様子を見て、グラシアは「何事か!?」と警戒していると、
「ぐ……グラシア……さん」
と、アメリアは顔を真っ青にしたままグラシアの名前を呼んで、その後、今にも倒れそうなほどフラフラしながら、ゆっくりとグラシアに近づいた。
そんな彼女に向かって、
「どうかしたのかしら?」
と、グラシアは警戒しつつも、平静を装ってそう話しかけると、アメリアはグラシアのすぐ傍で立ち止まって、
「……ヘリアテス様達から、あなたのことを聞きました」
と、視線をグラシアの足もとに向けながらそう返事したので、それを聞いたグラシアは「う……」と唸った後、
「……そう。聞いてしまったのね」
と、ボソリとそう呟くと、
「そうよ。私は、かつて固有職保持者だった。そして、17年前にあの男、ギデオン・シンクレアに殺されたの」
と、アメリアに向かって真剣な表情でそう言った。
その言葉を聞いて、
「だ、大隊長に……」
と、アメリアは震えた声でそう呟くと、
「わ、私……!」
と、グラシアに向かって何か言おうとしたが、
「やめて!」
と、それを遮るかのようにグラシアがそう口を挟んだので、アメリアは思わずビクッとなって黙ってしまった。
そんなアメリアを見て、
「あなたの話は十分聞いたわ。でも、悪いけどそれ以上は聞きたくないの」
と、グラシアは冷たい口調でそう言うと、
「で、ですが……!」
と、アメリアは顔を上げて反論しようとしたが、
「やめてって言ってるでしょ! 奪う側の人間が!」
と、グラシアはそんなアメリアを遮るように怒鳴った。
その言葉を聞いて、アメリアはピキッとなったのか、
「違います! 私は……私は!」
と、顔を真っ赤にしながら怒鳴り返したが、
「ええ、そうね! あなたには、絶対に守りたい『大切なもの』があった! そして、それを守る為に、あなたは多くの人を殺し、最終的には仲間を裏切ってその手にかけた! そうでしょ!?」
と、グラシアに問われるように更に怒鳴り返されて、
「そうです! 私には、守りたいものがあります! だから、それを守る為なら……!」
と、アメリアも負けじと怒鳴り返そうとしたが、
「でもね!」
と、グラシアが割り込んできて、
「でもね……幾らあなたに理由があったって、幾ら奴らを裏切ったからって、あなたが『断罪官』の隊員としてやってきたことは消せないのよ! それこそ、死ぬまでね!」
と、その更に上を行くような怒声を、アメリアに浴びせた。よく見ると、その瞳からは一筋の涙が流れていたので、
「う……それは……それは……」
と、アメリアは再び顔を真っ青にすると、それ以上何も言えなくなってしまい、
「だったら……私は、どうすればよかったんですか?」
と、それでもどうにか声を絞り出して、グラシアに向かって弱々しくそう尋ねると、
「お、教えください……教えてよ」
と、最後は力尽きたように、ゆっくりとその場に膝から崩れ落ちた。
そんなアメリアを見て、グラシアはゴシゴシと涙を拭うと、
「……私だって、わかってるわよ。あなたもあなたで、『断罪官』の隊員として辛い想いをして、やり方はどうであれ、あいつらにだって『目的』や『理由』があって、私達『固有職保持者』の中には悪い奴だっていて……」
と、若干「怒り」が籠ってはいるが落ち着いた口調でそう言い、その言葉にアメリアが「あ……」と反応すると、
「それに私自身も、一度はあいつらに復讐してやろうと考えたけど、あいつらの強さを恐れて結局やめちゃったわ。だから、本来ならこんなこと言う資格なんてないってこともわかってるの。でもね……」
と、グラシアは右手で自身の左腕をグッと掴みながら話を続けて、
「それでも……私は断罪官が許せない。だって、私はあいつらに……大切なものを奪われたのだから」
と、最後に震えた声でそう付け加えた。
その言葉を聞いて、アメリアも涙を流すと、
「……ご、ごめん……なさい」
と、グラシアに向かって深々と頭を下げて謝罪したが、
「やめてよ。言ったでしょ? 私はこれ以上話を聞きたくないし、私自身だって今更どうこう言う資格なんてない」
と、グラシアは拒絶するかのようにそう返事すると、
「ううん、それ以上に、今の私はただの浮遊霊。『固有職能』もなければ、生前に身につけてきた『スキル』もない。そんな、無力な存在なのよ」
と、最後は苦笑いしながら自嘲気味にそう付け加えた。
そんなグラシアの言葉に、
「そ、それは……」
と、アメリアが何か言おうとしたが、
「だから、あなた達がこれからどうするかはあなた達で決めて。でも、私個人は、あなた達にはこのまま春風様とレナ様、そしてヘリアテス様の前から消えてほしいって思ってるの。出来れば、ギデオン達に見つかる前にね」
と、グラシアはまた遮るかのように自身の要求を言ってきたので、
「ぐ、グラシア……さ……」
と、アメリアがグラシアに向かって何か言おうとした、まさにその時、
「「あ、あの!」」
と、アメリア背後で2人分の声がしたので、それを聞いたグラシアとアメリアはすぐに声がした方へと振り向くと、
「あ、ニーナ……ピート」
そこには、緊張しつつも何か強い決意を秘めた表情をした、ニーナとピートがいた。




