第280話 「異端者」2人と「裏切り者」の話・最悪のタイミング
今回もいつもより長めの話であると同時に、残酷な部分もあります。
ニーナ達の目の前で、ケネスによって殺害された村長。
そのあまりにも残酷すぎる殺され方に、ニーナは勿論、ニーナの両親までもが「恐怖」で顔を真っ青にする中、
「さーてと。次はあなたの番よ、ニーナ・スターク」
と、ケネスが笑顔でニーナに向かってそう言ったので、それを聞いたニーナは思わず「ひっ!」と悲鳴をあげると、
「うわぁあああああああっ!」
と、ニーナの隣にいるピートが、「獣」の姿に変身しながらそう叫んだ。
その叫びを聞いて、
「ぴ、ピート……」
と、ハッとなったニーナがそう口を開いたが、それを無視するかのように、ピートはそれまで自身を押さえつけていた男性を突き飛ばして、
「あああああっ!」
と叫びながら、目の前にいるケネスに向かって突撃し、彼に向かって右ストレートを繰り出した。
それを見て、
「あらあら……」
とケネスは落ち着いた表情でそう声をもらすと、持っている大鎌の柄の部分で、ピートの右ストレートを防御した。
「っ!」
攻撃を止められたピートは大きく目を見開いたが、それでも勢いは止まらず、
「うあああああ!」
と、止められたにも関わらず、強引に右拳を前に突き出した。
その瞬間、
「うおっと!」
ケネスは防御の体勢のまま後ろに飛ばされたので、すぐに空中で体を回転させると、まるで何事もなかったかのようにスタッと地面に着地した。
その後、
「へぇ、これが『獣人』の一撃なのね。まだ子供とはいえ大したものだわ……」
と、ピートの攻撃を受けたケネスがそう感心していると、
「何でだよ!」
と、ピートがそう怒鳴ってきたので、それにケネスが「ん?」と反応すると、
「何で……ここまで出来るんだよ!? 同じ人間なのに……どうしてこんな簡単に殺せるんだよ!?」
と、ピートはケネスに向かって怒鳴りながら尋ねた。よく見ると、その目からは涙が流れていたので、
「ふふ。優しいのね、獣人の坊や」
と、ケネスは笑いながらそう呟いたが、その後すぐにフッと表情を変えて、
「でもね、同じ人間だからこそ、時にはこうして殺さなきゃいけないこともあるのよ。たとえ、多くの人達に恐れられることになっても、ね」
と、冷たい口調でそう言うと、持っていた大鎌を構え直した。
そして、素早くピートの前まで移動すると、その大鎌をピート目掛けて振り下ろしたので、
「っ!」
ハッとなったピートはすぐに後ろへ飛び退き、その一撃を回避すると、
「くぅ!」
すぐにケネスに向かって、パンチとキックの連続攻撃を繰り出した。
だが、ケネスはそれらの攻撃を涼しそうな顔で避けたり、時には大鎌で受け流してた。しかも、時々ピートの攻撃の隙を突くかのように、大鎌による斬撃を繰り出していたので、それから少し時間が経った時には、ピートの体には多くの切り傷がついていて、そこから真っ赤な血が流れていた。
「はぁ……はぁ……」
と、辛そうに肩で息をする傷だらけのピートに向かって、
「へぇ、中々やるじゃない。流石は『悪しき種族』の1つといったところね」
と、ケネスが余裕に満ちた表情でそう言うと、
「くっ!」
と、ピートは歯をギリッと鳴らして、もう一度攻撃を繰り出そうとしたが、流れる血の量が多かったのか、ぐらりと足がもつれてその場に倒れそうになったので、
(しまった……!)
と、ピートがギョッとしていると、
「ここまでね」
と、ケネスはそう呟いて、ピートの腹にキックを入れた。
「ぐほ!」
強烈な一撃を入れられたピートは、そのまま後ろへ飛ばされて、地面に激突すると、
「う……うぅ……」
と、蹴られたお腹を抱えながら、苦しそうにそう呻き声をあげるだけで、そのまま動かなくなってしまった。それを見たケネスはゆっくりとピートに近づくと、
「じゃあね、坊や。楽にしてあげるわ……」
と、トドメを刺そうと大鎌を振り上げた。
その時だ。
「やめろぉおおおおお!」
「何!?」
男性に叫びと共に、何やら眩い光がケネスに向かってくるの見えので、ケネスはすぐにその光に向かって大鎌を振った。
その瞬間、光は真っ二つに斬り裂かれたが、
「あ、あなたは……」
その光の背後には、広げた両手を前に突き出したニーナの父親の姿があった。
そう、ケネスがピートにトドメを刺そうとしたのを見て、
(いかん!)
と感じたニーナの父親は、強引に立ち上がって自身を押さえつけていた男性を突き飛ばすと、
「やめろぉおおおおお!」
という叫びと共に、ケネスに向かって両手から光の矢のようなものを放ったのだ。
そして、
「その子から離れろ!」
と言い放ったニーナの父親に対して、
「あ、あなた……貴様ぁ! 五神教会の人間でありながら、5柱の神々を信仰する身でありながらぁ……!」
と、ケネスは怒りに満ちた表情になると、大鎌をグッと握り締めて、
「こぉの裏切り者がぁあああ!」
と怒声をあげながら、それを思いっきり振るった。
次の瞬間、振るわれた鎌から赤い光の斬撃が放たれたので、
「『ライトシールド』!」
と、ニーナの父親はそう叫びながら再び開いた両手を前に突き出した。すると、その手の前に、ニーナの父親の背丈と同じくらいの高さを持つ、大きな白い光の壁が現れた。
しかしそれに構わず、赤い光の斬撃は白い光の壁を真っ二つにすると、
「あ……」
そのまま、ニーナの父親の胴体までも斬り裂いた。
その後、斬られた胴体からブシュッと勢いよく血が噴き出て、ニーナの父親は仰向けになって地面に倒れた。
それを見て、
「お父さぁあああああん!」
「あなたぁあああああ!」
と、ニーナとニーナの母親がそう悲鳴をあげると、
「ふん、邪魔をした報いよ」
と、ケネスはそう言い捨てて、再びピートに大鎌を振り上げようとしたが、
「よくも……よくもぉ!」
と、今度はニーナが怒りのままにそう叫び、その瞬間、ケネス本人の影と目の前で倒れてるピートの影から、何本もの黒い鎖が現れて、ケネスの腕や胴体、足に巻き付いてきたので、
「なるほど、これがあなたの『固有職能』の力なのね」
と、ケネスはチラッとニーナを見ながらそう呟くと、全身に力を入れ始めて、
「ふん!」
と鼻を鳴らしながら大きく全身を動かした。
すると、黒い鎖はバキバキと音を鳴らしながら全て引きちぎられて、
「あああああああ!」
その瞬間、ニーナは全身から黒い稲妻のようなエネルギーを放出させながら、まるでダメージを受けたかのようにそう悲鳴をあげて、その場にパタリと倒れてしまったので、
「ふむ、どうやら使い手にかなりの代償を強いる力みたいね」
と、ケネスは納得の表情を浮かべながらそう呟いた。
その後、
「やっぱり、あなたから始末しなきゃね!」
と、ケネスはそう言うと、すぐにニーナに向かって駆け出したので、
「っ! い、いや……!」
と、ニーナはその場から逃げ出そうとしたが、それよりも早くケネスがニーナの目の前に着き、今にも大鎌を振り下ろそうとしてきたので、
「や、やめ……!」
と、それを見たピートがそう叫ぼうとしたが、
「ニーナァ!」
と、いつの間にか自由になってたニーナの母親が、ニーナを庇うかのようにニーナとケネスの間に立った。
しかし、それでも大鎌は止まることなく振り下ろされて……。
ーーザシュ!
「あ……」
ニーナの母親は、その刃によって体を斬り裂かれてしまった。
「お……お、母さ……」
と、それを見たニーナがそう声をもらす中、
「に、ニーナ……無事で……よか……」
と、ニーナの母親は傷口だけでなく口からもドクドクと血を流しながらそう言うと、そのままバタリとニーナの父親と同じように仰向けに倒れて、動かなくなってしまった。よく見ると、その顔は何処か安心したかのような笑みを浮かべていたので、
「お、お母さん? お母さん?」
と、ニーナは何度もそう呼びかけたが、彼女が返事をすることはなく、
「お母さぁあああああん!」
と、ニーナは大粒の涙を流しながら悲鳴をあげた。
そんなニーナを見て、
「安心しなさい。すぐにあの世へ送ってあげるから」
と、ケネスが「今度こそ!」と言わんばかりにグッと大鎌を構え直すと、
「……母さん?」
と、聞き覚えのある声がしたので、それを聞いたケネスは、
(まさか!)
と、すぐに声がした方向へと振り向くと、
「あ……アメリア!」
そこには、置き去りにしてきた筈のアメリアがいた。
謝罪)
大変申し訳ありません。今回もまた、物語の進行上必要なことですので、残酷なシーンが入ってます。
読んでて気分を悪くしたら、本当にすみません。




