第275話 「異端者」2人と「裏切り者」の話・アメリアと「ランドルフ小隊」
それは、アメリアが「断罪官」の隊員になってから暫く経った時のことだった。
「アメリア・スターク。本日を以て、貴官を断罪官第2小隊への配属とする」
と、大隊長のギデオンに形式的な口調でそう言われたアメリアは、
「了解しました、大隊長」
と、その命令に従って、早速その第2小隊もとへと向かった。
そこで出会ったのは、
「あら、あなたが新しく入った新人さんかしら?」
と、なにやら女性口調で話す長髪の男性だったので、
「は、はい……本日から断罪官第2小隊に配属となりました、アメリア・スタークと申します」
と、アメリアは目をパチクリとさせながらも、どうにかその男性に向かってそう自己紹介すると、男性は「ふふ」と妖艶な笑みを浮かべて、
「はじめまして、私はケネス・ランドルフ。この第2小隊、又の名を『ランドルフ小隊』の隊長を務めてるものよ。以後、よろしくね」
と、アメリアに向かってそう自己紹介した。
因みに、男性の顔は凄く美しかった。
まぁとにかく、その男性の自己紹介を聞いて、
「は、はい……よろしく、お願いします」
と、アメリアがそう返事すると、
「あ。因みに、私のことは『ケネス小隊長』と呼びなさい」
と、男性、ケネス・ランドルフ……以下、ケネスは笑顔でそう言ってきたので、
「り、了解しました、ケネス小隊長」
と、アメリアはタラリと汗を流して緊張しつつも、ケネスの言葉に従って彼をそう呼んだ。
こうして、アメリアはケネスを小隊長とした部隊に配属となったが、
(この人が『小隊長』って、大丈夫かな、私?)
と、アメリアは色々な意味で不安になった。
それからアメリアは第2小隊、又の名を「ランドルフ小隊」の一員として断罪官の任務をこなしていた。
意外なことに、ケネスは少し癖のある人物だが、根は真面目な性格で優れた戦闘技術を誇り、更には『小隊』とはいえ隊長としての能力も高く、隊員達との連携も完璧だった。
おまけに隊員達からの信頼も高く、アメリアも隊員として過ごしていくうちに、段々彼に気を許すようになり、最終的には、
(この人達となら、きっとどんな任務でも大丈夫だろうな)
と、思うようになった。
しかし、それから時は現在に戻り、
「あ……け、ケネス小隊長」
「やぁ、おはようアメリア」
今、アメリアはそのケネス小隊長と向き合っていた。それも、かなり不味い状況で、だ。
今、アメリアは体を木に縄で縛り付けられていて身動き1つとれず、そんな状態のアメリアを見て、ケネスは「ふふ」と我っていたが、それと同時に何処か悲しそうな表情をしていた。
因みに、そんなケネスの周りには、彼を隊長とする小隊の隊員が10数名と10数頭の馬がいて、隊員達もまた全員がアメリアとケネスを見て、悲しそうな表情を浮かべていた。
そんな隊員達を他所に、
「し、小隊長、どうして、あなたが……?」
と、アメリアはケネスに向かって「何故ここにいる?」と尋ねると、
「決まってるでしょ。いつものように、『異端者討伐』の任務を受けただけよ」
と、ケネスは「ふぅ」とひと息入れながらそう答えて、
「それにしても驚いたわ。まさか、あなたの妹が固有職保持者……『異端者』だなんてね」
と、最後にそう付け加えた。
その言葉を聞いて、アメリアは「うぅ」と呻きながら顔下に向けると、
「しかも、『悪しき種族』である『獣人』と一緒だそうじゃない」
と、ケネスがアメリアに向かってそう言ったので、
「え……ま、待ってください、それは、本当なのですか!?」
と、それを聞いたアメリアはハッと顔を上げながらそう尋ねた。
その質問に対して、
「あら、これは初めて聞いたのかしら?」
と、ケネスは意外なものを見たかのように目を大きく見開きながらそう尋ね返すと、
「は、はい。私は、ギデオン大隊長からは、『悪しき種族』が出たという話は聞いてませんでした」
と、アメリアは顔を真っ青にしながらそう答えたので、
「そう……」
と、ケネスはそう声をもらした。
その後、ケネスは再び「ふぅ」とひと息入れると、
「ま、それよりもアメリア、酷いじゃない。私達を置いて、1人で先に行くなんて」
と、アメリアに向かって「ちょっと怒ってます!」と言わんばかりの表情でそう言ったので、それを聞いたアメリアは「うぅ……」と再び呻くと、
「そ、それにつきましては、申し訳ありません」
と、ケネスと隊員達に向かって謝罪したが、
「で、ですが、私は……」
と、真っ直ぐケネスを見て講義しようとした。
ところが、それを遮るかのように、
「ふふふ……」
と、ケネスは妖艶な笑みを浮かべながら笑うと、
「安心してアメリア。『異端者』に認定されたとはいえ、あなたに家族殺しなんてさせたりなんてしないわ」
と、その表情を崩さずにそう言ったので、それを聞いた瞬間、アメリアは更に顔を真っ青にした。
そして、
「ま、待って……待ってください小隊長! 私は……私は……!」
と、アメリアは必死になって体を動かしたが、丈夫なのか体を縛る縄が切れることはなく、寧ろ、もがけばもがくほど、縄はアメリアの体を傷つけていった。
そんなアメリアを見て、隊員達は更に悲しそうな表情を浮かべたが、ケネスは「ふ……」と笑って、
「大丈夫よ。私達の手にかかれば、固有職保持者だろうが『悪しき種族』だろうが軽く倒してやるんだから」
と、満面の笑みを浮かべながらそう言ったので、それを聞いた瞬間、
「あ……ああ……!」
アメリアの両目から、ボロボロと涙が流れた。当然、「喜び」で流す嬉し泣きではなく、「絶望」で流れる涙だ。
「ま、待って……待ってくださ……!」
と、その涙を流しながらそう口を開くアメリアを無視して、
「さぁみんな、『異端者』の討伐に出発よ!」
と、ケネスは近くにいた馬に跨りながら隊員達に向かってそう命令すると、彼らは「は!」と返事をし、その後それぞれ馬に跨った。
そんな彼らを見て、
「待って! 待ってよ! お願いだから待って!」
と、アメリアは更に涙を流しながらそう喚いたが、
「出発!」
と、ケネスはそう叫びながら、隊員達と共にその場から駆け出していったので、
「嫌……嫌だ嫌だ嫌だ! 嫌だぁあああああっ!」
その背中を見送りながら、アメリアは泣き叫んだ。




