第268話 「異端者」2人と「裏切り者」の話・ニーナの「隠れ家」
本日2本目の投稿です。
「ね、ねぇ! 僕を何処に連れてく気なの!?」
と、ニーナに手を引かれた状態のピートが、ニーナに向かってそう尋ねると、
「大丈夫、安全なところだから!」
と、ニーナは前を向いたままそう答えるだけでそれ以上は何も教えなかったので、
(ぼ、僕、どうなっちゃうんだ?)
と、ピートは不安そうな表情を浮かべた。
暫く森の中を進むと、2人の前に大きな岩壁が現れて、そこから少し歩くと、何やらボロい大きな木の板が何枚か立てかけられているところに着いたので、
(え、何ここ?)
と、ピートが首を傾げると、
「ようこそ、私の秘密の隠れ家に!」
と、ニーナはピートに向かって笑顔でそう言った。
その言葉に「は?」とピートがポカンとなったが、そんなピートを無視して、ニーナはそのボロい木の板を2、3枚動かした。
そしてそこから現れたのは、大きな洞窟のようで、中は結構な広さをしていて、そこら辺には幾つかの大きな木の箱と、それらを合わせて作ったベッドのようなものがあった。
そんな状態の洞窟を見て、ピートが「わぁ……」と感心していると、
「さぁ早く。中に入って」
と、ニーナが手招きしてきたので、それにハッとなったピートは、すぐにそれに従って中に入ると、ニーナは木の箱の1つからランプを取り出した。その後、ニーナはランプの中の蝋燭に火をつけて、洞窟内を明るくすると、扉を閉めるかのようにまた木の板を動かして、洞窟の出入り口を塞いだ。
ひと通りの作業を終えて、
「これでよしっと……」
と、ニーナがコクリと頷きながらそう呟くと、木の箱で作ったベッドに腰掛けて、
「こっち座って」
と、隣の空いている部分を手で叩きながら、ピートに座るよう促した。
それを見たピートは「ふえ!?」と驚いたが、ジッと見つめてくるニーナの視線に耐えられなかったのか、彼女に従って隣に座った。
それを見て、ニーナは「ふふ」と笑うと、何もない空間に手を翳して、
「『無限倉庫』」
と、小さな声でそう唱えた。
すると、翳した手の先に黒い穴が現れたので、
「え、何!?」
と、ピートは驚いたが、そんな彼を無視して、ニーナはその黒い穴に手を入れると、そこから小さな布包みを1つ取り出した。
目の前で起きた出来事に、
「え、ええ? 今の何? ていうか、それ何!?」
と、ピートが目をパチクリとさせながらニーナに向かってそう尋ねると、
「私のスキルって言えばいいのかな?」
と、ニーナは少し悲しげな笑みを浮かべながらそう答えて、手にした布包みを開けた。
包まれていたのは数種類の果物で、ニーナはそのうちの1つを手に取ると、
「はい、あげる」
と、それをピートに差し出した。
それを見たピートは、
「え? い……いいの?」
と、警戒しながらニーナに向かってそう尋ねると、ニーナは笑顔で、
「勿論!」
と答えた。
その答えを聞いて、ピートは改めてニーナの顔をジッと見つめると、
(うん。大丈夫、この人は嘘を言ってない)
と、そう感じたので、ピートはニーナから果物を受けると、
「『月光と牙の神ループス』様に感謝を込めて、いただきます」
と、祈るようにそう言った後、果物を美味しそうに食べた。
次の瞬間……。
ーーポロリ。
ピートの目から一筋の涙が流れたので、ピートは思わず「え?」と声をもらしてその涙を拭うと、
(あ、あれ? おかしいな。何で、涙なんて……)
と、そう疑問に思ったが、それでも果物を食べる手は止まらず、ピートは更に涙を流しながらも、果物を食べ続けた。
そんなピートを見て、
「ね、ねぇ……」
と、ニーナが声をかけてきたので、それに気付いたピートが「ん?」とニーナの方へと顔を向けると、
「え、えっと、よければでいいんだけど、この辺りにはあなた1人で来たの? 家族とか……仲間、いないの?」
と、ニーナは恐る恐るそう尋ねてきたので、その質問にピートは「あ……」と声をもらして、答えるのを躊躇うかのような表情を浮かべたが、やがて意を決したのか、
「……僕を残して、みんな死んじゃった」
と、ひと言そう言うと、自身がここまで来た経緯を、ゆっくりとニーナに話した。
それから暫くして、
「……これが、僕の全部(?)かな」
と、そう話しを締め括ったピートが、チラッとニーナを見ると、
「う……うぅ」
と、ニーナが両目から大粒の涙を流していたので、
「え、どうしたの!?」
と、ピートがギョッと驚くと、
「だ、だって……あなたがすっごく、辛い想いをしてきたから……あなたが、1人ぼっちになっちゃったから」
と、ニーナは泣きながらそう答えたので、
「お、お姉さんが泣くほどのことじゃないよ! 父ちゃんと母ちゃんが死んで悲しかったけど、『仕方ないな』って思ってるところもあって……!」
と、ピートはなんとかニーナを励まそうとしたが、
「どうして!? 私と同じ『人間』が、あなたのお父さんとお母さんを殺したんだよ!?」
と、ニーナは更に涙を流しながら、怒鳴るようにそう尋ねてきた。
その質問を受けて、ピートは「う……」と唸ると、
「だ、だって……500年前に、僕達『獣人』の神様と『妖精』の女神様が、『人間』の神様に負けちゃったから、僕達『獣人』は悪いものになっちゃって、始めは、それで『人間』達を恨んでる獣人もいたんだけど、『どうしようもないな』って恨むの諦めちゃう獣人もいて……ああ、その子孫が僕の両親と仲間達なんだけど……」
と、しどろもどろにそう理由を説明したが、
「そんなのおかしい! おかしいよ! 話を聞いてみたら、あなたも、あなたの両親も仲間達も、何も悪いことしてないじゃない! なのに……酷いよ!」
と、ニーナは余計泣きながらそう喚いたので、ピートは「えぇ?」とオロオロしながらも、どうにかニーナを宥めた。
それから更に暫くすると、
「ごめんね、みっともないところ見せちゃって」
と、漸く泣き止んだニーナが、ピートに向かってそう謝罪してきたので、それを聞いたピートは、
「う、ううん。そんな、気にしないで……」
と、返事したが、
「で、でも、どうしてお姉さん、こんなにも僕の話を聞いてくれるの? 僕、嘘ついてるかもしれないんだよ?」
と、恐る恐るニーナに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「大丈夫。あなたが嘘を言ってないのはわかってるから」
と、ニーナは首を左右に振りながらそう答えたので、その答えを聞いたピートが、
「え、どうして……?」
と、首を傾げると、
「私には、そういう『スキル』があるの」
と、ニーナそう答えたので、
「その……『スキル』って、何?」
と、ピートは再び恐る恐るそう尋ねると、
「本来なら、『大人』にならないと授からない特別な力の1つなんだけど……」
と、ニーナはそう答えると、
「私ね、神様に愛されてないんだ」
と、最後に表情を暗くしながらそう付け加えたので、
「……ど、どういう事?」
と、ピートがタラリと汗を流しながらそう尋ねると、
「私の中にはね、『悪魔の力』が宿ってるの」
と、ニーナは真剣な表情で、ピートを見つめながらそう答えた。




