第264話 「異端者」2人と「裏切り者」の話
今回は、いつもより短めの話になります。
元・断罪官隊員アメリア・スタークと、その妹ニーナ・スターク。
彼女達はルーセンティア王国王都から遠く離れた位置にある小さな村に両親と住んでいて、その両親は共に五神教会の人間だ。
とても真面目で熱心に5柱の神々を信仰していて、そんな両親の背中を見て育ったアメリアとニーナは、いつしか自分達も両親と共に五神教会の人間になるんだろうなと考えるようになっていた。
そんな2人の特徴はというと、姉のアメリアはとても活発で男勝りな性格をしていて、村に住む同年代の男達からは恐れられているが、逆に同年代の女達からはとても頼りにされている、そんな強い女性だ。
一方、4つ下の妹であるニーナはというと、基本的に他人を思いやる優しい性格なのだが大人しくて引っ込み思案なのが玉に瑕で、外で友達と遊ぶよりも1人で静かに過ごすことを好むタイプだった。
さて、そんなニーナなのだが、彼女には両親どころか姉のアメリアにすら教えてない、ある「秘密」があった。
きっかけは、ニーナがまだ10歳の時のことで、ある日1人で森の中を散歩中に魔物に遭遇してしまい、絶対絶命のピンチを迎えていたのだが、
「い、嫌……来ないで!」
と、ニーナが恐怖でそう叫んだ瞬間、周囲の木の影から幾つもの黒い鎖が伸びて、その魔物の体に巻きついた。そして、それから暫くすると、魔物はだんだん弱まっていき、最後は命を失った。
それを見たニーナは、
(な、何なの? 何がどうなってるの?)
と、目の前で何が起きたのかわからず困惑していると、
「レベルが上がりました」
と、頭の中でそんな「声」がしたので、その声にニーナが「え!?」と驚くと、
「入手するスキルを選んでください」
と、再び頭の中でそんな声が聞こえたと同時に、目の前に幾つもの「スキル」が記されたウィンドウが現れた。
それを見た瞬間、
「え、これってまさか……」
と、何かに気付いたニーナは、「スキル」を選ぶのをやめてそのウィンドウを消すと、周囲を見回して自分以外誰もいないのを確認すると、ゆっくりと深呼吸して、
「ステータス、オープン」
と唱えた。
すると、目の前に「スキル」が記されたウィンドウとは別のもの……そう、自身の「ステータス」が現れたのだ。
「ど、どうして?」
と、ニーナは再び困惑したが、それでもどうにかして気持ちを落ち着かせると、現れた自分の「ステータス」を確認した。
名前:ニーナ・スターク
種族:人間
年齢:10歳
性別:女
職能:呪術師
レベル:2
所持スキル:「無限倉庫」「呪術」
称号:「固有職保持者」
ひと通り自身の「ステータス」を読むと、
「う……嘘……」
と、ニーナは顔を真っ青にしながらそう呟き、その場に膝から崩れ落ちた。
(ど……どうして、私に『悪魔』の力が!?)
もう一度言うが、ニーナの両親は2人共五神教会の信者だ。それ故に、ニーナと姉のアメリアは、いつも両親から「この世界の歴史」に「五神教会がどれだけ素晴らしいものか」や「我々『人間』が崇める5柱の神々がどれだけ偉大か」、そして「『固有職保持者』がどれだけ恐ろしい存在か」などを聞かされていたので、
(わ、私が、『固有職保持者』だなんて!)
と、今回の出来事で、自分がその「恐ろしい存在」である「固有職保持者」という事実を知ってしまい、
「だ、駄目。こんなの、お父さん達に教えられない」
と、ニーナは無駄なことだとわかっていながらも、その事実を隠すことに決めたのだ。
その後、村に戻ったニーナは、両親とアメリアに叱られながらも、もとの日常に戻った。勿論、その最中に自身の力について少しずつ調べることも忘れずに、だ。幸い、ニーナは1人でいることが多かったので、誰も彼女の「秘密」に気付くことなく、ニーナは自身の力について調べることが出来た。しかし、魔物との「戦い」はあの日以来していなかったので、レベル自体は2のままだったが……。
それから1年の月日が流れ、アメリアが15歳……「成人」となり、彼女に職能が授かった。
職能の名は、戦闘系職能の「聖戦士」。聖なる光の力を操る、「戦士」の上位にあたる職能で、ニーナが暮らす村の掟では、この職能を授かった人間は村を出てルーセンティア王国王都へと旅立ち、そこにある五神教会本部で、5柱の神々の名の下に人々を守る為に戦う存在になる為の訓練を受けることになっている。
これには五神教会信者の両親はとても大喜びしていて、アメリア本人もそのことに文句はなかったが、ニーナはというと、
「お、おめでとう姉さん」
と、表情こそ喜んではいたが、心の中はとても複雑な想いだった。
何故なら、ニーナはあと4年で「成人」となり、それは即ち自身が「固有職保持者」であるということが両親やアメリア、そして村の人間達にバレてしまうからだ。
(ど、どうしよう)
と、その時のことを考えて悩むニーナだったが、誰にも相談することが出来ず、とうとうアメリアが旅立つ日が来てしまい、
「頑張れよアメリア!」
「体に気をつけてね」
と、アメリアに向かってそう言った両親に、
「うん。わかったよ父さん、母さん」
と、アメリアも笑顔でそう返事すると、
「いってきまーす!」
と言って、村を旅立っていき、そんな姉を、
「……いってらっしゃい、姉さん」
と、ニーナは複雑そうな表情で見送った。
その後、ニーナはアメリアがいない中、
「これから私、どうすればいいんだろう?」
と、悩んではいたが、抱えてる悩みが悩みなだけに誰にも相談することが出来ず、暗い日々を送るようになった。
そして更に1年後、ニーナが12歳になったある日、
「ぐぅううう……」
「う……あ……」
とある「運命の出会い」をするのだった。




