第263話 「光」と「闇」の力
「私は、ニーナ・スターク。固有職能『呪術師』の固有職保持者です」
と、ヘリアテスに向かって改めてそう自己紹介した、アメリアの妹ニーナ。
そんなニーナの言葉に、
「呪術……つまり、『呪い』ってことかな?」
と、ヘリアテスが真剣な表情でそう尋ねると、
「正確に申しますと、『呪い』と『呪い』を扱う職能です」
と、ニーナは首を左右に振りながらそう答えたので、
「あら、それってどう違うのかしら?」
と、ヘリアテスは首を傾げながら再びそう尋ねた。
その質問に対して、ニーナは「えっと……」と緊張しながらも、
「自分、もしくは周囲に対して良い影響を及ぼすものが『呪い』で、主に肉体や精神、装備などを強化したり、ほんの僅かですが『運の良さ』を上げたりも出来ます」
と、ヘリアテスだけでなく春風達にもそう説明し、それを聞いたヘリアテスは、
「まぁ、それは中々いいわね。特に、『運の良さ』を上げるなんて、最高じゃない」
と、表情を明るくしたが、
「ええ、確かにいい効果ですが、これをやりますと後で私自身が不運に見舞われるという代償がありまして……」
と、ニーナは言い難そうにそう付け加えたので、
「う! そ、それはまた、随分と使い所に悩みますね」
と、ヘリアテスは「はは」と頬を引き攣らせながらそう言った。そして、それは春風も同様で、
(うわぁ、使い手が不運になる力って……まぁ、代償としては当然なのかな?)
と、ニーナの話を聞いて「うーん」と唸りながら首を傾げた。
そんな春風を他所に、
「え、ええっと、今のが『呪いについての説明ですが、逆に『呪い』の方はと言いますと、『呪い』とは反対に、自分と周囲に対して悪い影響を及ぼすもののことで、こちらは逆に肉体を少しずつ弱らせたり、装備に悪い効果を与えたり、あとは他人の『運の良さ』を『最悪』に変えたり出来ます」
と、ニーナは今度は「呪い」についての説明を始めた。
その説明を聞いて、
「ま、まさか、他人の『運の良さ』を下げると、自分の『運の良さ』が上がる……とかなったりするの?」
と、ヘリアテスが恐る恐るそう尋ねると、
「いえ、残念ながらそういうことは起きません」
と、ニーナは本気で残念そうな表情を浮かべて首を左右に振りながらそう答えたので、
(え、何それ超残念……)
と、春風は表情には出さずに心の中でそう呟くと、
「それどころか、こちらは失敗すると、相手にかけた『呪い』が私に返ってくるんです。それも酷ければ何倍にもなって……」
と、ニーナは表情を暗くしながらそう説明を続けたので、
「「「「何それマジで怖っ!」」」」
と、ヘリアテス、春風、レナ、グラシアは思わず声に出してしまい、
「「「ははは……」」」
と、アメリア、ニーナ、ピートは「参ったねぇ」と言わんばかりに苦笑いした。
その後、
「な、なるほど、『呪い』と『呪い』ですか。まさに、『光』と『闇』といったところね」
と、ヘリアテスがどうにか納得の表情を浮かべながらそう言うと、
「……あれ? ちょっと待って」
と、レナが何かに気付いたかのようにそう口を開いたので、それを聞いた春風達が「ん?」と一斉にレナに視線を向けると、
「ということは、フロントラルで私やフレデリック総本部長さんを拘束した時に出てきた、あの紫色に光った鎖って……?」
と、レナがニーナに向かって恐る恐るそう尋ねてきたので、
「あ、はい。あれも『呪いの1つで、相手の動きを封じ込める為のものなんです」
と、ニーナは気まずそうな表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
「……ん?」
と、今度はヘリアテスが何かに気付いたかのような表情を浮かべると、
「レナ、フロントラルで何があったの?」
と、レナに向かってそう尋ねてきたので、
「ああ、うん。実は……」
と、レナはフロントラルで起きた、「春風誘拐事件」(取り敢えずそう名づけたらしい)について、ヘリアテスに話した。
その瞬間、
「……へぇ。つまりあなた、私の大事な娘に『呪い』をかけた、と?」
と、ヘリアテスは「ゴゴゴ」と尋常でないほどのプレッシャーを放ちながら、ニーナに向かってそう尋ねたので、
「ひぃ! あ、あの……そのぉ……」
と、それにビビったニーナは体をブルブルと震わせながら何か答えようとしたが、
「うう……あぁ……」
と、恐怖でそれ以上何かを言うことが出来ず、
「お、お母さん、落ち着いて……!」
と、レナがヘリアテスをどうにか宥めようとした。
その時だ。
「め、女神様!」
と、突然ピートがガタンと音を立てながら椅子から立ち上がったので、
「あら? どうかしたの?」
と、ヘリアテスが首を傾げながらそう尋ねると、ピートは緊張しつつもビシッと姿勢を正して、
「あ、あの、レナお姉さんへの『呪い』や、春風お兄さんの誘拐に、関しましては、ぼ、僕も悪いです! 勝手なこと言ってるのは、わかってるんですが、どうか、ニーナお姉ちゃんと、アメリアお姉ちゃんを許してください! その代わり、僕はどうなっても構いませんから!」
と、ヘリアテスに向かってキチンとした口調でそう言うと、最後に「お願いします!」と深々と頭を下げた。
それを見て、ヘリアテスだけでなく春風やレナまでもがポカンとしていると、
「ピート、何を言ってるの!?」
「そうだ! そんなの駄目だぞ、絶対に!」
と、ニーナとアメリアが「ちょっと待てい!」と言わんばかりに大慌てでピートに詰め寄ったが、
「だ、だって……!」
と、ピートも譲れないものがあったのか、2人に向かって反論しようとしていた。
すると、
「ピート君だったよね?」
と、ヘリアテスがピートに向かってそう尋ねてきたので、それにピートが「はい」と返事すると、
「あなた、随分と必死になってその2人のこと庇うのね」
と、ヘリアテスが真剣な表情でそう言ってきたので、
「はい。両親を亡くした僕にとって、お姉ちゃん達、特にニーナお姉ちゃんは大切な存在なんです」
と、ピートは真っ直ぐヘリアテスを見つめながらそう返事した。
その返事を聞いて、
「そうなんだ」
と、ヘリアテスが「ふふ」と安心したかのような笑みを浮かべると、
「わかったわ。この話については、ひとまずここでおしまい。その代わり……」
と、再び真剣な表情でそう言ってきたので、それを聞いてその場にいる者達全員が「ん?」と首を傾げると、
「聞かせてほしいの。あなた達3人が、『逃亡の旅』をすることになった理由を」
と、ヘリアテスは真剣な表情のままそう言った。
それを聞いて、春風、レナ、グラシアが「あ……」と声をもらすと、
「「「わかりました」」」
と、ピートだけでなく、アメリアとニーナも、真っ直ぐヘリアテスを見ながらそう言った。




