第25話 「勇者」である証
「……は? 『選ばれし勇者』って……?」
「そうだ。その、『選ばれし勇者』という称号こそが、其方……いや、其方達が神々に選ばれた『勇者』だという証拠なのだ」
「そ……そんな……」
ウィルフレッドから「勇者である証拠」についての説明を聞いて、ショックを受けた女性教師の爽子。
そんな彼女を、クラスメイト達が心配そうに見つめる中、
(ふーん。『選ばれし勇者』ねぇ……)
と、春風は心の中でそう呟いた後、周囲の人達に気付かれないように、
(スキル『神眼』、発動。称号『選ばれし勇者』の情報を……)
と、スキルを発動して爽子の「ステータス」に記された、「選ばれし勇者」の称号を調べ始めた。
そして、すぐにその称号に関する説明文が記されたメッセージウィンドウが現れたので、春風は周りに見られないようにその文章を読んだ。
称号「選ばれし勇者」……「5柱の神々」に選ばれた、人々を悪しき存在から守り、助ける希望の救世主。普通の人間よりも高い身体能力や精神力を誇り、聖なる武器である「神器」を召喚し、扱うことが出来る。
と、メッセージウィンドウにそう表記された「選ばれし勇者」についての説明文を読み終えて、
(うーん、なるほど。それじゃあ次は……)
と、春風は心の中でそう呟いた後、今度は別のものを「神眼」で調べはじめた。
それは……。
スキル「神器召喚」……勇者専用の聖なる武器「神器」を召喚する。ただし、どのような「神器」が現れるかは人によって異なる。
(……え、マジで? 人によって違うの? なんかちょっと羨ましいかも……)
と、スキル「神器召喚」に関する説明文を読んだ春風はそう思い、
(うーん、俺だったら……)
と、「こんなのがいいなぁ……」と言わんばかりに想像し出したが、
(は! いかんいかん、オーディン様達に怒られちゃうよ)
と、すぐに首をブンブンと横に振って、
(契約神オーディン様。そして、地球の神々の皆様、申し訳ありません)
と、今この場にいない「地球の神々」に向かって、心の中でそう謝罪した。
そんな様子の春風を他所に、
「あ、あの、ウィルフレッド陛下……」
と、未だショックから立ち直ってない爽子がそう口を開いたので、
「む、どうかしたのか爽子殿?」
と、ウィルフレッドが首を傾げながらそう返事すると、
「その……『勇者』の称号の他に記されてるこの『職能』とか『スキル』って何なのですか?」
と、爽子は恐る恐る「ステータス」に記された「職能」と「スキル」について尋ねた。
その質問を聞いて、ウィルフレッドはハッとなって、
「あ! ああ、そうだったな! すっかり忘れていたよ!」
と、今頃思い出したかのような表情になると、「コホン」と咳き込んで、
「まずは『職能』についてだが、それはこの世界の人間が持つ特別な能力でな、元々は5柱の神々が邪神達と戦っていた時に我々人間達に与えた『力』なのだ。そして、邪神達が封印された後、残った魔物達と戦う為の力として残されることになり、現在では15歳になった時に神々から授かるものとなったのだ。因みに、この世界では人間は15歳になると成人……つまり、大人の仲間入りとなる」
と、「職能」についてそう説明したので、
「は、はぁ。そうなんですか」
と、爽子は「マジですか」と言わんばかりにタラリと汗を流しながらそう言い、
(へぇ、15歳で大人の仲間入りねぇ……)
と、春風は「ふーん」と興味なさそうな表情で、心の中でそう呟いた。
その後、
「そして次に『スキル』だが、それは『職能』から生まれた特別な『技術』の総称で、全ての『職能』には『レベル』というものが設けられていて、その『レベル』が上がることによって『職能』に因んだ『スキル』を手に入れることが出来るのだ」
と、ウィルフレッドがそう説明した後、爽子は「はぁ、そうですか……」と返事すると、
「ところで、爽子殿はどのような『職能』を授かったのだ?」
と、今度はウィルフレッドがそう尋ねてきたので、
「え? えっと、『神聖騎士』と出ましたが……」
と、爽子が恐る恐るそう答えると、ウィルフレッドだけでなく周囲から(ただし、春風とクラスメイト達は除く)も「おお!」と驚きに満ちた声があがったので、
「え、何!? 何ですか!?」
と、爽子も驚いて周りをキョロキョロし出すと、
「は! し、失礼した爽子殿」
と、ハッとなったウィルフレッドは恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう謝罪して、再び「コホン」と咳き込んだ後、
「『神聖騎士』とは、最上位……即ち、最も高いランクにあたる職能の1つで、全ての騎士系職能の中でも高い防御力を誇り、体術や武器戦闘だけでなく強力な光属性の魔術を扱うことが出来るのだ。また、レベルが上がることによって「聖なる力」を用いた戦闘術も行うことも可能になる」
と、「神聖騎士」について爽子に向かってそう説明したので、
「え、さ、最上位って! 最も高いランクって! そ、そんな凄い力が、た、た、ただの教師である私に!?」
と、爽子はショックと恥ずかしさのあまり先程のウィルフレッド以上に顔を真っ赤にして、オロオロと慌てふためきながら言った。
それと同時にクラスメイト達からも、
『おお! 流石、爽ちゃん先生!』
と、そんな声があがった。勿論、
(流石です、先生)
と、春風も心の中でそう感心した。
そんなクラスメイト達の言葉を聞いて、
「ちょ、みんなやめろぉ!」
と、爽子は顔を更に真っ赤にさせると、「もう嫌ぁ!」と言わんばかりにその場に蹲った。
そんな爽子を、ウィルフレッドは「ふふふ……」と暖かい目で見つめると、
「さてと。それでは、爽子殿の生徒達よ」
と、春風とクラスメイト達に向かってそう声をかけてきたので、
『ん?』
と、全員がそれに反応すると、
「其方達も自身のステータスを開いてくれ。それと出来ればでいいので、『職能』の方も教えてほしい」
と、ウィルフレッドがそう言ってきたので、
(うげ! マジかよ!)
と、春風はもの凄く嫌そうな表情になったが、すぐに「だからいかんいかんって!」と言わんばかりに首を横に振った。
そんな春風を他所に、クラスメイト達はウィルフレッドの言葉に少し迷ったが、やがて意を決したかのようにお互い顔を見合わせながら「うん!」と頷くと、
「は! み、みんな待って……!」
と、止めに入った爽子を無視して、
『ステータス、オープン!』
と、一斉にそう唱えた。




