第262話 アメリア達の「自己紹介」
神秘的な雰囲気を持つ森の中。
そこにある湖の畔に、一軒のログハウスがある。
そう、そこはヘリアテスが暮らす家にしてレナの実家だ。
そして今、そのレナとヘリアテスの家の中にある食堂に、春風とグラシア、アメリアと三つ編みの少女と獣人の少年ピートが集まっている。因みに家主であるヘリアテスとその娘レナは、集まった春風達の為にお茶を用意していた。
何故このような状況になってるのか?
その理由を説明する為に、時を少し前まで戻すとしよう。
「「うう……ひっく……」」
と、ヘリアテスの優しさに触れて、子供のように泣きじゃくったアメリアと三つ編みの少女。
そんな彼女達に、
「どう? 少しは落ち着いたかな?」
と、ヘリアテスが穏やかな口調でそう尋ねると、
「「は、はい」」
と、アメリアも三つ編みの少女も、ひとしきり泣いた為か大分気持ちが落ち着いてきたので、2人してヘリアテスに向かってそう返事した。
それを聞いて、ヘリアテスは「よしよし」と2人の頭を撫でていると、
「お母さん」
と、レナがそう口を開いたので、それにヘリアテスが、
「ん? どうしたのレナ?」
と、レナの方へと振り向きながらそう反応すると、
「ちょっと今困ったことになっちゃって、出来ればここから移動したいんだけど、何処に向かったらいいかな?」
と、レナが本気で困った表情を浮かべながらそう尋ねてきたので、それを聞いたヘリアテスは「うーん」と唸りながら考え込むと、
「よし。それなら、みんな家においで」
と、アメリア達だけでなく春風達に向かってそう言った。
その返事を聞いて、
「え? い、いいの?」
と、レナが恐る恐る再び尋ねてきたので、
「勿論よ、大事な娘の頼みだからね。それに、この子達の『事情』も聞きたいし」
と、ヘリアテスはチラッとアメリア達を見ながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「ありがとうお母さん!」
と、レナが満面の笑みを浮かべながらそうお礼を言うと、
「ふふ。じゃあ、みんな家に来て。美味しいお茶を用意するから」
と、ヘリアテスはそう言って、春風達やアメリア達を家に招いた。
そして現在、春風達はそのヘリアテスとレナの実家であるログハウス内にいるわけなのだが、
「「……」」
と、落ち着いている様子の春風とグラシアとは対照的に、
「「「……」」」
アメリアと三つ編み少女、そしてピートはソワソワと落ち着かない様子だった。といっても、その様子はそれぞれ異なっていて、アメリアと三つ編みの少女はというと、「邪神」として人々に恐れられているとはいえ、自分達は今「神様」の住む家に招かれたという事実に、2人とも緊張で表情そ強張らせていた。
一方、ピートはというと、
「わぁ……」
と、「女神様」が暮らす家にいるという事態に興奮しているのか、目をキラキラさせながら食堂内を見回していた。
そんなアメリア達を見て、
(うーん、アメリアさん達それぞれ異なる反応してますけど……)
(まぁ、お気持ちはわからなくもないですが……)
と、春風とグラシアが頬を引き攣らせていると、
「皆さん、お待たせしました」
「みんな、お待たせー!」
と、お茶を用意したヘリアテスとレナが食堂に戻ってきた。
そして、それぞれの前にティーカップを置き、それにヘリアテスが「どうぞ」とティーポットからお茶を注ぐと、
「「いただきます」」
「「「い、いただきます!」」」
と、春風達はそう言って、それぞれお茶を飲み始めた。
その後、ヘリアテスはアメリア達の前にある椅子に座ると、
「さて皆さん。まずはあなた達のことを教えてほしいんだけど」
と、アメリア達に向かってそう言ったので、それにアメリアがハッとなって「す、すみません」と謝罪すると、
「あ、改めてはじめまして。私は、アメリア・スタークと申します。そして、この子は妹のニーナです」
と、まだ少し緊張した様子で、隣に座る三つ編みの少女を見ながら、ヘリアテスに向かってそう自己紹介し、それに続くように、
「あ、アメリア姉さんの妹の、ニーナ・スタークと申します」
と、三つ編みの少女……以下、ニーナも緊張した様子で、ヘリアテスに向かってペコリと頭を下げながらそう自己紹介し、
「ぴ、ピート・コリンズです。じ、自己紹介が遅くなって、申し訳ありませんでした」
と、最後にピートもそう自己紹介しつつ、ヘリアテスに向かって深々と頭を下げて謝罪した。
そんなピートを見て、
「まぁ。丁寧な挨拶が出来ていい子ね」
と、ヘリアテスが笑顔でそう言うと、
「……で、アメリアさんでいいかしら?」
とアメリアに向かってそう尋ねてきたので、それにアメリアが「は、はい!」と返事すると、
「レナから少し話を聞いたけど、あなた五神教会に所属していたんですって?」
と、ヘリアテスは真面目な表情で再びそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、アメリアは「う!」と答え難そうな表情をしながら唸ったが、
(……ここで嘘をついても何の意味もないわね)
と、そう考えると、ゆっくりと深呼吸して、
「はい。私はかつて、五神教会の異端者討伐部隊『断罪官』に所属していました。と言いましても、今の私はその部隊を裏切って、こうしてニーナとピートと共に逃亡の旅をしていますが」
とヘリアテスに向かってそう答えた。
その答えを聞いて、ヘリアテスは「そうなんだ」と呟くと、
「確かその原因って……」
と、チラッとニーナとピートを見ながらそう尋ねようとした。
その質問に対してピートは「う!」と唸ると、
「はい、そうです。僕が原因なんです」
と、ピートは申し訳なさそうな表情でそう答えたが、
「ううん、それは違うよピート」
と、そこへニーナが割り込んできたので、それにヘリアテスが「おや?」と首を傾げると、
「女神様。姉さんが『断罪官』の仲間達を裏切ったのは、私が原因なんです」
と、ニーナが真っ直ぐヘリアテスを見てそう言ったので、
「うーん、どうやら皆さん、かなり訳ありみたいですね」
と、それを聞いたヘリアテスがそう返事すると、
「そ、それは……」
と、アメリアが説明しようとしたが、
「姉さん、もういいよ。これは、私がしなきゃいけないことだから」
と、ニーナが「待った」をかけてきたので、それにアメリアは「でも……」と声をもらしたが、
「お願い」
と、ニーナは真っ直ぐアメリアを見ながらそう言ったので、
「わかった。辛くなったら言ってね」
と、アメリアはそう言うと、ニーナはコクリと頷きながら「ありがとう」とお礼を言い、その後ヘリアテスに向かって、
「私は、ニーナ・スターク。固有職能『呪術師』の固有職保持者です」
と、真剣な表情でそう言った。




