第260話 ヘリアテス、再び
アメリア達が目を覚まして、本格的にどうしようか迷っていた春風、レナ、グラシア。
そんな彼らの前に、見覚えのある白い扉が現れたので、
「「「あ」」」
と、思わずそう声をもらすと、
「え、何!?」
と、少年ピートは突如目の前に現れた白い扉を見て、目を大きく見開いた。当然、それはアメリアと三つ編みの少女も同様である。
するとその時、ガチャリと大きな音を立てながらその白い扉が開かれて、
「レナ!」
その向こうから、大昔の東洋の民族衣装に身を包んだ、長い金髪と金色の瞳を持つ10〜12歳くらいの少女、
「お母さん!」
「「ヘリアテス様!」」
そう、レナの育ての母にしてこの「エルード」の本当の神の1柱、「太陽と花の女神ヘリアテス」が現れた。
その姿を見て、
「ど、どうしたのお母さ……!?」
と、レナはそう尋ねようとしたが、それよりも早くヘリアテスはレナに駆け寄ると、
「レナ、何処も怪我とかない!? 悪い病気になったりしてない!?」
と、今にも泣き出しそうな表情でそう尋ねてきたので、
「お、落ち着いてお母さん! 私はこの通り元気だから! ていうか、一体どうしたのそんなに慌てて!?」
と、レナは「自分は大丈夫」と言いながら、ヘリアテスに向かってそう尋ね返した。
その質問に対して、ヘリアテスは「だ、だって……」と小さい声でそう呟くと、
「突然、精霊達の様子がおかしくなって、なんだか慌ただしいものを感じて、もしかしたら、レナや春風さん、グラシアさんに何かがあったんじゃないかなって思って! 最初は『ここで出ちゃ駄目! レナ達の為にも我慢しなきゃ!』って思ってたんだけど、『やっぱり居ても立っても居られない!』って我慢出来なくて……!」
と、怒涛の勢いでレナに向かってそう答えたので、
「ああ、そうだったんだ」
と、レナは納得の表情を浮かべると、
「お母さん、心配してくれてありがとう。ちょっとしたアクシデントはあったけど、私も春風もグラシアさんも、ご覧の通り大丈夫だから」
と、ヘリアテスに向かって笑顔でそう言い、それに続くように、
「「はい、自分達も大丈夫です!」」
と、春風とグラシアはグッと親指を立てながらそう言ったので、
「ああ、それならよかったぁ……」
と、それを聞いたヘリアテスはホッと胸を撫で下ろしたが、
「……ん? 『アクシデント』? それってどういう……」
と、すぐに首を傾げながらそう尋ねようとした、まさにその時、
「あ、あの!」
と、それまで黙っていたピートがそう口を開いたので、それに気付いた春風達が「ん?」と一斉にピートに視線を向けると、
「あらぁ!」
と、ピートを見たヘリアテスがパァッと表情を明るくして、
「レナ、もしかして『アクシデント』って、あの子関連かしら!?」
と、その表情のままレナに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「う、うん。そうだけど……」
と、レナがタラリと汗を流してコクリと頷きながら、若干引き気味にそう返事すると、ヘリアテスは「そうなんだ!」と更に表情を明るくして、すぐにピートに向き直った。
それを見て、ピートはビクッとすると、ヘリアテスは「コホン」と咳き込んで、
「こんばんは。そして、はじめまして可愛い獣人の坊や。私はヘリアテス。よろしくね」
と、落ち着いた様子で穏やかな笑みを浮かべながら、ピートに向かってそう自己紹介した。
その言葉を聞いて、ピートは「え?」と声をもらすと、
「も、もしかして……『妖精の女神』様……ですか?」
と、ヘリアテスに向かって恐る恐るそう尋ねたので、それを聞いたヘリアテスは「まぁ!」と嬉しそうに再びパァッと表情を明るくすると、
「ええ、そうですよ。私は『妖精』に加護を与えし『太陽と花の女神ヘリアテス』。あなた達『獣人』の神である『月光と牙の神ループス』でなくて、ごめんなさい」
と、改めてそう自己紹介しつつ、最後に申し訳なさそうな表情で深々と頭を下げながらそう謝罪したので、
「ええ、そ、そんな、謝らないでください……いや、ちょっと待ってください。女神様がここにいるってことは……?」
と、その謝罪を受けたピートがオロオロしながらそう尋ねると、ヘリアテスは頭を上げて、
「ええ、ループスも私と同じようにこの世界にいますよ。今は別行動中ですが」
と、申し訳なさそうな表情をしつつもニコッとしながらそう答えた。
その答えを聞いて、ピートは「ええぇ!?」と驚きに満ちた叫びをあげると、
「ほ、本当ですか!? 本当にループス様……『獣人の神様』もいるんですか!?」
と、ヘリアテスに詰め寄ったが、すぐにハッとなって「すみません!」と謝罪しながら後ろに下がった。
それを見て、ヘリアテスは「ふふ」と笑うと、
「ええ、安心して。さっきも言ったけど、ループスもちゃんといますよ。そして、私とループスは……」
と言って、レナの傍に寄り、
「この子、レナ・ヒューズの『育ての親』をしているの」
と、レナの腕にしがみつきながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「ちょ、お母さん!」
と、レナはギョッとなったが、
「えええええええっ!」
と、ピートは今にも目玉が飛び出るのではと思うくらい大きく目を見開きながら驚き、
「お、お、お姉さん、『獣人の神』様と『妖精の女神』様の娘だったの!?」
と、レナを見ながらそう尋ねた。
その質問を聞いてレナはギョッとなったが、
「う、うん。私、赤ちゃんの時に両親が死んじゃって……」
と、少しずつ表情を暗くしながらそう答えると、
「あ……」
と、ピートはその答えを聞いて申し訳なさそうな表情になり、
「ご、ごめんなさい」
と、レナに向かってそう謝罪したが、
「でもね、今のお母さんとお父さん、それと沢山の友達や家族のおかげで、私はここまで生きてこれたんだ」
と、レナは本気で嬉しそうな笑みを浮かべながらそう言い、
「だから、気にしないでいいからね」
と、最後にそう付け加えた。
それを聞いて、
「れ、レナ!」
と、ヘリアテスが目をうるうるとさせて、そんなレナとヘリアテスを、
「「ふふ」」
と、春風とグラシアは穏やかな笑みを浮かべ、
「……」
と、ピートが無言でジーンと感動した、まさにその時、
「……ま、待ってくれ」
という声がしたので、それを聞いた春風達が一斉にその声がした方へと振り向くと、
「い、今の……言葉は……全て、本当の話……なのか?」
そこには、全身をガタガタと震わせながら、「恐怖」に満ちた表情を浮かべたアメリアと三つ編みの少女がいたので、
(し、しまったぁ! アメリアさん達忘れてたぁ!)
と、春風は今思い出したと言わんばかりの表情を浮かべながら、心の中で驚きに満ちた叫びをあげた。




