第259話 目覚めた森の中で……・3
「「「ひと足遅かったぁあああああ!」」」
「えええええっ!?」
と、森の中で鉢合わせ(?)をしてしまった春風、レナ、グラシア、そしてアメリアの仲間である幼い少年。
思わず叫んでしまった4人だったが、その後はシーンと静かになって、
「ど、どうしよう春風?」
と、レナが恐る恐る春風に向かって小声でそう尋ねると、
「決まってるだろ、俺達がやるべきことは1つだけだ」
と、春風は真っ直ぐ目の前にいる幼い少年をジッと見つめながらそう答えた。
その答えが聞こえたのか、
「っ!」
と、幼い少年はハッと身構えると、春風は気を失ってるアメリア達の傍から少し離れて、
「どうぞ」
と、電車でお年寄りに席を譲る感じで、幼い少年にアメリア達の傍に行くよう促したので、それを見たレナとグラシアもハッとなって、
「「ど、どうぞ」」
と、春風と同じようにアメリア達の傍に行くよう促した。
それを見て、幼い少年は「え?」と首を傾げたが、それからすぐに察したかのようにハッとなると、
「あ、ありがとうございます」
と、春風達に向かってペコリと頭を下げながらお礼を言い、いそいそとアメリア達の傍へと駆け出した。
そして、幼い少年が無事にアメリア達のもとに着いたのを見守ると、
「よし、行こう!」
「うん!」
「はい!」
と、春風達はその場から駆け出そうとしたが、
「ま、待って!」
と、それに気付いた幼い少年がそう叫んだので、それに驚いた春風とレナは、
「「うわっとっと!」」
と、危うくバランスを崩して転びそうになり、
「は、春風様! レナ様! 大丈夫ですか!?」
と、グラシアはピタッとその場に止まりながら春風とレナに向かってそう尋ねた。
その後、2人がどうにかその場に踏ん張ると、ゆっくりと幼い少年の方へと振り向き、
「お、お願い……します……待って……ください」
と、幼い少年は今にも泣き出すんじゃないかと思うくらいの悲痛な表情を浮かべていたので、
(……に)
(逃げられない)
(逃げられませんね、これでは)
と、春風達は観念してその場に留まることにした。
それから少しして、
「よ、よかったぁ」
と、アメリア達の無事を確認した幼い少年がホッと胸を撫で下ろすと、ゆっくりと春風達に向き直って、
「あ、あの……巻き込んでしまって、ごめんなさい」
と、深々と頭を下げながら謝罪した。
その謝罪を受けて、
「うーん。なんか事情がある感じなのはわかったけど……」
と、春風が頭を掻きながらそう返事すると、
「あの、綺麗なお兄さんと……」
と、幼い少年が春風を見てそう呼び、
「なんだか透けてるお姉さんにも、聞きたいこととかあるんですけど……」
と、次にグラシアを見てそう呼んだので、
「え、待って、何その呼び名? 『お兄さん』って呼んでくれたのは嬉しいけど……」
「あはは。確かに私は透けてますが……って、え、あなた、私が見えてるの?」
と、春風とグラシアがそれぞれ異なる反応をしつつそう尋ねたが、幼い少年はレナを見て、
「お、お姉さん……僕と同じ『獣人』……ですよね?」
と、纏っていたマントを脱ぎながら、恐る恐る尋ねた。
その瞬間、幼い少年の頭からはピョコンと犬の耳が、お尻の辺りからもピョコンと犬の尻尾が現れたので、
「「あ……」」
と、春風もグラシアもそう声をもらしてチラッとレナに視線を向けた。
一方、質問を受けたレナはというと、「ふぅ」とひと息入れて、
「半分正解。でも、もう半分はハズレかな」
と、幼い少年に向かって申し訳なさそうにそう言うと、自身の左手首につけている銀の腕輪を外した。
その瞬間、レナの白い髪が更に白く光り、そこから狐の尻尾が、お尻からは狐の尻尾が現れたので、
「うわぁ」
と、幼い少年がそれに見惚れていると、
「私はレナ、レナ・ヒューズ。狐種の獣人にして、妖精の血を引く者。つまり獣人と妖精の『混血』ってこと。で、こっちの『綺麗なお兄さん』が春風で、『なんだか透けてるお姉さん』が、グラシアさん」
と、レナは幼い少年に向かってそう自己紹介し、それを聞いた幼い少年は、
「え? じ、じゃあ、獣人でもあるけど妖精でもあるってこと?」
と、目を大きく見開きながらそう尋ねた。
その質問に対して、レナはコクリと頷くと、
「それで、あなたの名前は?」
と、今度はレナが幼い少年に向かってそう尋ねたので、
「ご、ごめんなさい。僕はピート、ピート・コリンズ。犬種の、獣人です」
と、幼い少年は謝罪しながらそう自己紹介した。
それを聞いて、
「そっか、よろしくねピート……」
と、レナはニコッとしながらそう返事したが、
「あ、ちょっと聞くけど……もしかして、『混血は仲間じゃない』って感じかな?」
と、若干恐る恐るといった感じでそう尋ねたので、
「い、いえ、大丈夫、です! 『狐の獣人は妖精と凄く仲が良い』って、死んだお父さんとお母さんから聞きました、から!」
と、幼い少年……否、ピートは慌てた様子でそう言った。
その言葉を聞いて、レナは「あ……」と声をもらすと、
「……ごめん、嫌なこと聞いちゃったかな?」
と、申し訳なさそうな表情で謝罪しながらそう尋ねたので、
「い、いえ、大丈夫です! 今は、ニーナお姉ちゃんやアメリアお姉ちゃんのおかげで、寂しくはないんですが……!」
と、ピートは再び慌てた様子でそう答えた。
それを聞いて、レナが「あ、そうなんだ」と呟くと、
「……でも、その所為で、ニーナお姉ちゃんとアメリアお姉ちゃんに、凄く迷惑かけちゃって……」
と、ピートは表情を暗くしながらそう言い、
「今のこの状況も……僕が原因なんです」
と、最後にそう付け加えた。その声はとても震えていたので、
「それって……どういう……?」
と、レナがそう尋ねようとした、まさにその時、
「それは違うよ、ピート」
という声がしたので、それを聞いた春風達が一斉に声がした方へと視線を向けると、
「……うぅ」
「……」
そこには、意識を取り戻してゆっくりと起き上がったアメリアと三つ編みの少女がいたので、
「あ、アメリアお姉ちゃん! ニーナお姉ちゃん!」
と、ピートはそう言いながら、2人の傍へと寄った。
それを見て、
「うーん、とうとう2人も目を覚ましたか」
と、春風がそう呟き、それに続くように、
「春風様。レナ様。出来ればすぐにここから移動した方がよろしいのでは?」
と、グラシアが春風とレナを見ながらそう尋ねてきたが、
「で、でも、何処に移動すれば……?」
と、レナは困った表情を浮かべながらそう言い、
「そうだよね。何処に断罪官の連中がいるかわからないですしね」
と、同じく春風も困った表情を浮かべた。
その時だ。
何と春風達の目の前が真っ白に光り出し、その光が弱まると、
「「「あ」」」
そこには、見覚えのある白い扉があった。




