第258話 目覚めた森の中で……・2
春風が目を覚ましたその少し前。
「う、うーん。ここは、森?」
目が覚めて、少しずつ意識がハッキリすると、そこは真っ暗な森の中だった。
「ぼ、僕……なんでここに……?」
と、アメリアの仲間である幼い少年が、周囲を見回しながら自身が何故森の中にいるのかを思い出そうとすると、
「そ、そうだ! 僕はあの時……!」
と、ハッとなってその理由を思い出した。
そう、アメリア達と共に森の中に落ちた時、
「あう!」
目の前に現れた木の枝にぶつかってしまい、
「あ!」
「「ピート!」」
と、その衝撃でしがみついていたアメリアから手を離してしまったので、幼い少年は1人彼女達から離れ離れになってしまい、その後、別の木の枝にぶつかった後、そのまま地面に落ちて、そこで気を失ってしまったのだ。
「あ、アメリアお姉ちゃん! ニーナお姉ちゃん!」
と、その場にいない2人の人物の名前を叫んだが、
「はっ!」
と、幼い少年は「しまった!」と言わんばかりにハッとなって両手で自身の口を塞ぐと、警戒しつつゆっくりと周囲を見回した。
その後、辺りに誰もいなく、また何も出てこないのを確認すると、幼い少年は両手を口から離して、ホッと胸を撫で下ろした。
しかしそれからすぐに、幼い少年は自分が今、真っ暗な森の中で独りぼっちであることを理解して、
「うぅ。こ、怖いよう……」
と、恐怖で泣きそうになったが、そこから更にすぐハッとなって、「いかんいかん!」と言わんばかりに首をブンブンと左右に振ると、
「だ、駄目。そんなこと言ってられない!」
と、そう呟きながら自身を奮い立たせて、
「僕達『獣人』の神様である『月光と牙の神ループス』様、僕にほんの少しだけ勇気をください!」
と、ギュッと目を閉じながらそう祈った。
それから少しすると、
「よし! 少しだけ元気が出たぞ」
と、幼い少年はそう言いながら小さくガッツポーズをとると、自身の懐に手を入れて、そこから何か小さなものを取り出すと、
(くんくんくん……)
と、その匂いを嗅ぎ出した。
そして、
(よし、次は……)
と、幼い少年は取り出したものをまた懐にしまうと、今度はゆっくりと目を閉じて上を向き、
(くんくん……)
と、匂いを嗅ぐかのように鼻を鳴らした。
それから暫くすると、
(あった! ニーナお姉ちゃん達の匂いだ)
と、目的のものが見つかったかのようにパァッと表情を明るくしたが、
(あれ? でも別の匂いもある?)
と、幼い少年は「ん?」と首を傾げた。
その後、幼い少年は、
(こっち……だよね)
と、その匂いがした方向を見たが、そこは今自分がいる場所よりも暗かったので、思わずブルッと全身を震わせたが、
「よ、よし、行こう」
と、再び自身を奮い立たせて、その場から歩き出した。
そして、時は現在。
「「ど、どうしよう」」
「どうしましょう」
と、春風、レナ、そしてグラシアは、自分達の目の前にあるものを見て、タラリと汗を流しながらそう呟いた。
そこにあったのは、三つ編みの少女を抱き締めた状態で気を失ってる女性、アメリアだった。
よく見ると、三つ編みの少女も気を失ってる状態だったので、
「よ、よかった、2人とも死んではいないみたい」
と、春風がホッと胸を撫で下ろすと、
「よ、よかったぁ」
「そ、そうですね」
と、レナとグラシアも、春風と同じようにホッと胸を撫で下ろした。
その後、
「いや、そうじゃなくて!」
と、レナがツッコミを入れるかのようにそう口を開くと、
「ね、ねぇ春風。この2人どうしよう? あとあの男の子もいないし……」
と、恐る恐るアメリア達を指差し、この場にいないもう1人の彼女の仲間がいないのを確認しながらそう尋ねてきたので、
「う、うーん。どうしようって言われても……」
と、春風は困った顔で「どうしたもんか……」と考えた。一瞬、『神眼』を使おうかとも考えたが、
(やめとこう。後で色々と面倒なことが起きそうな気がする)
と思って、使うのをやめた。
そして、暫く考えた末に微妙な表情で「うん」と頷くと、
「こんなこと言うのも『男』……いや『人間』として間違ってるかもしれない。いや、かもじゃなくて思いっきり間違ってる」
と、「怒り」や「悔しさ」といった悪い感情がごちゃごちゃに混ざったかのような表情に変えながらそう言い、それを聞いたレナとグラシアはゴクリと唾を飲むと、
「けど……正直言うと、俺達の今後の為にもこの人達とはここで別れて、すぐにこの場から離れるべきだと思う。こんなところを断罪官に見られたら間違いなく俺達も『異端者』として殺されるだろうし、最悪の場合、俺達の『正体』が五神教会、もっと言えば連中が『神』と崇める敵の親玉達にもバレるかもしれないしね」
と、春風はレナとグラシアに向かって、自身が思ってることを述べた。
その言葉を聞いて、レナもグラシアも「うぅ」と何処か悲しげな表情を浮かべたが、
「そう……だよね。今日あの人達と対峙した時、私も『怖い』って感じたし、今あいつらと戦って勝てるのかって聞かれたら、『無理』って答えちゃうと思う」
と、無理矢理自分の気持ちを落ち着かせながらそう言い、
「まぁ、グラシアさんを殺したのは許せないけど」
と、最後にチラッとグラシアを見ながらそう付け加えた。
それを受けたグラシアは、
「レナ様、そして春風様。どうか、私のことは気にしないでください。あの連中を許せない気持ちはありますが、お二人が戦ったところで彼らに勝てるかわかりませんし、もし勝ったとしても、それで私は勿論、私の大切な人達……そう、彼らが今まで殺してきた人達は生き返りませんから。ですから、どうかお二人にはご自身の身の安全を最優先にしてほしいのです」
と、真っ直ぐ春風とレナを見つめながらそう言いったので、そのあまりの説得力がある言葉に、
「「ぐ、グラシアさん……」」
と、2人は泣きそうな表情を浮かべた。
その後、2人は涙を拭うかのようにゴシゴシと目を擦ると、
「よし」
と、春風はそう声をもらして、
「離れよう。すぐにでも」
と、レナとグラシアに向かってそう言い、それを聞いたレナとグラシアが、
「うん」
「はい」
と、コクリと頷いた、まさにその時、パキッと枝を踏んだかのような音が聞こえたので、それを聞いた春風達がすぐにその音がした方向へと振り向くと、
「あ」
「「「あ」」」
そこにいたのは、アメリアの仲間である幼い少年だったので、
「「「ひと足遅かったぁあああああ!」」」
と、春風、レナ、グラシアはそう悲鳴じみた叫びをあげ、それにつられるように、
「えええええっ!?」
と、幼い少年もショックを受けたかのような叫びをあげた。




