第221話 「異端者」を討つ者達
お待たせしました、本編新章開幕です。
そして、今回はいつもより長めの話なうえに、かなり残酷な描写が多く含まれています。
それは、まさに「地獄絵図」だった。
その日の夜、異世界「エルード」の辺境の地にて、1つの村が滅んだ。
幾つもの家や建物が、燃え盛る炎の中に消えていく。
そして、その状況で聞こえるのは、大勢の人達の悲鳴だった。
悲鳴をあげたのはその村の住人達で、現在、そこで何が起きているのかというと、村が燃えていく中、彼・彼女らは、1人、また1人と、皆、黒い鎧を纏った騎士達に殺されていったのだ。
殺された者達の中には、女性や幼い子供に老人、更には生まれたばかりの赤ん坊まで含まれていて、ある者は黒い鎧の騎士によって剣で両足を斬り飛ばされた後に首を刎ねられ、ある者は2、3人の黒い鎧に騎士に囲まれた後、一斉に体中を槍で何度も貫かれ、またある者は「助けてください!」と命乞いしたにも関わらず、目の前にいる黒い鎧の騎士が持つ大きなハンマーによって、グシャリと音をたてて潰された。
そう、それはまさに最初に語ったように、「地獄絵図」と呼ぶに相応しい状況だった。
そんな状況の中、村の中央に位置する開けた場所で、2人の人物が戦っていた。
1人は苦しそうに肩で息をしている年老いた男性で、その指先からは数本の「糸」が伸び、その「糸」は男性と同じくらいの大きさをした4体の木の人形と繋がっていた。因みに、その人形の手にはそれぞれ剣や槍、斧、ハンマーを持っている。
そしてもう1人は、人々を殺してまわっている騎士達よりも少し派手な装飾が施された漆黒の鎧を纏った威厳に満ちた男性で、その手には鎧とは対照的に金で装飾された柄から刀身まで真っ白な長剣を握っている。
2人がお互い睨み合っている中、
「どうしてだ!? どうしてここまでする!?」
と、年老いた男性が周囲に転がっている人々の死体に視線を向けながら、目の前にいる漆黒の鎧を纏った男性に向かってそう尋ねた。
そんな年老いた男性の質問に対して、
「決まってるだろう? 貴様を『神々』の名のもとに粛正する為だ。固有職保持者『人形使い』のアイザック」
と、漆黒の鎧を纏った男性は落ち着いた表情でそう答えたので、
「だったら、私1人だけを殺せばいいだろう! 何故、無関係な村人達まで殺す!?」
と、「アイザック」と呼ばれた年老いた男性……以下、アイザックが更にそう尋ねると、
「貴様ら『固有職保持者』は世界の穢れ。その穢れに関わった者達は即座に『神々』のもとへと送る。それが、我ら『断罪官』の使命だからだ」
と、落ち着いた表情でそう言った漆黒の鎧を纏った男性の言葉に、アイザックはピキッとなったのか、
「ふ、ふざけるな! 何が『神々のもとへと送る』だ! この人殺し集団め!」
と、怒りのままにそう怒鳴ったが、漆黒の鎧を纏った男性は「フン」と鼻を鳴らすと、
「『神々』の加護を持たない『異端者』が言っても、何も説得力がないぞ」
と、アイザックを嘲るかのようにニヤッとしながらそう言い返したので、その瞬間、アイザックの中でブチッと何かが切れた。
そして、
「許さん! 許さんぞ断罪官! 許さんぞ、ギデオン・シンクレアァ!」
と、アイザックは怒りのままにそう叫ぶと、「糸」が出ている両手を目の前の「ギデオン・シンクレア」と呼んだ漆黒の鎧を纏った男に向かって突き出した。その瞬間、4体の人形達が一斉に動き出し、漆黒の鎧を纏った男性、ギデオン・シンクレア……以下、ギデオンに向かってそれぞれ武器を振るおうとした。
しかしそれに対して、ギデオンは落ち着いた表情を崩さず、再び「フン」と鼻を鳴らすと、持っている白い長剣を軽く振るった。
その瞬間、白い長剣からこれまた白い光が放たれて、それが4体の人形全てを真っ二つにした。
それを見て、
「ば、馬鹿な……」
と、アイザックが呆然としていると、ギデオンは素早くアイザックのすぐ傍まで近づき、持っている白い長剣で、アイザックの両腕を斬り飛ばした。
アイザックは何が起きたのか理解出来ず、
「は?」
と、そう声をもらしたが、自身の左右の肘から先がなくなっていて、代わり血が噴き出ていることに漸く気付くと、
「ぎぃやあああああああっ!」
と、悲鳴をあげた。
その後、あまりのことにアイザックがバランスを崩してその場に尻餅をつくと、ギデオンはそんなアイザックに白い長剣の切先を向けた。
腕を失った痛みとショックで、
「あ……あぁ……」
と、震えた声をもらしながら目に涙を浮かべるアイザックに向かって、
「貴様に聞きたいことがある」
と、ギデオンがそう言うと、アイザックは涙目のままキッとギデオンを睨み付けたが、それに構わず、
「白い尻尾を生やした悪魔と、額から青い角を生やした悪魔、そして……背中に赤い翼を生やした悪魔を知っているか?」
と、ギデオンは切先をアイザックに向けたままそう尋ねた。
その質問に対して、
「な……なんだそれは? 何を言って……?」
と、アイザックは震えた声でそう尋ね返すと、
「『神々』を殺す3人の悪魔達の特徴だ」
と、ギデオンがそう答えたので、
「ま、まさか、例の『予言』のことか?」
と、アイザックがそう尋ねると、すぐに「はは」と笑って、
「こ、これは驚いたな。『歴代最強の大隊長』と恐れられている貴様が、そんな訳のわからぬものを信じてるとは……」
と、醜く口元を歪ませながらそう言ったが、流れてる血の量が多かったのか次第にその声は弱々しくなっていた。
しかし、そんな今にも死にそうになってるアイザックに向かって、
「私の質問に答えろ」
と、ギデオンが命令するかのようにそう言うと、アイザックはキッとギデオンを睨んで、
「断る! 貴様ら全員、地獄に落ちろ!」
と、怒鳴るようにそう叫んだ。
その叫びを聞いて、
「そうか」
と、ギデオンがそう呟くと、白い長剣でアイザックの首を斬り落とした。
ドサッと首が地面に落ちてすぐ、残されたアイザックの胴体はバタリと倒れる。
それを見ると、ギデオンは白い長剣を振るって刀身についた血を払った。
そして、そのまま白い長剣を鞘に納めると、
「ギデオン大隊長!」
と、ギデオンの鎧程ではないが派手な装飾が施された漆黒の鎧を纏った20代前半くらいの若い男性騎士が、ギデオンのもとへとと駆け寄ってきたので、その声にギデオンが「む?」と反応すると、
「どうした、ルーク副隊長?」
と、尋ねてきたので、「ルーク副隊長」と呼ばれた若い男性騎士……以下、ルークは「は!」と姿勢を正しながら返事すると、
「村人全員の粛正が完了しました!」
と、ギデオンに向かってそう報告し、それにギデオンが「そうか」と返事すると、
「それと、たった今本部から、『異端者』2人と『裏切り者』を発見したと報告がありました!」
と、ルークはそう報告を続けたので、
「本当か!? それで、連中は何処に!?」
と、報告を受けたギデオンは大きく目を見開きながらそう尋ねた。
その質問に対して、
「は! 本部からの報告によりますと、連中はどうやら『中立都市フロントラル』に向かっているとのことです!」
と、ルークはビシッとした姿勢のままそう答えたので、それにギデオンが「そうか」と返事すると、
「ルーク副隊長、隊員達と本部に伝えろ! 隊員達には『準備が済み次第、中立都市フロントラル』に向かうと! そして本部には、『了解した。連中は我々が粛正する』と!」
と、ルークに向かってそう命令した。
その命令を受けて、ルークが「は!」と返事すると、すぐにその場から駆け出した。
そして、残された残されたギデオンはというと、首と両腕のない死体となったアイザックを見て、
(『地獄に落ちろ!』、か)
と、アイザックの最期の言葉を思い出すと、「フ……」と鼻で笑って、
「本当に、説得力がないな」
と、声に出してそう呟いた。
どうも、ハヤテです。
最後の投稿から少しの間お休みしてましたが、今日から本編新章の投稿を開始します。
かなり残酷なシーンからの始まりとなった今章で、主人公・春風にどのような展開が待ち受けているのか?
彼と仲間達の活躍に、ご期待ください。




